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ジェルソミーナとの会話が終わる前に質疑応答を兼ねた交流の時間が終わってしまった。まだ話し足りないと言い出しそうな表情をする彼女に背を向けたエルフリートは自分のすべき事に集中する。
ジェルソミーナの視線を感じながら色々するのは微妙な気分だ。エルフリートは少しぶりに合流したロスヴィータと共にエンリケと話をしながら彼女からの視線を気にしていた。
そろそろ樹上の通路を下りて野営する場所に向かう必要がある。エルフリートたちは、クノッソ領の騎士について遠くまで移動してしまった少女たちが戻ってくるのを待っているところだった。
「熱烈なファンができたようだな」
「えへへ……ばれちゃった?」
「あれだけ目立っていれば」
エンリケは会話を覚らされないようにかロスヴィータを見ながら苦笑する。どうすればエルフリートへの執着を捨ててくれるのかは分からないが、会話自体は成立している。
対話を重ねていけば、理解してくれる日が来るかもしれないとエルフリートは期待していた。
「まあ、何とかするよ」
「困ったら第三者に相談だからな」
「エンリケ、彼女だってそれくらいは理解している。問題ない」
エルフリートの根拠のない返事に対して心配するエンリケに、ロスヴィータが割り込んだ。エンリケが心配するのも無理はない。だって、相手はあのエルフリーデなのだから。
エルフリートはロスヴィータの肩に自分の肩をこつんとぶつけるようにしてくっついた。
「エンリケが心配してくれて嬉しい。ありがとう!」
「……浅い仲ではないからな。一緒に作戦に身を投じた仲だろう」
「えへへ」
エンリケはロスヴィータとエルフリートの肩を同時に叩く。
「訓練とはいえ会えて良かった。もし、研修が必要な騎士がいたら寄越してくれ。王都での活動も大切だが、こういう地方での活動もできるようになった方が良いのは明らかだからな」
「研修……! それ、良いかも。ありがとう!」
いつまでも見守り続けているわけにはいかない。女性騎士の存在が珍しい状況は続いているが、人数は増えてきたし、交流した事のある先輩騎士の数だってそれなりになった。
エンリケのように信頼できる騎士もたくさんいる。そろそろ、そういう事を考えても良い頃合いなのかもしれない。いや、もしかしたら遅すぎるくらいかもしれない。
「ロス、この件は後で相談しようね」
「ああ……確かに、我々もそういう活動を始めるのは悪くはない」
「研修先の候補にはぜひクノッソ領を」
エルフリートの提案にロスヴィータが同意すれば、エンリケは片眉を上げてにやりと笑った。そのおどけた様子にエルフリートが小さく吹き出すと、ロスヴィータが咳払いでそれを隠す。
「もちろんだ。あなたがいるなら心強い」
ロスヴィータが取り繕おうとしているのが露骨すぎて、エルフリートは笑いを抑えるのに必死だった。ロスヴィータの抗議の視線がエルフリートに突き刺さる。両手でしっかりと口を塞いで「私は反応していません」とアピールしたが、あまり効果はなさそうだった。
「……とにかく、検討はする。頼りにもしている。話はこれで終わりだ」
「そうだね、そろそろみんな戻ってくる頃合いだし」
「ああ。確認しに向かっていたテッサが戻ってきた。本当にもうすぐだ」
木の葉で視界が悪いだろうに、それらをかいくぐって飛んでいる魔獣の姿が見える。ずいぶんと器用な事をする。エルフリートは速度を緩めずに突っ込んできたテッサを見て「おかえり」と声をかける。
テッサはエンリケの腕に止まらずエルフリートの肩に止まる。エルフリートはくすくすと笑いながらテッサの嘴をくすぐった。
「テッサ、可愛い」
「浮気するのかテッサ」
文句を言うエンリケに対して首をかしげてみせるテッサはあまりにも可愛らしい。さすがに真面目な表情をしていたロスヴィータでさえ表情をゆるませる。
「テッサ、確認しに行ってきてくれてありがとう。エンリケが嫉妬しちゃうから、もう彼の方に戻ってね」
「キュルル」
テッサはこの場所が大声を出してはいけない場所だと分かっているのだろう。エルフリートの耳元に甘えるような声を出し、嘴ですり寄ってくる。
一瞬、エルフリートの肩にずしっとした重みがかかった。跳躍の気配を感じ取ったエルフリートが補助するように動けば、テッサはふわりと飛ぶ。
賢い魔獣は翼を広げる事なく、エンリケが掲げた腕の上に収まった。




