12 戻ってきた日常
魔王が光の塵となって消えていくのを見届ける中。
「ま、魔王様……?」
「ソウマ……」
「……ソウマさん」
「これで俺達の勝利です」
「ぁぁ……魔王……様……」
光の塵となって消えていく魔王をマイ・コルトは光を掴もうする。 だが、到底そんなことはできない。
「さて、覚悟はいいか?」
「お前ら! 卑怯っすよ!」
「そうですか? 俺はただ、魔王を討伐しただけですよ?」
「えぇ、ソウマさんの言う通りです」
「くっ…… 魔王様の本来の力なら……」
変なたわ言を話すので、俺はマレンさんに目線で合図する。 その意図を取ったのかマレンさんは深く頷いて、拳を振り上げる。
「ちょっと待ってっす! こんな精神的に疲弊しているか弱いあーしを攻撃するっすか!?」
「何、攻めてきたのは貴様からだろう?」
「そ、そうっすけど!」
「ふん!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!」
マレンさんの鉄拳とも言える拳がマイ・コルトに直撃し、洞窟の外へと吹き飛んだ。
綺麗な星となったマイ・コルトを見ながら俺達は見合う。
「さあ、行きますか」
「そうですね」
「あぁ、そうだな」
☆☆☆☆☆☆☆☆
俺達は魔王と魔王幹部を同時に討伐し、帰って来た。
「そういえば」
「ん? どうした?」
「俺って魔王討伐完了したから帰れるんですか?」
「「あっ……」」
召喚時に言われたことを言ったが、どうも二人は忘れていたらしく、お互いにフリーズしている。 まあだって、まだ召喚されて三日だからな……。
「も、もうちょっと居ないか?」
「そ、そうですよ! まだ来たばっかりですし」
「あはは、大丈夫ですよ。 まだまだいるつもりありますから」
「そ、そうか……」
「え、ええ、安心しました……」
俺達は三人で笑い合った。
たった三日、されども三日。 この三日間はすごく濃いものだった。 だけど、魔王も討伐したし、もうすることはない。 これからは本当に平和。
言うんなら、「ゲームに召喚されたけど、魔王弱過ぎて平和ですね」だな……。
☆☆☆☆☆☆☆☆
あれから数ヶ月が経った。
マレンさん、エリスさん。 そして、メイドのヴェルさん、ルプラさん、オーロさん、アズールさん、ローホさん。 合計七人と仲良くなってきた。
「おはようございます。 マレンさん、エリスさん」
「ああ、おはよう」
「おはようございます。 ソウマさん」
今日も今日とて、清々しい朝。
「「「「「おはようございます。 ソウマさん」」」」」
「皆さん、おはようございます」
それにしても本当にここ平和過ぎてヤバいレベルだ。 まあ相変わらずマレンさんの週に一回の買い物付き合いはエリスさんと交代交代でやっているが、本当にそれ以外ではすることがない。
「エリスさん」
「どうかしましたか?」
「今、何をやっているんですか?」
「え? 今ですか? 書類の確認やサインですね。 言わば仕事です」
「マレンさんは?」
「私も書類確認だな」
「マレンさんって仕事するんですか!?」
「いえ、仕事をしてるフリですね……」
……仕事してるフリ? つまり、本当の仕事は全部エリスさん……? 何やってるのこの人は!? 全部仕事は人に任せて、自分は買い物に行く……そのお金も、もしかしてエリスさんから? おいこら、横で口笛吹くんじゃねぇ。
「はぁ、すみませんエリスさん。 俺に何か手伝えることはありませんか?」
「え? いいんですか?」
「ええ」
「本当ですか!? ありがとうございます! ありがとうございます!!」
……どんだけ仕事押し付けてたの? エリスさん涙目なんだけど……。
この日から俺は定期的にエリスさんの仕事を手伝うと決めた。




