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第18話 ポーロ過去編4

二人は向かい合い、無言で互いを見つめた。

気まずく重苦しい沈黙が部屋を包み込み、周りの空気までもが凍りついたかのようだった。


「スーツ姿の自分」は小さくため息を吐くと、対話を諦めたようにくるりと背を向けて出て行こうとした——ポーロはとっさに駆け寄り、その腕を掴んだ。

「ま、待って待って待って、ちょっと待ってくれ!!」


相手は腕を振り払おうと力を込め、冷酷に警告した。「放せ! なぜ君がここにいるんだ? 君がここにいていいはずがない! そんな勝手な時空干渉をされたら、僕の仕事に差し支えるんだよ!」

ポーロは目頭を真っ赤にし、叫ぶように訴えた。「優依……私は優依を救わなきゃいけないんだ!」

「優依……?」相手はわずかに眉をひそめたが、すぐに冷ややかな表情を取り戻した。「どんなことがあろうと、歴史は本来あるべき流れに委ねるべきだ」


言い終えると通信機を取り出し、侵入者の報告に取りかかろうとする。

頭の中で様々な考えが駆け巡った。目の前の整ったスーツ姿の自分を見つめるうち、ふとひらめきが走った——先ほど手帳で目にした『未確定の世界』。そして、あの高橋という少女の存在。


「待てよ! 『未確定の世界』のことを知ってるだろ!?」ポーロは大声で呼びかけた。

通信機を操作していた手が止まり、相手は少し訝しげに顔を上げた。「未確定の世界……?」


「備考にハッキリ書いてあった! あの世界での選択は、この世界や他の時空の未来に直接影響を与えるって!」焦りを隠せないまま、畳みかけるように言った。「君が今築いている幸せだって、あの未確定の時空のせいで根底から書き換えられる可能性があるんだぞ!?」

「スーツ姿の自分」の瞳の奥が微かに揺れた。「……聞いている。続けろ」

「もし僕たちがあの世界の未来を変えることができれば……優依を救うことも、君と高橋の未来を守ることも、絶対に両立できるはずだ!」


「スーツ姿の自分」はうつむき、束の間深く考え込む素振りを見せた。

数秒後、ゆっくりと通信機を口元に寄せると、一切の躊躇なく言い放った。

「——報告室に侵入者だ。至急、警備員を向かわせてくれ。」


アラームの甲高い警告音が空間全体に響き渡る!

ポーロは信じがたい思いで怒号を上げた。「どうして分かってくれないんだ!? 君にとって高橋の未来はどうなってもいいのかよ!?」

勢いよくドアが開かれ、二人の警備員が雪崩れ込んできた。左右から両腕を強く抑えつけられる。

「待ってくれ! 頼むから私の話を聞いてくれ!!」必死の抵抗も虚しく、強引に引きずり出されていく。


「スーツ姿の自分」はその背中を見送りながら、小さく目を閉じた。警報音が遠ざかるのを見届け、静かにコンソールへと歩み寄ると、一冊の『指導手帳』を開いた……


待機室に押し込められ、部屋の中を焦燥感に駆られて往復していた。

脱出の方法を模索していると、ドアのガラス窓越しに高橋が廊下を通りかかるのが見えた。心を決めると、激しくガラスを叩いた。


高橋は足を止め、中にいる姿を見て驚いたようにドアを開けた。「何してるの?」

背中に冷や汗を流しながら、必死に取り繕った。「あ! さっき侵入者が入ってきたんだけど、隙を突かれて逃げられちゃって! 急いで追わなきゃ!」

言い捨てるやいなや、部屋を飛び出した。一人取り残された高橋は、首を傾げて呟いた。「一体どうしたのよ……?」


身を低くし、記憶を頼りにこっそり先ほどの報告室へと引き返した。

ドアの隙間から覗き込むと、「スーツ姿の自分」が真剣な面持ちでコンソールに座標を高速入力しているのが見えた——

画面に表示された文字:【座標:未確定の世界】。


その光景を目にし、口元が自然と緩んだ。胸の奥から熱いものが込み上げてくる。

やっぱり……私と同じ人間なら、心の奥にある決意も同じはずだ!


「スーツ姿の自分」が中央のプラットフォームに立ち、深く息を吸って起動ボタンを押した。

直後、彼の身体は原子レベルで分解されるかのように、光の粒子となって急速に消滅していく。


「消えた……!?」驚きのあまり小さく声を漏らした。


相手が転送されたのを確認すると、プラットフォームへと駆け寄った。

画面に表示された座標を見つめ、息を呑んで決定ボタンを強く押し込む——


眩い強光が視界を襲い、思わず目を強く閉じた。

再び目を開けた時、そこに広がっていたのは、見慣れた景色だった。


「ここ……僕の家の裏庭か……?」


外へ出ようと壁際から表の玄関を覗くと、優依が不安げな表情で立ち尽くしているのが目に入った。

まずい……正面からは絶対に入れないな。


見上げると、二階にある自分の部屋の窓があった。裏庭の物置へと忍び寄り、折りたたみ梯子を引っ張り出すと、音を立てないよう細心の注意を払って壁に架けた。

慎重に登り、窓越しに部屋の中を覗き込む——マルコはすでに部屋の中にいて、この世界の「向陽」と楽しげに言葉を交わしていた。


深く息を吐き出し、心の中で自分に言い聞かせる。もう後戻りはできない。

音を殺して窓枠を越え、部屋の中へと静かに滑り込んだ。

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