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結果発表の前に、ロスヴィータを先頭にエルフリート、バルティルデ、マロリーが前に出る。全員が「もしかして」とロスヴィータたちが手にしている弓矢を見てざわついた。
期待値が上がるのを肌で感じながら、エルフリートはロスヴィータの案内によって一歩前に出たマロリーを見る。彼女が一番最初の挑戦者だ。
マロリーは最低限の心得はあると言っていたが、期待しないでほしいとも言っていた。
「では、マロリー」
「はい」
マロリーは少女たちが矢を放った位置と同じ場所に立ち、弓を構える。重心や姿勢に問題はない。矢を引き、弦が張っていくのもうまくいっている。あとは、しっかりと的を狙う事ができているか、くらいだろう。
マロリー含む少女たちと獲物の距離はあまり遠くはない。真っ直ぐに矢を放つ事さえできれば、おおよそ射抜く事が可能な距離だ。弓が途中で減速して当たる頃に高度が下がる事もない。何も考えずに、ただ狙うだけだ。
マロリーは獲物のど真ん中、とまではいかないが全部を射抜いた。
「では、バルティルデ」
「はい」
愛称で呼ばれないのって聞いているだけでも緊張する。エルフリートは緊張を感じさせないゆったりとした表情で前に出たバルティルデを目で追う。
彼女はなぜか本来の位置についた途端、的に背を向けて歩き出す。どうやら自主的に難易度を上げるつもりらしい。ここで難易度を上げられてしまうとロスヴィータの顔を立てるのが難しくなるわけだが、大丈夫だろうか。
エルフリートがはらはらしながらロスヴィータを覗き見れば、彼女は硬い表情をしていた。
それはそうだろう。バルティルデがそれを成功させれば、ロスヴィータも同じ距離で挑戦せざるを得ない。最初から不安がっていたのだ。緊張しないわけがない。
エルフリートは思わず彼女の腰にそっと手を添える。バルティルデが最初の矢を放った瞬間、ロスヴィータがエルフリートに視線を向けて小さく頷いた。その表情はあまり良いものではなかったが、エルフリートの心配がロスヴィータに伝わったのだけは分かる。
励ます事ができた。しかし、それで問題が解決するわけでもない。エルフリートは周囲に気付かれないようにバルティルデが二本目の矢を放つ頃合いを見計らって彼女の腰をぽんぽんと撫でた。
「フリーデ、大丈夫だ」
「ふふ。骨は拾ってあげる」
「……私が本番に強い事は、あなたが一番知っているだろう?」
ロスヴィータの強がりかと思えば、エルフリートの軽口に乗ってきた。もう大丈夫だろう。ロスヴィータの弓矢の技術について、実のところエルフリートはよく知らない。
彼女が不安がっているのが本当に自信がないだけなのか、冷静に考えて能力的に厳しいと判断しているからなのか、エルフリートには分からなかった。一つだけ分かる事は、緊張しすぎては逆に失敗してしまうという事くらいだ。
人間、ほどよく緊張しているくらいが丁度良い。失敗しないようにしないと、と考えれば考えるほど失敗してしまうものなのだ。
エルフリートは先ほどよりも表情をゆるませてバルティルデを見つめるロスヴィータの事を眺め、うまくいくようにと心の中で祈り、応援するのだった。
「本当は私が最後に挑戦すべきなのだが、一番技術があるのはフリーデだ。だから、私が先に挑戦する」
安定して的を射抜いたバルティルデが笑顔でこちらに戻ってくると、彼女と入れ替わるようにしてロスヴィータが動いた。バルティルデと同じ位置につくと、ゆっくりと矢を引いた。
構え方は間違っていない。注意すべき点はない。気になるとすれば、少しばかり表情が硬い事だろうか。矢を引けるところまで引いているし、影響は少ないがやや上方を狙う構え方をしている。もう少し下の方を狙った方がよさそうだが、口出しはできない。
ロスヴィータが放つ矢がどれくらいの速度かによるが、まずまずの当たり方にはなりそうだとエルフリートは予想した。
やはり、と言うべきか。バルティルデの弓よりも速度が出ていない。彼女の弓の方が出来が良かったからだろう。そもそも腕力や練度が違う。エルフリートが考えているよりもやや遅めの矢は、想像よりも良い位置を射抜いた。
そうして三本の矢が放たれ、すべて無難に終わる。どうにかロスヴィータの面目は保たれた。
「では、エルフリーデ。その腕前、我々に見せつけてくれ」
「はぁい」
エルフリートは手を挙げてゆるい返事をすると、バルティルデやロスヴィータが挑戦した位置よりも距離を取るべく足を進めた。




