結︰ Q『それが本心と赤い瞳は見据えるのか』
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許されざる事をしたとして。
愛しい人が、愛しく想っている人に嘘を吐いていたとして。
私はそれを許して良いのだろうか。人情に訴えかけて、同情の余地が大きかったとしても、それは許して良いことになるだろうか。
この世界はあまりに脆弱で、曖昧で、神経質で、繊細なのだ。
人間達に課されたあの災いに、彼らはどれだけの抵抗を成せたのだろうか。
今私達にできることを全てやったとしても、人間の贖罪など全うできる訳がない。
「それで、急にどうしたの?」
速度を上げても、一回が終わる度にこちらも災いに遭う可能性が高まる。
なんとなく、物思いに耽ってただけかな。
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数日の時が経ち、秋君との関係も深まってきた……と勝手ながらに思っている。
彼は兄と無事仲直りできたらしく、自分の心の重みも少しではあるが軽くなれたようだ。泪君から頼まれたこともあって、これからは少しずつでも彼がありのままでいられるように手助けしていくつもりだ。
「……ただ」
ときめいてしまったこの感情、胸の高鳴りに目を伏せる。
私は長い間秋君の世話になってきたと同時に、彼と助け合い対話してきた。その間に与えられた優しさの暖かさが、私の心をやんわりと射抜いていっていたのだ。
彼に伝えるべきだとは分かっているが、当たって砕けろの精神には中々たどり着きそうにない。
──────通知音。
久しぶりの連絡に多少驚きはありつつも、スマホを持ちアプリを開く。
『選択をするならば、早い方がお得だよ。少なくとも、恋愛において“察せ”の態度では進展などとてもとても。だからこそ、きちんと示すべきだろうね』
「……本当に、どこから私のことを把握してるんだろう」
としても、彼女の言うことはもっともだ。
立ち上がり、スマホをスワイプして秋君とのメールに指先を伸ばし────。
『結蘭ちゃん、時間ある? 少しで良いから、話をする時間が欲しい』
予期していなかった────彼が先にその言葉を投げかけた。驚きで暫く動けなくなる。「あ」と小さな声が漏れたかと思うと、私は前髪を弄りながら部屋を右往左往して、やがて寝台に腰を掛けてスマホを握りしめる。
気付けば先程視界を駆けた言葉は「スタンプが送信されました」という文字列に変わっていた。それでもメール横の赤い無既読の通知が私の心音を高鳴らせている。
『良いよ、今から?』
震える手でメールを送信する。既読になるまでに十秒はかからない。
『今からでも良いなら、それが良いかな。』
『分かった』
『公園のベンチの所で待ってる』
外を見る。
夕日が空を赤く染めていき、雲もそれを受けながら流れていく。私は上着や荷物を準備してから自室の扉に手を掛け、静かに外に出た。
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肩の力を抜いて、彼の隣に座る。
「…………夕日に月が浮かんでるね。見える? 秋くん」
「うん、見えるよ。綺麗だね」
綻ぶ口元に恥じらいを覚えながら、彼の純粋に煌めく瞳を見た。赤い瞳の中に、そのまま夕日の明るさが移り変わっていく。
その全てを『美しい』の一言で表せてしまうのがいじらしく、またそれを口に出せたならばと火照る。
「……ずるいなぁ」
「え?」
「私ね、秋くんのこと……好きだよ」
「────」
呼ばれたのを逆手にとって、彼が予想だにしていなかったであろう言葉を言ってやった。ボッと、途端に顔が熱くなるのを感じながら。彼もまたそのズルさを噛み締め、ゆうるりと表情を変えていく。私の目を見て、私も彼の目を見る。
「俺が言おうと思ってたのに……ははっ、先手を取られちゃったな」
「それで、お返事は?」
目を丸くし、緩ませ、震える息を吸い上げて彼は私の隣で目を伏せた。
「もちろん、喜んで」
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「秋さん、急に呼んでしまってごめんなさい。用事などありませんでしたかぁ」
「全然問題ないですよ、柊先生。それで……」
それで、俺ってあの子の役に立ててましたか?
……俺、あんまり自分に自信がなくて。
先生、俺は真剣に聞いてるんです。何かこう、あの子の為にできることとか……。
「あぁ、光輝さんが最近来ていないでしょう? だからこれまでのプリントや課題を渡して欲しくて。頼めますか?」
「分かりました。家も近いですし、先生が行くより早いですからね」
「あはは……その通りですよぉ」
あの子のお父さんが、必死にお偉い方の提示した世界の課題に取り組んでいるのを見ていて、俺達も何か手伝いたいって言ったんです。
はい、いつもの六人で。……いや、その時はあの子は家に居て、……まあ、言いに行ったときは七人全員でした。
そうしたら、守ってくれって……それだけで────良いって。
「光輝、居るか────」
ずっと不思議だったんです。俺達は決まって体に■があった。いつも大人たちは俺達に■■■■■■■って言う。■■が来れば■■■■■■■■■。
「…………大きな音。光輝はそういうの苦手だったな。珍しい……ような」
あの、■■って何ですか?
「鍵は……かかってない? どうして…………」
✽ ✽ ✽
用心がないにも程がある。家の周りには車が無いから両親は居ないのだろうし、息子一人家に置いて鍵もかけないのはおかしい。体調を崩していて、薬でも買いにいったんだろうか? そのまま慌てて鍵をかけ忘れた……と思うことにしよう。
中を覗き、紙束を玄関横の棚上に置く。
────ドタッ、ダンダン
──────ガタンッ
「……光輝?」
階段を見る。それよりも上、こもっているから部屋の中で鳴っている音だ。
「プリントとか持ってきたんだが────光輝?」
不定期で天井付近が鳴っている。
「光輝、入るよ……」
階段を登り、目の前に飛び込んだのは──扉に吊るされた看板。『こうき と ひかる』と書かれたその可愛らしい看板は、静かに横に揺れている。
そしてその奥から、
────ギギ、ギギギ
「光輝、大丈──────」
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エンドα 抱きしめたくなるじゃないか。
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