24 鬼と遊ぼう
今日も変な起き方。
「んにゅ……」
「……」
アンがまた俺の布団に入り、寝ている。
この様子に慣れたのか、最初ら辺は文句を言っていたマレンだが、今では既にマレンは呆れて何も言えなくなっている。
どうしたら、これをやめてくれるのか考えていると。
「んー! おはよ!」
「おはよじゃないよ」
「どうかしましたか?ご主人様」
「なんでアンはここに入るの?」
「えーと、気付いたら……」
「無意識!?」
本能なのかと驚いていると、いきなり扉が開き、そこからエリスさんが現れる。
「朝食ですよ。 ソウマさん、アンヘルさん」
扉を開けたエリスさんは俺達の様子を見て、何一つ表情を変えずに朝食だと告げる。
ほらね? こんな感じなんだよ、何も疑問に思ってない。
その後、朝食に釣られてアンはもの凄いスピードで俺の部屋を出て行き、朝食に向かって行った。 アンが出て行ったのを見送ったエリスさんは部屋に入り、俺に近付く。
そして口を開く。
「アンヘルさん、本当にソウマさんのこと好きですよね」
「えぇ、そうですね。 元々の主人が俺と似てるからって……」
「ソウマさん」
「はい?」
「たまにはアンヘルさんと遊びに行くのはどうですか?」
「遊び、ですか?」
俺はまったく予想外の提案され、フリーズする。その様子を見たエリスさんはふっと笑いながら口を開く。
「良い機会ではありませんか、ですが一つ条件があります」
「条件?」
「はい、少し耳を貸してください」
「えぇ?はい」
俺はエリスさんに言われた通りに耳を貸す。
「えっと、――・・――・・――」
「え? それでいいんですか?」
「えぇ、私がそうしたいだけです」
「エリスさんが良いんなら、いいですけど」
「ふふ、本当ですか? ありがとうございます」
俺がエリスさんに言われた条件はもう少し後の話。
☆☆☆☆☆☆☆☆
エリスさんに提案されたことを実行するため、朝食後のアンに話し掛ける。
「アン、ちょっといい?」
「んー? どうしましたかご主人様?」
「今日ちょっと一緒に遊ばない?」
「え!? 良いんですか!?」
「うん、いいよ」
「やったー!!」
飛び跳ねて体で喜びを表現するアンはなんというか、子供を相手しているようでなんとも微笑ましい。 実際は比喩でもない鬼だが。
するとアンは俺の手を掴み、玄関を壊す勢いで扉を開け、外に出る。 なんかこの展開、誰かと似てるな……。
「ちょっと待って、アン!?」
「ご主人様と遊び!ご主人様と遊び!」
「絶対話聞いてねぇな!?」
俺はしばらく引っ張られ、ようやく降ろされた場所はある一つの公園だった。
俺の世界とあまり変わらず、滑り台やブランコがちゃんとある。 しかし、ここはどこだろうか?
「アン、ここどこなの?」
「最近見つけましてね、結構お気に入りなんですよ。この公園」
「この年になって公園か……」
「ご主人様! 早く早く!」
「分かったよ」
まあ、久しぶりにこんなのも良いのかもな、だけどアンとはいえ女性と公園行くのは初めてだな……。
初めてのシチュエーションで妙にドキドキし、自分でも分かるほどに心臓がバクバクいっている。 だが、落ち着け……アンだ……アン……。
「ご主人様ー!」
だめだ……。
普通の格好なら、まだ耐えれた。 だけど、今のアンの格好はほぼ半裸に近い。まるで水着のような格好。
いや、俺だってまだ健全な男子高校生だ。言い訳させてくれ、このシチュエーションでドキドキしないのが無理がある。
俺は誰に言い訳しているのかも分からず、ひたすら自分の心に言い続け、心を落ち着かせる。
しばらくして、ようやく落ち着いたところで俺はアンと遊ぶこととする。
「ご主人様ー! 押してください!」
「分かったよ。 ほ、ら!」
「おぉー高い高い!」
「もっとしてやる、よ!」
「高い高い!!」
なんというか、感覚的には姪っ子と遊んでる感覚だな……年齢知らないけど。 この際だし聞いてみるか。
「アンー?」
「んー? どうしました?」
「アンって何歳なの?」
「おぉーご主人様も罪な男ですね! 女性に年齢を聞くなんて」
「あ、あぁ……別にそんなつもりじゃ、嫌なら言わなくてもいいし……」
「まあいいですよ」
「いいんかい!?」
今の時間はなんだったのか、結局教えてくれるらしい。変なところでアンはノリが良い。
だけど、アンは本当に何歳なのか、気になる。
「えーと……」
手を顎につきながら自分の年齢を思い出すアン。明らか俺より下なので、そんなに難しいことではないと思う。
見た目からして十五、十六くらいなのかな?
そして、アンは思い出したのか指を空に指しながら口を開いた。
「私は六百五歳ですね!」
「……は?」
「え?」
「十六じゃなくて?」
「はい、六百五歳ですが……」
「……」
アンは俺が思っていた年齢の倍以上の年齢を言われ、固まるしかないのだが、六百五歳と言われても正直わからない。 アンの見た目は完全に十六そこらにしか見えない。
しかも男にとったら誘惑に近い格好。これが六百五歳だと思うやつは誰一人いない。
「ご主人様ー?」
「あぁ、ごめん……六百五?」
「はい、鬼族ですからね!」
「あーそういえば鬼族だったね……」
そうだったコイツ、鬼族だったわ。角も牙もないから実感沸かねぇ……。
「そうだったね、鬼族だったね……」
「はい!」
「ほら、角とか牙ないからさ」
「んーこうですか?」
「うぉ!? 角と牙が生えた!」
「この牙で血を吸うこともできるんですよー」
「いや、それは吸血鬼じゃない?」
明らか吸血鬼な牙の能力を聞いて、思わずツッコミをしてしまったが、不可抗力だろう。 だけど、アンはつもり鬼であり吸血鬼でもある認識でいいのかな?
そんなことを考えているとアンは突然ブランコから降り、こちらを向く。
「ご主人様! 次はご主人様が乗ってください!」
「え? う、うん」
「どうぞどうぞー」
俺はアンにブランコに乗るよう促され、座った。 そして俺はそのことを後悔することになった。
「じゃあいきますよー!」
「う、うん……」
「よいしょー!!」
「うぉぉぉぉぉ!? 馬鹿、強い強い!?」
俺はアンに背中を破壊するといわんばかりの力で押され、ブランコが一周する手前で戻ってきて、またヤバい力で押される。最悪の負の連鎖だ……。
「ちゃんと力加減してよ!?」
「してますよー! よいしょ!あっ、ミスった……」
「ちょっと!? 嫌な言葉が聞こえたんだけど!? って、おぉぉぉぉぉ!?」
俺は嫌な言葉が聞こえた瞬間、先ほどは全然違う力で押され、ブランコがとんでもない速度で上までいき、俺の視界が一周した。
「あぁ……死ぬかと思った……」
「あはは! ご主人様も運がありますねー!」
「一周してるんだよ、こっちは!!」
「はいはい、今降ろしますねー」
「お前が原因作ったのに、何その態度!?」
「いやーすみません!」
「感情こもってねぇよな!!」
その後、降ろされた俺はもう遊ぶのをやめようかと思ったが、アンが「まだまだ!」だというので、遊んだが、帰ったのその数時間後だったのはここだけの秘密である。




