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妖精と王子様のファーストダンス(へんてこワルツ7)  作者: 魚野れん
新しい仲間と生活と

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17/27

6

 グリュップ王国の騎士は人の良い性格をしている者が多い。癖の強い者もいるが、基本的にはほとんどの騎士は紳士だ。

 現に、エルフリートがテーブルへ並べている『明らかに男性騎士が用意したと分かるもの』は実用品だったり菓子類だったりと、冗談の意味合いが強いものや悪意のあるものは見受けられなかった。

 それだけで、彼らは確かに面白がってはいたのだろうが、ロスヴィータとエルフリートに対して純粋な親愛を送ってくれたのだと分かる。


 そんな中、実用品でもなんでもないものがロスヴィータの目に入る。それは手のひらサイズの兎の彫刻だった。それがちょうど二つあった。


「ん? 木彫りの……兎?」

「あ、それは雪山で酷い目にあった事があったでしょ。あの時に一緒だった彼から」

「エノテーカか?」

「うん」


 エノテーカとは、最近会っていなかった。彼は基本的に地元であるアララットで過ごしているからだ。彼の副官であるロエーロもそうで、滅多に顔を合わせる事はない。

 二人とは、数年前に雪山訓練で共闘した仲である。彼らが狩猟について、また魔獣についても詳しかった事を思い出す。エルフリートは魔獣にはあまり詳しくなかったから、と熱心に質問していたのが印象的だった。

 彼らの隊は気さくで真面目な面々で構成されていたはずだ。ロスヴィータは彼らの事を思い出して目を細める。


 待機している時に彼らと話をする機会があった。その時にエノテーカが木彫りが趣味だと言っていた。ロスヴィータにとって、雪山、木彫りとくれば彼の名前が真っ先に浮かぶのは当然だった。

 最後に会ったのはいつだっただろうか。あれは前回の騎士団の入団式だったか。子供が産まれたばかりだと言っていた気がする。

 ロスヴィータは遠くなっていた記憶を引き出しながら、木彫りの兎を手に取った。


「もしかして、あの時の約束を守ってくれたのか」

「え? ロス、エノテーカと何か約束したの?」


 エルフリートが首を傾げるのを見て、ロスヴィータは自分がその話をし忘れていたという事に気付く。話の流れが分からないだろう彼に、ロスヴィータは簡単に説明した。

 春の入団式に再会していた事。その時に子供が産まれたのだと知らされた事。ロスヴィータが自分の結婚の話とエルフリートの引退の話を伝えた事。

 ロスヴィータの話を聞いたエノテーカが「あれほど仲の良い二人なのだから、離れて生活するようになる前時お揃いの品があったら良いはずだ」と言い出した事。


「それで、何かしらプレゼントすると約束されたのだが……これが、おそらくその約束の品なのだろう」

「ふぅん……?」


 エルフリートの反応が少しおかしい。彼は納得がいかないという顔をしている。ロスヴィータがそれを訝しんでいると、彼はもう一つ何かを取り出した。

 こちらは彫金の檻だ。


「こっちは心当たりある?」

「…………檻?」


 檻とは意味深なプレゼントだ。それに、心当たりになるような記憶は全くない。


「ちなみに、これは誰からだ?」

「ロエーロ」

「――全く心当たりがない」

「彼、にやにやしてたよ」


 エルフリートが険のある声色を出した。どうやらこの檻に対して負の感情を抱いているらしい。彼が不機嫌になる要素がどこにあるのかも分からず、ロスヴィータは困惑していた。


「彼の表情は想像がつくが、檻を渡してきた理由は想像つかない」

「ロスなら分かるって言ってたんだけど」

「私なら分かる……?」


 いよいよエルフリートが不満を隠さなくなった。ぷっくりと頬を膨らませてロスヴィータを半目で見つめてきている。何かがエルフリートの機嫌を損ねているようだが、その顔に迫力はなく、むしろ可愛らしくすら見える。

 ロスヴィータはその檻を彼の手から奪って軽く振った。


「残念ながら本当だ。まだ彼は近くにいるだろう? この檻をプレゼントにした理由を聞きに行こう」




 ロスヴィータは不貞腐れているのを隠す様子もないエルフリートを連れ、ロエーロを探す。果たして彼は簡単に見つかった。

 そもそも、探すまでもなかった。彼はエノテーカと共に執務室に向かってきていたのだから。


「おっ、フリーデはすごい顔してるなぁ」


 ロエーロが口元を歪ませて笑う。その隣ではエノテーカが申し訳なさそうに苦笑していた。


「悪かったな……こいつが何の説明もなしに檻を渡したって言うから、ここで待っていたんだ」

「それは助かった。私なら分かるとフリーデに伝言したようだが、私はこれを見ても何の事が分からなくてな」


 さすがにロスヴィータが嘘をついているとは思ってはいなかっただろうが、エルフリートの表情が少しだけ和らいだ。

 エノテーカは「ほら、早く説明しろ」とロエーロの脛を蹴った。


「分かってるって! あー、それは兎の為の檻だ」

「……?」


 兎とは、エノテーカが彫ったものの事だろうか。ロスヴィータとエルフリートは顔を見合せた。ロエーロの言いたい事が伝わっていないと理解した彼が「説明って苦手なんだよ」の文句を言ってはエノテーカにはたかれていた。

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