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第23話 もう一人の自分!?

二人は並んで道を歩き、その少し後方からは変装したマルコとポーロがこっそりと後をつけていた。


「高橋さんって、普段何か好きなこととかあるの?」向陽は並んで歩きながら、探るように尋ねた。


「えっと……」高橋は首をかしげて少し考え、「動物のお世話とかかな……うん! たぶんそうだと思う。向陽くんは?」


「僕?」向陽は照れくさそうに鼻の頭をかいた。「僕は最近、自分がやりたいことを探してるところなんだ。だから高橋さんや優依はすごいなって思うよ。自分の好きなことに向かって進んでて……僕だけがずっと同じ場所で立ち止まってる気がするんだ」


高橋は慌てて手を振り、焦ったように否定した。「そんなことないよ! 私だって自分のやってることがよく分からなくなること、しょっちゅうあるもん。だから、そんな風に思わないで!」


向陽は彼女の真剣な瞳を見つめ、胸の奥が温かくなるのを感じながら頷いた。「うん……分かった」


後ろで盗み聞きしていたポーロは顔を覆い、蚊の鳴くような声で嘆いた。「あいつ、一体何の会話してんだよ。なんでそんな重い雰囲気にしちゃってんだよ……」

マルコは前方を見つめたまま、低く呟いた。「ふむ……確かに。俺たちはまだ介入せず、もう少し様子を見よう」


二人はカフェに到着し、カウンターへと向かった。


「高橋さんは普段、どんなのが好きなの?」


高橋はメニューを見つめ、迷いなく言った。「んー……「アイスコーヒー、ガムシロップなしで、ガムシロップなしで」


向陽は驚いて高橋を二度見し、心の中で叫んだ。ブラックコーヒー……!? す、すげえ……


背伸びしたい一心で、向陽も慌てて店員に告げた。「あ、僕も同じやつで!」


向陽はカップを手に取り、窓際の席に着いた。向陽は杯を手に取り、恐る恐る一口すすった。


に、にがっ……! 向陽は苦さのあまり顔が歪みそうになり、慌てて向かいの様子を盗み見た。高橋は平然とした顔でコーヒーを口に運んでおり、全く苦にする様子はない。


そのまま二人は席に座り、二人の間に気まずい沈黙が流れた


少し離れた場所から観察していたマルコとポーロ。変装したポーロがすぐさまトレイを持って立ち上がり、向陽の席へと近づいた。


「お客様、こちらミルクとシロップになります。よろしければお使いください」ポーロはトレイを置くと、向陽の耳元に顔を寄せ、声を潜めて歯ぎしりするように囁いた。。「この前の落ち込んでた理由を聞けよ、バカ!」


言い捨てると、ポーロは迅速にその場を離れた。


向陽は慌ててミルクとシロップをすべてコーヒーに投入し、スプーンで混ぜながら、沈黙を破るように切り出した。「そういえば高橋さん……この前、少し落ち込んでるように見えたんだけど、何かあったの?」


高橋は手を止め、うつむいて長考した。「んー……実はそんな大したことじゃないの……たぶん私の気のせいだと思うし。言うのもちょっと恥ずかしいんだけど」


向陽は真剣な眼差しで見つめた。「高橋さんが話してくれるなら、僕、喜んで聞くよ」


高橋は恥ずかしそうに両手でカップを強く握りしめ、しばらくうつむいていたが、やがて意を決したように顔を上げた。「うん……でも、聞いても私が頭おかしくなったとか思わないでね?」


向陽は思わず笑ってしまった。「ハハハ、頭がおかしくなった? なんでそんな風に思うのさ」


高橋は頬を少し赤らめ、声を潜めた。「実はね……最近、『もう一人の自分』を見た気がするの」


「もう一人の自分!?」向陽は目を見開いた。


離れた場所で盗み聞きしていたマルコとポーロも、「もう一人の自分」という言葉を聞いた瞬間、表情を一変させて驚愕の視線を交わした。


向陽は慌てて常識的な解釈でなだめようとした。「そ……それって、ただ高橋さんにすごく似てる人だったんじゃないの?」


高橋は首を横に振り、確信に満ちた目で言った。「ううん、絶対に私自身だった……それに聞いたことがあるの。もし自分と同じ姿のドッペルゲンガーを見たら……自分の寿命がもうすぐ終わるサインだって」


向陽の心臓が跳ね上がった。彼は思考を巡らせた。マルコやポーロが別の時空から来られるのなら、別の時空から来た高橋がいてもおかしくはない。だが……なぜ二人目の高橋が?


高橋の瞳が暗く沈んでいくのを見て、向陽は慌てて慰めた。「絶対にそんなことないよ! 高橋さん、考えすぎだって。よく考えてみてよ、現実にそんなSFみたいなことが起きるわけないじゃないか!」


高橋は躊躇した。「で、でも……」


向陽は食い気味に言い切った。「絶対、ただのソックリさんだよ。間違いなくそうだ!」


高橋は伏し目がちに、少し力なく呟いた。「そ……そうかな……」


向陽は席を立った。「ごめん、ちょっとお手洗いに行ってくるね」

高橋は顔を上げ、素直に頷いた。


向陽がトイレに入ると、案の定、変装したマルコとポーロが中で待ち構えていた。


向陽は声を潜め、詰め寄った。「高橋さんが言ってた『もう一人の自分』ってどういうことだよ!? あんたら以外にも誰かタイムトラベルしてきたのか!?」


ポーロは肩をすくめ、


向陽は呆れたようにポーロを睨みつけた。「他に誰がそんなポンポン時空を超えられるんだよ!?」


マルコは険しい表情のまま、重々しく口を開いた。「いや……もしかすると、その人物は僕の知っている高橋さんかもしれない」


ポーロと向陽が同時に声を上げた。ポーロは目を丸くした。「マジかよ……あいつまでこの時空に来てんのか!?」


向陽は思わずツッコミを入れた。「おいおい、今や誰でも自由に時空超えられるようになってんのかよ!?」


マルコが眉をひそめて説明しようとした。「いや……だが僕が思うに——」


ガラガラガラ……ジャザーーーッ!


突然、隣の個室からけたたましい水洗音が響き渡った。


ドアが開き、ズボンを上げながら出てきた中年のおじさんが、目の前の若者三人組を「なんだこいつら……」と言わんばかりの冷ややかな目で見つめた。


ポーロは驚異的な反応速度で向陽の肩を抱き寄せ、大声で言った。「やー! あのゲームのストーリー、マジでそういう設定だったよな、向陽!?」


向陽は冷や汗を流しながら、必死に合わせた。「あ……そうそうそう! マジでそのゲームプレイするの待ちきれないわー!」


おじさんは呆れたように首を振り、「最近の若いのは……」という顔でサッと手を洗って出て行った。


おじさんが去ったのを確認すると、マルコは冷徹に言い放った。「とにかく……詳しい話は戻ってから整理しよう」


三人は頷き合い、時間差でトイレを後にした。


元の席に戻ると、高橋が両手でカップを包み込み、静かに窓の外の街並みを眺めていた。


「お待たせ」向陽が椅子を引いて座る。


「お帰りなさい」高橋は振り向いて温かく微笑み、二人は先ほどの続きのように和やかに会話を再開させた。


少し離れたコーナー席で、仲良さそうに話す二人を見つめていたマルコは、表情を曇らせ、ポーロに向かって囁いた。


「お前はここで二人を見張ってろ。僕は外に出て調べてくる」


「おい! ちょっと待てよ——」ポーロが低く叫んだが、マルコはすでに帽子を深くかぶり直し、足早にカフェを出て行ってしまった。。

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