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ゲームに召喚されたけど、魔王弱過ぎて平和ですね  作者: 迷子猫
平和と日常

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22 青髪のメイド

 今日はアズールを手伝おうと思う。 でも、俺はアズールがいつも何をしているのか知らない。ヴェルやローホは本当にたまに仕事をしているのは知っているが、アズールは見かけない。

 そして念のため、他のメイドに許可を取ってからアズールの部屋に向かっていた。


「ここか……」


 俺はアズールの部屋と思われる扉の前に立ち、コンコンと三回ノックする。だが、部屋からは返事がない。もう一度ノックをしようとした瞬間――。


「あーしなくてもいいですよ」

「え?」


 横からヴェルが割って入り、アズールの部屋の扉を一切の躊躇なく開けた。


 え、ノックは……?


「アズール! 早く起きて」


 扉を開けると先に目に入ったのは足の踏み場もない床。その奥に、ベッドの上ではなく床で寝ているアズール。 多分、ベッドから落ちたんだろうな……。


「ん……まだ寝る……」

「寝るんじゃいな、ソウマさんが来てますよ」

「……ソウマさん? え、ちょっ一回出て!?」

「はいはい……ソウマさん、一回出ましょう」

「えっ、う、うん……」


 ヴェルに言う通り、部屋を出た途端、中から何やらドタバタと物を投げてるかのような音が数分間続いた後扉が開けられ、アズールが頭をひょこっと出していた。


「い、いいよ……」

「では入りましょう」

「あ、あぁ……」


 アズールからの承諾を貰い、再び中に入るとさっきまでの床ではなくなり、まるで新築のように綺麗な床になっていた。


 え? さっきまでの床は……?


「はぁ、ソウマさんが来たらこれですか、最初からやればいいのに……」

「い、いやそれは……」

「え、えっと、これは?」

「アズールは昔からめんどくさがり屋で部屋が毎回汚いんです。 まぁ、人に見られたら恥ずかしいのか、見られた瞬間にすぐに片付けるんですが……」

「なるほど……」


 俺は妙な親近感を抱きながらも、アズールに促されて椅子に腰を下ろす。


「え、えっと……ソウマさん? 一体どのような用事で?」

「あぁ、そうそう……アズールの仕事を何か手伝えないかなって……」

「……」


 俺がこの部屋に来た理由を伝えると、なぜかアズールは固まり、その横でヴェルが笑いをこらえてるのか口元を手で隠しながら小刻みに震えている。


「なんかまずかった……?」

「い、いえ……」

「あっははは! すみません、もう限界で……。 ソウマさん、アズールは仕事が一つもないんですよ」

「仕事がない?」

「ヴェ、ヴェル!?」

「アズールはそのめんどくさがり屋の性格もそうですが、それ以前に不器用で仕事をするだけで物を壊したり……」

「もういいから、やめてあげて……」


 ヴェルが笑いを堪えきれず、吹き出してその理由を聞くことになるが、そんな理由が可哀想過ぎて俺は途中で止めてしまった。 その横でアズールは目尻にうっすら涙を浮かべている。


 ど、どうしよ……何かしないと……。


「うぅ……それ言わないで……」


 あっ、だめだもうアズールのメンタルボロボロだ……。


「と、とりあえずヴェルは部屋から出て……」

「わかりましたー では、また後ほどに……」


 そんな捨て台詞と共にヴェルは俺の言う通りに部屋を出た。 部屋から出ようととした瞬間、ヴェルがニヤりと笑っていたのは俺は見逃さなかった。

 そして、俺はアズールと二人きりなり、向かう合うかたちになる。


「……」

「……」


 き、気まずい……。何か言わないと……。 何でもいいから絞り出せ俺!!


「ね、ねぇ」

「は、はい……」

「アズールは何か趣味はないの?」

「趣味、ですか……」


 やっとの思いで絞り出したのは趣味の話、俺のコミュ力がないのが丸わかりである。

 だが、その話題がよかったのかアズールは慌てた様子でクローゼットに向かい開けて出てきたのは一つの服。


「えっと、それは?」

「服です。 私が作った……」

「作った?アズールが……?」

「……はい、そうです」


 これは意外な趣味だな……。 アズールが裁縫……。あんまりイメージ着かないな、けど言われてみればそういうところがあるようにも見えるかも。


 すると突然、アズールは手に持つ服を俺の目の前に差し出した。


「え?」

「あ、あげます……」

「えっと……いいの?」

「は、はい……ソウマさんのために縫ったので……」

「ふふ、ありがとう。 大切に着るね」


 アズールから受け取った服は俺がいつも着ている黒色だが、袖の部分は星のマークがあった。

 よく見ると所々線が歪んでいるが、それはアズールが俺にあげるための努力だったと考えると微笑ましく思える。


「ソウマさん、お茶淹れてますね」

「ありがとう、アズール」

「いえいえ、あっ……」

「アズール!?」


 アズールはお茶を淹れようと椅子から立ち上がった瞬間、机の根元に足がぶつかり、綺麗に転けた。 あれは痛い……。


「だ、大丈夫?」

「は、はい、大丈夫です……」

「そ、そう?」


 なんとか立ち直したアズールは慣れた手つきでお茶を淹れ、俺の前に差し出した。

 そしてここである疑問が俺の頭に浮かぶ。


「あれ、不器用なんじゃ……」

「ヴェルが言っていたのは人前だとですね、ソウマさんの前ではなんというか……安心できるので……」

「え、えっと、ありがとう?」


 モジモジしながら話すアズールはまるで乙女のように見え、俺は思わずその動作にドキッとしてしまったのは不可抗力に近い。 他のメイドと同じ顔のはずなのに、今のアズールは皆とは違うように見えたのは気のせいだろうか。






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