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妖精と王子様のファーストダンス(へんてこワルツ7)  作者: 魚野れん
新しい仲間と生活と

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19/27

8

 ロスヴィータがエルフリートの不機嫌な様子を気にしていると、エノテーカが再びロエーロの頭をはたいた。


「やっぱり俺が言った通り、檻は不評だったろ。ほら……それは回収してもう片方のプレゼントと交換しろ」

「俺の力作なのに……」


 ロエーロは元からプレゼントを二種類用意していて、その内自分が気に入っている方を渡してきたという事だろうか。二人のやり取りを聞きながらエルフリートと顔を見合せれば、彼は困惑したように眉をひそめていた。


「話の流れが全く分からないのだが」

「――えっと、これを別の何かと交換するんだよね……?」


 ロスヴィータとエルフリートがほぼ同時に口を開く。ロエーロは二人を交互に見て、それからロスヴィータから檻を受け取った。彼は正に渋々といった風に檻――ロエーロは未だにこれを炎牢だと言い張っている――を制服のポケットへしまい、もう片方のポケットから何かを取り出した。

 今度も立体物だが、檻と違って比較的平らな形をしている。


「兎を乗せる台座だ」

「……一気にまともになったな」


 ロスヴィータが思わずそうこぼすと、ロエーロが「ひでぇ!」と騒ぎ、そんな彼をエノテーカが「うるさい」と殴った。

 ああ、遂に暴力になったか。横っ腹に拳を一撃食らったロエーロが攻撃された場所を押さえて蹲る。

 自業自得とはいえ可哀想に。ロスヴィータは同情した。


「今度こそ、全部の説明をしてもらえるのだろうか?」

「くだらない話でもよければ」

「かまわない」


 中途半端になっていた説明、新たに出てきたプレゼント、そしていまだに不機嫌なエルフリート。ロスヴィータは訳が分からなくて気持ちが悪いと思っていたところだった。

 ロスヴィータはどんなにくだらない内容でも受け止める覚悟で頷いた。


「誤解しないでほしいんだが、俺は決してその二羽の兎をお前たちに重ねた訳じゃない。だから兎を閉じ込める炎牢をプレゼントしたのだって、お前たちを手に入れたいとか、閉じ込めたいとか、そういう意図は込めてない」

「…………」


 檻には、そんな意図を感じさせるものだったのか。ロスヴィータはようやく理解した。檻が一つだけだったせいで、エルフリートの目には二人の内のどちらかを狙っているという意思表示に見えたのだろう、と。

 そういう話であれば、エルフリートが怒るのも納得だ。二人がそれぞれ結婚を控えている身だと分かっていての冗談だとしても、悪気があると思われても仕方がない。

 ロスヴィータが半目になったのに気付いたロエーロが慌てて両手を振っている。


「あぁいや、本当に! さっき話した以上の意味はなかったんだ! それにあの炎牢は俺の自信作だったんだぞ! 一つしかできなかったのは、あれしかうまく作れたのがなかっただけだし!」

「うっせぇ」

「うぐっ」


 ロエーロの弁明虚しく、彼はエノテーカにまた殴られていた。――いや、弁明する時の態度が問題だっただけで内容は適切だったか。ロスヴィータは内心苦笑する。

 どんなにくだらない内容でもという覚悟を決めてはいたが、くだらなすぎた。


「で、こちらの皿は……?」

「台座」


 彼が持っているそれは台座と言うには平たく、何かを載せるような物には見えるが、食べ物との相性が良さそうに見える。皿と言われても作者以外は誰も否定しないだろう。

 これを逆さまにしてみても、台座とは……正直に言って思えない。

 様々な感情を抑えながら、ロスヴィータは言い直した。


「失礼した。この台座は……?」

「これは、美しき贄の為の台座だ」

「やっぱりお皿なんじゃ……」


 ロエーロの自慢げな声にエルフリートがボソッと呟いた。さすがにエルフリートの機嫌は収まっていた。今では彼はロエーロに残念な生き物を見るかのような視線を向けている。

 エルフリートの気持ちが穏やかになったのは良いが、プレゼントを渡されてこんなに複雑な気持ちになるのは始めてだ。

 ロエーロがここまで残念な部分を持っているとは新たな発見だが、あまり嬉しい発見だとは思えなかった。


「皿じゃないって言ってるだろ」


 素直に頷くには難しい主張だ。ロスヴィータはもう、苦笑するのを隠せなかった。


「これは、贄を載せる台座なんだ。炎牢をイメージして作ったんだぞ」

「炎牢を……」

「……イメージ?」


 ロスヴィータとエルフリートはそれぞれ呟き、彼の手のひらに乗っているそれをじっと見つめた。

 ロスヴィータには、歪な線が絡み合い、鳥の巣のように組み合わさって皿の形になっているようにしか見えない。棒状のものの組み合わさっている密度が高いから鳥の巣には見えないだけで、よくよく見てみれば鳥の巣のようにしか見えなくなってくる。

 芸術とは、こういったものの事を言うのだろうか。そんな意味の分からない感想すら浮かんでくる。


「兎の巣は地下や洞穴だけじゃないんだ。こういう巣の形のものだってある。ちなみに氷兎の巣はこういう形をしている」

「……そ、そうか」


 ロエーロは自信満々に説明を始めた。だが、ロスヴィータの頭には何も入ってこなかった。

2026.4.11 誤字修正

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