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妖精と王子様のファーストダンス(へんてこワルツ7)  作者: 魚野れん
新しい仲間と生活と

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10

 謎の贈り物に関する問題がひとまずの解決を迎えた二人は、執務室での贈り物の確認作業に戻っていた。


「ありがたい話だな」


 ロスヴィータは贈られた品々を見つめてしみじみと呟いた。エルフリートの方は彼女の言葉に頷いてから、謎の贈り物になっていたロエーロからの贈り物を手にして笑う。


「これだけはやっぱりよく分からないけどね」

「あまり乱暴にしないでくれ。我々の為に作ってもらった貴重な巣なのだから」


 変なプレゼントである事は否定しない。だが、ロスヴィータはこのプレゼントを意外と気に入っていた。一般的に巣というものは、家族になる番が作るものだ。

 ロスヴィータとエルフリートは今、“ロスヴィータとエルフリーデ”としてこの場所にいる。ロスヴィータが結婚するのはエルフリートとであって、エルフリーデではない。エルフリーデが結婚するのはレオンハルトとであって、ロスヴィータとではない。

 それを知っていながら、ロスヴィータとエルフリートの為に巣を作ってくれた。


 ロエーロだって、さすがに女性騎士団のツートップが恋愛関係にあるとは思っていないだろう。そんな風に思っていたら、あからさますぎるプレゼントを嫌がらせ以外の意味で用意する事はなかったはずだ。

 ロエーロは純粋にロスヴィータとエルフリーデという親友同士の関係を思ってこのプレゼントにすると決めたのだ。

 そう思えば、嬉しくないわけがなかった。


「私とあなたの関係に、家族のような親密さを感じてくれていたという事だろう? 私は素直に嬉しい」

「ロスがそう思ってるなら良いよ」

「何か不満があるのか?」


 エルフリートの思うところがあるかのような言い方に首を傾げる。エルフリートが不機嫌になる原因は誤解だったと分かって解決したはずだ。

 いったい今度は何が引っかかっているのだろうか。


「別に、大したことじゃないの。もしかしたら、私よりも、みんなの方がロスの事を理解しているんじゃないのかなって……思っちゃっただけ」

「……すまないが、フリーデの言っている事がいまいち分からない」


 ロスヴィータは素直に分からないと口にした。エルフリートはここまで飾り気のない言葉が返ってくるとは思っていなかったのだろう。小さく口を開いて固まった。

 その姿があまりに可愛らしく、ロスヴィータは思わず口元がゆるんでしまう。


「私は、私の事を一番理解しているのはあなただと思っている。だから、フリーデにそう言われてしまう理由がピンとこない。

 どうしてそんな風に思ってしまったのか、説明してくれないだろうか?」


 ロスヴィータはロエーロが作った巣に兎を乗せたものをエルフリートの目の前で左右に揺らし、微笑んだ。

 硬直から復活した彼は逡巡するように視線を彷徨わせ、それからゆっくりと口を開く。


「あのね、私もロスにプレゼントを贈るでしょ?」

「ああ。いつも楽しみにしている」

「でも、感謝のお手紙とかは書いてないじゃない?」


 エルフリートはロスヴィータにたくさんのものを与えてくれる。それはロスヴィータが息をしやすくなるような気遣いであったり、欲しいなと思っていた文房具などの実用品であったり、一緒に楽しめる時間であったり、様々な形のプレゼントだ。

 ロスヴィータはエルフリートから与えられるそれら一つひとつをいつも嬉しく感じている。

 感謝の手紙を書かなければならないのはロスヴィータの方だった。


「感謝されるような事を、私はあなたにしているか?」

「えぇっと、そういう意味じゃなくて……」


 エルフリートの目が泳ぐ。エルフリートの考えている事が分からない。エルフリートが自分よりも周囲の方がロスヴィータの事を理解していると言っていたが、ロスヴィータの方がエルフリートの事を理解しきれていないのではないだろうか。

 ロスヴィータはエルフリートの事を理解したい一心で、彼が言葉を紡ぐのを待った。

 エルフリートの長いまつげが頬に影を作る。それが数回瞬いたかと思えば、その下に隠されていた美しい虹彩がロスヴィータに向けられた。


「ロスがそうやってプレゼントを受け取って喜んでいる姿を見ると、私はまだ足りていないような気がしちゃう」

「……」

「こんな風に思うのは変なんだって分かってるんだけど、ロスの笑顔は私が引き出したいなって。だから、感謝の手紙を渡されて喜ぶ顔も……みたいな。……ごめんね、何かちょっと私、欲深いかも」


 エルフリートの声は次第に小さくなっていき、すぐ隣にいるロスヴィータですら真剣に耳を澄ませなければ聞こえないほどまでになった。だが、ロスヴィータは聞き逃さなかった。


「フリーデ」

「ごめん」

「いや、謝らなくて良い。ここ一番のプレゼントだった」

「えっ?」


 ロスヴィータはテーブルにプレゼントを置き、エルフリートの手を握った。ロスヴィータの動きを追うようにして握られた手を見つめた彼は、ゆっくりとロスヴィータの顔に視線を戻す。

 再び視線が交差する。ロスヴィータは彼を安心させるように笑いかけた。


「あなたの本音を聞く事ができた。それは、私にとって何よりもの贈り物だ」

「な……っ!」


 エルフリートはロスヴィータの意図を要約理解し、顔を赤く染め上げるのだった。

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