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妖精と王子様のファーストダンス(へんてこワルツ7)  作者: 魚野れん
エルフリート最後の山岳訓練

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26/27

5

 走り去る姿を見送ったエルフリートは一緒に悪事を働こうとした男たちの事を睨みつける。全員が全員ナタリアに恨みがあるわけではないはずだ。

 それなのに彼女をターゲットに絞って行動したのは、きっと彼女一人ならばどうとでもなると思ったからだろう。


「ところで、情けないとかそういう気持ちはないの?」

「フリーデ」

「ロス、だって……!」

「さっき彼らの口を封じたのはあなたではないか」


 ロスヴィータがため息をこぼす。そうだった。余計な事を話したりしないようにって魔法で口を閉じさせちゃったんだった。

 エルフリートは「あっ」と叫んでから口を塞いだ。ロスヴィータはそんなエルフリートの様子を見てくすりと笑う。焚き火の柔らかな光がロスヴィータに当たって、より朗らかな雰囲気に見せている。

 エルフリートは自分の失態に羞恥心を覚えながらも、彼女のその表情に見とれていた。


「ロス、フリーデ!」

「ああ、来てくれたか」


 バルティルデの声が聞こえて振り向けば、彼女の他にマロリーとナタリア、そしてパトリツィアがいた。彼女は今期に入ってきた新人で、半泣きだった。不思議に思ったエルフリートだったが、彼女がナタリアと一緒に焚き火の番をする予定だった事を思い出して納得する。

 きっと彼女は何らかの事情があって席を外していたのだろう。そして、その間に事件が起きた。自分が役割を果たせなかったどころか大騒ぎになっていると知り、動揺しているに違いない。


「トリッシュ、大丈夫?」

「えっ、あ、はい、あの……」


 エルフリートはパトリツィアのすぐ側までいくと、彼女は分かりやすく肩をびくりと震わせた。エルフリートは安心させるように視線の高さを合わせて微笑んだ。


「良かったよ、無事で。見当たらなかったから心配していたの」

「私、えっと」


 パトリツィアが事情を話そうとしているのは分かっていたが、あえて公の場で聞き出す必要はない。エルフリートは彼女の言葉に言葉を重ねて飲み込ませる。

 それでも言い出そうとしている彼女の頭を軽くぽんと撫でれば、エルフリートの意図に気付いたらしく口を閉じた。その様子に頷いてから離れる。


「トリッシュはナタリアと一緒にテントに戻ってくれる? とりあえず、悪い人たちをひとまとめにして安全なところに留置しなきゃいけないから。それが終わったら、ゆっくりお話を聞かせてね」

「はい」


 今度こそパトリツィアはエルフリートの言葉に素直に頷いた。


「よぉし、じゃあ連行しよう!」


 エルフリートが魔法の鎖を引っ張ると、男たちの何人かがバランスを崩して大地に転がった。鎖があちこちに引っ張られて引きずれるような重さではなかった。


「わわっ」

「何の為にあたしたちを呼んだんだい?」

「……物忘れでもしたのかしら」


 ふいに鎖のコントロールが安定する。バルティルデが一番邪魔になっていた男を持ち上げたようだ。その他の男たちのほとんどはマロリーの魔法で強制的に立たせられていた。

 エルフリートは自分の迂闊さに苦笑しつつ、二人に感謝の気持ちを伝える。


「ありがとう、二人とも!」

「構わないさ。ほら、さっさと連れていくよ」

「うん!」


 頼もしい二人がいてくれて良かった。エルフリートはそう思いながら歩き出す。


「ちょっと! 先頭を歩くのはやめて。あなた、連れていく先を知らないでしょう? こっちよ」


 呆れ声を上げながら追い抜かすマロリーの後にエルフリートとバルティルデがついていき、引きずられる男たちの後ろにロスヴィータが続いた。きつい言い方をしていたマロリーだったが、彼女の口角は上がっていた。

 こういうやり取りをあと何回できるのだろうか。エルフリートは悪友のような関係のマロリーに対して、小さく「いつもありがとう」と感謝の言葉を重ねる。


「……そう思うなら、私に迷惑をかけないようにしてくれると嬉しいんだけど」

「ふふっ、頑張るね」

「期待しないでおくわ……」


 マロリーとの言葉の応酬に、バルティルデが笑い出す。バルティルデに担がれた男は無造作にゆすられてもごもごと何かを訴えていた。

 口を塞いでおいて正解だったね。放置していたら、きっと喚き散らしていたよ。

 時々呻き声らしき何かを聞きながらマロリーのあとをついていくと、目的地は案外近くにあった。少人数ずつ眠れるように設置したテントの内の一つだ。大きさこそあまりないものの、男たちをまとめておいておくくらいならばできるだろう。

 このテントで寝るはずだった子たちがどこで眠る事になるのかだけ気になるが、それはあとで確認すれば良い。

 少なくともバルティルデとマロリーの二人ならば、それくらいの対策はしてくれているはずだから。


「ここよ」

「立ったままかな?」

「いや、一応座れるはずだよ。でも座ったままだと体に悪いから立たせておくのも悪くはないね」


 くぐもった声がいくつも上がる。どうやら男たちは不満なようだ。エルフリートがロスヴィータの方を見ると、彼女の表情は険しくなっていた。


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