11 第二の魔王幹部
いつから居た?
「貴様は誰だ?」
「あ〜? あたしのことっすか? あたしは"魔王幹部"崇拝のマイ・コルト」
「マイ・コルト……?」
「エリス、知っているか?」
「い、いえ、私も……」
目の前の女性、マイ・コルトは自分のことを魔王幹部と言った。 そして、先ほど魔王の反応があったと言った、俺が触ったからか?
「ん〜? おぉ!魔王様ちょっと大きくなったんっすね〜 もしかして、お前らのおかげ〜?」
「悪いが、知らんな」
「そうすか〜?」
その後、マイ・コルトは俺達三人を見渡して一言。
「へぇ〜嘘つかないでくださいっすね〜! その男……そいつのおかげで魔王様が反応したんじゃないっすか?」
「!?」
「図星みたいっすね〜」
その言葉を言い終わると同時にマイ・コルトは姿を消した。
音だけが遅れて響いた。
「は? どこに……」
「ソウマ!」
「ソウマさん!」
「え?」
「遅いっすね〜」
気付いたときには俺の背後にマイ・コルトが立っていた。 そして当たり前のように俺は持ち上がられ、青く輝く場所に近付かせらそうになった瞬間、間に誰かの腕が入る。
「待て貴様!」
そう、マレンさんだ。
「なんすか?」
「そうすると、ソウマは死んでしまう」
「そうなんすね〜 では……」
「待てというのがわからんのか!」
「ごふっ……」
マレンさんの強烈な蹴りがマイ・コルトの腹に直撃し、俺は離れ、マイ・コルトは壁に激突する。 口から血を吐き、膝から崩れ落ちる。 その様子を見るといかに強烈なダメージだったのかは見てとれる。
「あはは! いい蹴りっすね〜!」
「クソ、やはりあまり効いてなかったか……」
「マレンさん! 私はサポートに…… カッ……」
「エリス!?」
「エリスさん!?」
「こっちはあんまりっと……」
先ほどまで向こうで膝立ちになっていたはずのマイ・コルトは気付いたときには俺の横でエリスさんの首を絞めている。
なんだ? なにがなんでも速すぎる。 マレンさんでも目視できないほどの速さ……。
「ごほっ……!」
「……は?」
エリスさんの首を絞めているかと思えば次はマレンさんが殴り飛ばされていた。
「それで〜? オメェが魔王様を復活に必要ってことっすか〜」
「ぐおっ!?」
マレンさんを殴り飛ばしたかと思えば、次は俺の首を掴んでいた。
速すぎる……。 昨日会ったロイなんちゃらより、圧倒的に強い……。
キシキシと明らかに人体から出てはいけない音が出ている。 この野郎、俺の首を折ろうとしてやがる。
「カッ……この、野郎……」
「どうしたっすか〜? すみませんが、よく聞こえませんっすね〜」
「ソウ、マさん……」
ヤバい、これは本当に……。 エリスさんもマレンさんもまだ動けない……。 自分でどうにかするしか……。
思い出せ、コイツは誰だ? 名乗ったときを思い出せ……。
『あ〜? あたしのことっすか? あたしは"魔王幹部"崇拝のマイ・コルト』
コイツは崇拝のマイ・コルト。 崇拝?つまりは崇拝者……。 魔王に崇拝している?
なら、手はあるかもしれない。
「カッ…… この、……」
だめだ、しようとしてもこの腕をどかさないと。 あっヤバい……もう落ち……。
もう無理だと悟った瞬間、俺の体は地面に叩きつけられる。
「ゴホっ……はぁ……はぁ……何、が?」
「大丈夫か? ソウマ」
「……マレン、さん?」
確かに声も姿もマレンさん。 だが、何か違う。 本物なのに別人のように見える。
「すまんな、ソウマ。 私の無茶で危険の目に遭わせた」
「あはは! さっきより力が増えましたっすね〜 何かしましたっすか〜?」
「そんな大層なものではない」
今のマレンさんの状態も気になるが、今はあの野郎を倒すことが最優先だ。 そして、さっき思いついた手をやるには……。
「エリスさん!! 起きれますか!」
「ぁぅ……はい……一応……」
「すみません、さっきの回復魔法を俺にかけることはできますか?」
「ま、魔力がある限りは……」
「ありがとうございます、それと刃物はありますか?」
「サバイバルナイフなら……」
「ありがとうございます」
「あの、ソウマさん……? 何をしようとしてるんですか?」
俺はエリスさんの言葉に返事せずにナイフを受け取り、魔王の場所に近付く。
マレンさんが時間を稼いでくれるうちに……。
「痛い痛い痛い痛い! けど楽しいっすね!」
「この狂人が!」
「そうっすよ? あーしは狂人っす! 魔王様を愛し、魔王様しかいらない。 逆にそれ以外はいらないんっすよ! だから早くどけっす!」
「すまんがそれはできん、ソウマに手を出すことは決して許さん!」
もうお互いの腕や足は目視では見えないほどの速度で肉弾戦をしている。 いつマレンさんが限界を迎えるのかもわからない。
「はぁ……はぁ……」
「……ソウマさん?」
俺は深呼吸をし、覚悟を決める。
そして、俺はサバイバルナイフを振り上げ、魔王に目掛けて振り下ろした。
「はぁぁぁぁ!」
俺の雄叫びは二人の戦闘を止めた。
「なっ!?」
「魔王、様……?」
魔王を切った瞬間――。
「ぅぁぁ……! あぁぁぁぁぁ!」
「まず……」
魔王が鼓膜を破るといわんばかりの叫びと同時に俺は再び、胸に穴が空く違和感が走る。 また、心臓がなくなった。
そして、叫ぶ。
「エリスさん! 回復魔法!!」
「は、はい!!
__聖なる動物、聖なる者、聖なる人、聖なる神よ! この者に再生儀を!!」
口の中で鉄の味が広がる。 それでも、俺は笑った。
俺の……勝ちだ。




