26 たまには一人でお出かけ
俺がこの世界に来てから半年が経った。
こんな世界だから日記もすぐ埋まると思っていたが、結局三日坊主になったため、日記は三ページしか埋まっていない。
「今日は一人で出かけてみるか」
俺は独り言を呟きながらエリスさんに一応報告をしに行く。
エリスさんの書斎室に着き、ノックする。
「……はい?どうぞ」
「失礼します」
エリスさんの承諾を得て、俺は入る。
すると、俺だと思っていなかったのか目を開いていたが、すぐに表情を戻し、優しい笑みを浮かべてくれた。
「何かご用事ですか?ソウマさん」
「いえ、あまり大したものではないんですが……」
俺は今日は一人で出かけると説明し、エリスさんの言葉を待っていると……。
エリスさんが何か思いついたかのように自分の机の引き出し開き、ある一つの物を目の前に置いた。
「これを持って行ったら良いと思います」
「えっと、これは?」
「これは魔法具です」
「魔法具?」
「はい。 色々な魔法具があるんですが、これはその内の一つで連絡を取るものです」
俺はエリスさんから黒い長方形を受け取る。
連絡を取るもの……様はスマホか? そういえば、俺がこの世界に来た時にポッケにあったスマホなかったな……。 まぁ、マレンとエリスさんのインパクトが強過ぎて普通に忘れてたけど。
「なるほど、連絡以外に何かできるんですか?」
「いえ、連絡しかできませんね」
俺はスマホのように他にも色々な機能があるのかと期待に胸を寄せていたが、どうやら連絡しか機能がないらしい。 それと同時に俺はこう思う。
ガラケーじゃねぇか!
そうして俺はエリスさんの書斎室から出て、自分の部屋に戻って支度をする。 しかし俺はここで思い出す。
「あれ、ここから街ってめっちゃ遠くなかったか?」
そう、ここから街はめちゃくちゃ遠い。この前、ローホと一緒に出かけたが、あれも実は軽く十キロを超えていた。
もちろんその翌日は俺の足が死んだ。
「はぁ、仕方ない。頑張るか……」
俺は結局、諦めて己の足で向かうことを決心する。
そして玄関に着き、扉を開けようとした瞬間、後ろから聞き覚えのあるが声が聞こえた。
「ソウマ、どこか行くのか?」
「マレンか、たまには一人でお出かけだよ」
「……そうか」
マレンは一緒に行きたかったのか、少しションボリした。そんなマレンを見て俺は微笑みながら告げる。
「そうションボリしなくても、今度一緒に行くから」
「本当か!?」
「本当。 てか、ほぼ毎週行ってるじゃん」
「週一では足りない」
「俺としては週一がいいんだが……」
何回行っても、マレンの大食いやら爆買いやらは正直耐えられない。週一でも結構限界なのに週二になったら、なおさら俺の身体は簡単に壊れるだろう。
そんなことを思いながら俺は屋敷を出る。
「こっから大変だな……」
正直、いますぐにでもやめたいが、自分で決めたことには責任を取らないと思い、重い足取りで進む。
☆☆☆☆☆☆☆☆
しばらく経ったが、俺はどのぐらい歩いたのか分からない。
むしろ、良い運動なのかもしれない。毎日これを続けてれば体重も落ち、足も腹筋もバキバキかもな……。
「その前に……俺が死ぬわ!!」
なんだよこれ、まだ着かねぇの!?ローホと来たときと全然感覚が違うんだけど!? あっ、そっか……ローホはこの間もずっと話をしてくれてたな、流石メイドだな……。
俺はローホというメイドの凄さに感心しながら、足を進める。正直、進んでる感覚などないが……。
それから数十分、やっとの思いで着いた街。
「やっと着いた……」
だが、努力というものは素晴らしく、街がとても綺麗に見える。 まずはどこから行こうか。食べ物を食べてもいい、服を買ってもいい。
このお出かけのためにエリスさんからお小遣いも貰ってきた。
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エリスさんの書斎室から出ようとした瞬間、俺は呼び止められた。
「あっ、ソウマさん」
「はい? どうしました?」
「これを……」
「これって、金貨!? な、なんで……」
「えぇ、お出かけなんですよね? なら、これぐらいは持っていた方が良いと思います」
「だとしても金額が……」
「良いんですよ、ソウマさん。 楽しく行ってきてください」
「……そう、ですね。 ありがとうございます、エリスさん!」
俺はもちろん断ろうとしたが、エリスさんがしつこく押してくるので、ここで断るのはエリスさんにも悪いだろうと考え、金貨を受け取る。
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ちなみにこの世界での金貨一枚の価値は俺の世界でいう十万円分の価値に近い。それをエリスさんは五枚もくれた。
五十万……元の世界でもそんな大金、持ったことがない。
「こんな金……俺には持て余すだけなのにな……」
小さなため息をついたが、せっかく貰ったので使うことにしようと店を探していると俺は一つの店が目に止まった。
「……なんでも屋兼雑貨屋?」
っと、よく分からない店があったので俺はとりあえず気になるので入ることにする。
扉を開けると豪華なのか、開けた瞬間に鈴の音が店中に鳴り響く。だが、鈴の音に店員が現れる気配がない。
「んー今日は閉まってるのか? いやそれだと普通に扉が開くわけないか……」
俺は不思議に思いながらも、店の中を回りながら商品を見ていく。
続々と商品を見ていくが、おかしいなものを感じる。 なぜなら――。
「これで絶対モテモテドリンク? ここしかないお菓子パン? リ・セットから始めるアナタの顔? 火に炙られたけど、なんか無事でした?」
おかしな商品ばかり、まず売り気あるのかと疑うレベルの商品ばかり。 うさん臭い商品……。
正直、正直……。 俺は別に欲しいとは思わない。思わない、思わないはず……。
「これで絶対モテモテドリンク、気になる……」
俺は結局、手に取ってしまった。 いや、これはしょうがない。男なら、いくら嘘だと分かっていてもモテモテと言われたら一回は試したいものだ。
一体いくらだ?
その商品に表記されていた値段は――。
――銅貨一枚……。
「安くは、ない……けど、これは安い、方なのか?」
一個だけだと自分に言いかせながら俺はお会計に向かう。
だけど、お会計のところに店員はいない。
「ん?」
俺は諦めようと思い、踵を返そうと瞬間、お会計の奥に明かりが付いているのに気付く。 休憩中とかだろうか?
俺は申し訳なさを感じながら、声を出す。
「すみませーん! お会計いいですか?」
俺の声が聞こえたのか、奥からなにやらドタバタと音がし、鳴り終わるまでしばらく経ち、奥から出てきた一人の女性。
「す、すみません! 今日閉めてて、てかなんで入れて……」
「あーそれはすみません」
「……」
「え?」
慌てた様子で奥から出てきたのは白い肌でピンク髪の小柄な女性だった。




