14 とりあえず祭りは続行で
突然抱きしめられ、困惑を隠せない俺達。
「い、一旦離してください」
「いやー!!」
「嫌じゃないです……離してください、俺の身体が保たないので……」
あっやばい……もう、落ちる……。
強烈な力により、俺はそこで意識を手離した。
どのぐらい経ったのだろうか、俺が気付いたときには空は赤色になっていた。
「……ぅぁ?」
「起きましたかソウマさん」
「ソウマ大丈夫か!?」
「ご主人様……大丈夫?」
「近付くな!!」「近付かないでください!!」
「うぅ……なんで……?」
「当たり前だ!!」
マレンさんに怒鳴られ、シュンとなる謎の女性。さっきから俺のことをご主人様と呼んでいるが、本当に俺は知らない。 うん。本当に誰?
「えっと、それで? 貴女は?」
「覚えてないんですか!?」
「覚えてるもなにも、俺は貴女とは初対面だと思うんですが……」
「酷いです!! 私にあんなことをしておいて覚えてないって男としてどうなんですか!?」
「「「!?」」」
その発言と共に横にいる二人の首が壊れたブリキのように俺の方に向かれる。 ふざけんなよこのアホ。
「ソウマ? ちょっと後で話」
「えぇ、同じく」
「簡単に信じないでください!?」
「ご主人様ー! ちゃんと私を守ってくださいね!」
「はぁ……ひとまず、自己紹介をお願いします。話はそれからです」
「むー酷いですね、覚えてないなんて……。 まぁ、いいでしょう!」
俺が自己紹介を求めると、謎の女性はローブを脱ぎ、俺の目をまっすぐ向く。 海のように輝く瞳、まるで天使のように空を舞ってそうな白髪。
「私の名前はアンヘル・アイレ!! 得意な魔法は風魔法です! アンでもヘルでもお好きに呼んでください!」
アンヘル・アイレ……。うん、本当に知らない。良かった……。
「では、アンヘルさん……」
「ご主人様! 私に敬称はいりません!アンかヘルどちらかでお呼びください!」
「じゃ、じゃあアン? なんで俺のことをご主人様って呼ぶの?」
「それはご主人様だからです!」
だめだ、話が通じない……。 召喚されたときのエリスさんみたいだな。
「私らを置いていくな」
「そうです!」
「黙らっしゃい! 今、私とご主人様が話してるでしょうが!」
「よーし、お前ちょっと話そうか」
「お願いだからややこしくしないで!?」
マレンさんをなだめ終えるのはあれから一時間後だったのはここだけの秘密だ。
「エリスさん、マレンさんずっと不機嫌ですね」
現に今、俺の隣にはウキウキでスキップ気味のアルと顔をしかませ、明らかにご機嫌が斜めなマレンさん。 どちらも俺的には困った状況……。
「そりゃそうですよ。 マレンさんはこの日をどれだけ待ち望んでいるか、数ヶ月前から毎日毎日、服をどれにしようか迷ってたぐらいですよ?」
「そんなに祭りが好きなんですか?」
「あぁ……まぁ、そうですね」
「なるほど……」
「ソウマさんって案外鈍いですね」
「え?」
その後もしばらく祭り内を歩き回り、マレンさんの機嫌も徐々に直ってきた。 主にアンを徹底的にマレンさんから離すことが一番の解決策である。
「マレンさん? あの宝石とかマレンさんに似合うと思いますよ?」
「あ、あぁ……」
「ご主人様ご主人様! あの食べ物美味しそうです!」
「そうだね」
「ご主人様! あの的あてやりませんか!」
「そう、だね……俺だけでは決められないから」
アルが先ほどこの調子である。 まるで祭りに初めて来た子供のように見える。
その時、我慢の限界を迎えたかのように口を開く。
「ソウマ」
「どうかしましたか?」
「その小娘にはタメ口で私には敬語なんだな」
「ま、まぁアルから言われたことですし」
「アルさん、少し外しましょう」
「え? なんで?」
「いいから!」




