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エルフリートから制服を借りたロスヴィータは、軽く汗を流して執務室に戻った。扉を開けようとして鍵がかかったままである事に気付いたロスヴィータはおや、と思う。いつの間にか自室に浴室を設置させた彼は、自室の風呂に入ったはずだが、まだその姿はなかった。
こういう事もあるのか、と思っていた彼女はつい忘れがちになる彼自身の事情を思い出した。
彼の方が支度に時間がかかるのだった。そもそも”エルフリーデ”姿を見ていると忘れてしまいそうになるが、彼は歴とした成人男性である。女性の姿をしていて気付かれていないという事が珍しいくらいなのだ。
女性らしく見せる為に、様々な努力をしているのだとロスヴィータは知っている。その努力の一つである化粧に時間がかかるという事も知っている。
彼がロスヴィータよりも戻ってくるのが遅くなるのは当然の事だった。
エルフリートの事をよく理解しているはずなのに、方が早いに決まっていると勝手に決めつけていた自分の事を鼻で笑ったロスヴィータは、一足早く仕事にとりかかるのだった。
戻ってくるのが遅いエルフリートを最初は気にしていたロスヴィータだったが、仕事に集中している間にその事をすっかり忘れてしまっていた。
「ごめんっ、いろいろあって遅くなっちゃった!」
「ん……? ああ、フリーデ。お帰り」
「うん、ただいま!」
ノック音とほぼ同時に開かれた扉は、エルフリートの仕業だった。彼は大きな袋を抱えて入ってくるなりそれをソファに置いた。
「何か、いっぱいもらったの」
「それは何だ……?」
「んー、お礼の品。かな」
「誰からだ?」
心当たりはあるような、ないような。ロスヴィータは首を傾げた。エルフリートが袋の中身を一つ一つテーブルに広げていく姿を見つめ、その多さに戸惑う。
一人二人から、という風には考えられない量の、そのどれもが小さいものを用意しようと示し合わせたかのような小包ばかりである。
「新人騎士たちから……かな」
そう言って、エルフリートはこの袋を受け取った経緯を話し始めた。騎士たちと遭遇したのは本当に偶然だったらしい。たまたま執務室へ向かっているエルフリートと同じく執務室へ向かっていた新人たちが合流したのが発端のようだ。
この袋の中身は数人が代表してまとめたもので、だからプレゼントの大きさが似通っていたのだと得心する。
「途中で、面白がった騎士が参加し始めちゃって……こんな事に」
「……なるほど」
ロスヴィータは苦笑した。何となく事情が分かった。女性騎士団の彼女たちの行動を見て、自分たちも便乗したのだろう。ただ、本当に” “面白そう”という気持ちだけで。




