表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/48

40.勇者と大司教




 タリが戻って来た。その顔は思ったよりも曇って無かった。むしろ晴れ晴れとした顔と言ってもいい。


「彼は強かった。私もまだまだだな」

「ナイスファイト」


 テルが拳を突き出し、タリが応える。俺はタリに励ましの言葉を掛けようと思っていたが、いらぬ心配だったようだ。


「そんじゃあ次は最強カップルの出番じゃーん」

「最強カップル?」

「ん?こちらの女性は誰だ?」


 一人事情を知らないテルが疑問を呈し、タリはダイモンを見ながら首を傾げる。

 ぽぷらがニヤつきながら二人に説明しているのを聞きながら、ダイモンの様子を伺う。彼女は静かに目を閉じて、深呼吸をする。息を吐くと俺を見た。


「勝ちますよ」

「仰せの通りに」


 俺は大仰に頷き、会場へとワープする。背後では驚く二人の声が響いていた。


 敗者側のトーナメントは昨日の最後に行われた。俺達がログアウトした後、テルもちゃんと勝ち進んだらしい。ただしデュオの敗者トーナメントは最終トーナメントの前座として今日行われる事になっている。だからこそ、昨日棄権とする判断が出来たのだ。


 昨日は三回戦で負けたので、かなりの数勝ちを上げないと決勝まで残れない。初戦の相手はこちらと同じような構成だった。曲剣を担いだ剣士と、ヒーラーの構成だ。


「電光石火で行く」

「はい」


 開始の鐘が鳴る。俺は先手を取った。番天印を敵ヒーラーに押印し、急速接近。慌てて横を向いて迎撃しようとした剣士にダイモンのストライクレイがヒットする。悪いな手の内は出来るだけ見せたくないんだ。


「牙突!」


 ヒーラーを貫き、さらに剣士に迫る。何とか体勢を戻した剣士だったが、その右足をダイモンが射抜く。ナイス援護。急所を槍が貫き、勝負が決まった。


『勝者、ダイモン、らっきょチーム!』


 その次は珍しい事に魔法使い二人構成。ダイモンにマジックヴェールを貰い、俺が一人吶喊。瞬く間に殲滅。この構成には負ける気がしないな。


 さらに次戦。タワーシールドを構えたタンクと弓師のコンビ。弓師の矢からダイモンを守りながら軸線を合わせて接近。まさかヒーラーと一緒に前に出てくると思わなかったのか、タンクが焦っている間に弓師を倒し、ダイモンの魔法でタンクを削って終了。

 非常に順調だ。俺の動きに合わせてダイモンが位置を変えてくれるので、リソースをあまり割かなくて済む。流石は関東最強の探索者だ。


 次の相手には見たことのある魔法使いがいた。オークの村で一緒になった翠さんだ。確か雷と風の複合魔法を得意としていた。もう一人はラウンドシールドとショートソードを構えた女性。


「あら、らっきょさんじゃない。対戦よろしくね」

「よろしく。こりゃ本腰入れなきゃな」

「翠さん。よろしくお願いします。私、ダイモンです」

「あら、アバター変えたのね。そっちも似合ってるわよ」

「ありがとう御座います」

「そう言えば観てたわよ。貴方達のクラン、強いじゃない」


 翠さんの賛辞に照れる。この歳上のお姉さん感は保奈美とか紋芽には無い感じだな。


「そちらは?」

「私のクランメンバーのハズキよ」

「ハズキです。対戦お願いします」


 落ち着いた人だ。このクランで冒険するのも楽しそうだな。そんな事を思っていたら、ダイモンがこちらの正面を向いていた。にこやかな笑顔で微動だにしない。俺はかくはずのない汗が額を流れるのを感じた。


「は、始まりますよ。ダイモンさん」

「ええ、そうですね」


 ダイモンがやっとあちらを向いた。胸を撫で下ろす。俺の彼女は思ったよりも鋭いタイプかもしれない。


 開始の鐘が鳴り、俺は前進する。敵方の構成はカウンタータイプだろう。だが、敢えて前進する。ハズキさんが受けの体勢を取る。


「バーストレイ!」


 俺の真後ろから声が聞こえた。俺は咄嗟に頭を下げ、前転する。頭上をダイモンの最大火力が通過した。ハズキさんが何とかラウンドシールドで受け流し、後方に反らす。おい、今の俺は狙って撃っただろ!思わず背後を見ると、ダイモンが笑顔でこちらを見ていた。しかも詠唱をしている。まっずい。


「サン・レイ!」


 拡散型の光魔法が後方からばら撒かれた。


「おわ、おまっ」


 左右に転がりながら何とか回避する。それは敵も同じで、翠さんの詠唱も途中でキャンセル出来たようだ。プラズマははっきり言って脅威だからな、だとしてもやり方があるだろ!


「今ですよ!」

「分かってら!」


 容赦の無い彼女に叱咤され、再び前進。


「重心移動」


 重心移動を発動し、ハズキさんの目の前に踊り出る。左脚で踏み込み槍を立てる。ハズキさんはショートソードを横薙ぎに振って来た。すまんなその横薙ぎ、利用させてもらう。重心を左に置いた振りをして右に配置、横薙ぎを槍で受けた際の力を利用し、後方右手にいる翠さんに急速接近する。


「な、に」

「ハーフスイン……」

「くっ、合爆!」


 スイングが届く直前で翠さんが両手を合わせた。瞬間、目の前が真っ白になる。俺は吹き飛ばされたのか。


「ミドルヒール!」


 すかさずダイモンから回復が飛んで来る。危なかった。あんな隠し技があるとは。

 だが、相手も無事には済んでいない。翠さんは片手が上がらないようだ。立ち塞がるようにハズキさんが射線を塞ぎに入る。自爆技か、なんてアビリティを持ってるんだ。


「やるな」

「そちらこそ、よ」


 苦笑しながら翠さんが言う。


「コール:スピリッツ」


 ダイモンが聖霊を喚び出した。畳み掛けるなら今しか無い。


「雷装」


 雷装を纏い、スピリッツの後ろから奇襲を仕掛ける。ハズキさんがショートソードを構えた。スピリッツには効果が無いはずだが……。


「付与。プラズマブレイド」


 翠さんが付与魔法を行使し、ハズキさんのショートソードが光輝く。カッケー!◯イトセーバーだ!

 ハズキさんはそれを振るいスピリッツを払っていく。だが、こっちだって勇者の槍だ。


「源槍」


 五つの源槍を槍と合わせる。勇者の槍が黄金に輝いた。ハズキさんと正面からぶつかる。片手では無理だと思ったのかラウンドシールドを捨て、両手で俺の勝ち上げを上から抑え込もうとして、力負けした。俺は両手を跳ね上げたハズキさんの懐に入り胸を突く。彼女は行動不能になり、そのまま前進。翠さんに接近した所で、彼女が両手を上げた。


「降参します」


『勝者、ダイモン、らっきょチーム!』


 勝負が終わり、翠さんがおめでとうと言って退場していった。あの◯イトセーバーが奥の手だったのか。それを正面から破った源槍はやはり強力だな。


「今のは?」

「新しい奥の手」


 それだけ言うと、ダイモンは理解したのか頷いた。良かった。機嫌は多少直ったみたいだ。

 


 そこからの数戦は危なげ無く勝ち抜けた。戦う中で分かったが俺達が苦手なのは両前衛タイプだ。大剣とハルバードを持ったコンビには中々苦戦した。と言っても機動力が無かったので、俺が一人落とす間、ダイモンが回避に徹して難を逃れた。多分たが、敏捷の高い両前衛二人で攻め込まれると危ういかもしれない。対策を話し合いながら、表のトーナメント準決勝を観る。既に二戦目、この敗者と俺達は戦う事になる。


 片方は川島大佐だ。例のフルアーマーの人だが、瑠璃さんとは違ってこちらは兜を被らずメット顔出しだ。傍らには白を基調とした和服に紺の袴を履いた少女。


「彼女が白葉(はくよう)さんです。このゲームにおいて、最強のヒーラーと言われています。本来ならドマドマドさんとコンビなんでしょうが、彼がソロに出たので川島さんと組んでいるんでしょうね」


 あの少女が最強ヒーラーか。そう言われると大舞台でのあの落ち着きにも納得がいく。

 もう片方は……。


「出た忍者」

「しかも相方はキララさんですか」


 こちらは勝鬨橋のメンバー、忍者の人とサイコメトラーのキララさんだ。どういった戦いをするのか予想が付かない。トーナメント表に忍者の名前が書いてあった。さっちん。なんて締まらない名前だ……。

 開始の鐘が鳴る。先に仕掛けたのは忍者さっちん。クナイを三本、白葉さんに向かって放つ。川島大佐が大剣を放り投げた。明後日の方向に。


「ん?」

「えっとですね川島さんは、ああ見えて……」


『アースウォール!』


 川島大佐の詠唱と共に土壁が出現し、クナイが弾かれる。


「魔法剣士なんです」

「マジかよ」


 さっちんも虚を突かれた顔をしていたが、相方のキララは立ち直りが早かった。


『ポルターガイスト!』


 落ちたクナイ達が土壁を避けて、再び白葉さんに向かう。それぞれ直線では無く、意思を持っているかのように変則機動をしながらの接近だ。これは流石に避けられないか、と思った瞬間、白葉さんの右手がクナイをはたき落とした。その右手には扇子。


『こんなチンケな武器で我を害そう等、笑わせてくれる』


 そのまま全てのクナイをはたき落とし、開いた扇子で口元を隠した。


『勝負がしたいのなら、自ら挑んで来るが良い』


 おお。RP勢だ。だが観客は大いに沸いている。今度は川島大佐が動いた。投げ捨てた大剣を拾い。詠唱する。


『フレイムタン』


 大剣に炎が纏わりつく。元々のリーチが五割増ぐらいになる。


『征け、川島。ハイスピード』

『御意』


 白葉さんの敏捷バフを貰い、川島大佐が前進を始める。


『くっ、撒菱!』


 慌てたさっちんがマキビシを撒いた。だが川島大佐は止まらない。


『劫火宴陣』


 川島大佐の振るった大剣から広範囲に炎が広がり、マキビシを溶かしてしまう。炎が迫りさっちんが慌てて飛び退いた、なお迫る火をキララが念力で食い止めているようだ。


『リキャストタイムキャンセル』


 白葉さんが聞いた事の無いスキルを使った。リキャストタイムキャンセルだと?まさか……。


『劫火宴陣』


 再び川島大佐が炎の広範囲攻撃を行う。まさかのリキャストタイムのキャンセルスキルだ。そんなものがあったとは。


『そんな!』


 先にキララさんが巻き込まれた。流石に二発分は防げなかったか。炎に巻かれるキララさんだが、まだHPは残っている。だが、川島大佐は躊躇無く火に飛び込むと唖然とするキララさんを斬り倒した。


『キララ!』

『ヒールオール』


 白葉さんからの回復を受け、なお川島大佐は止まらない。動揺するさっちんは短刀で牽制を行い、離脱しようとする。それを追う川島大佐。彼は大剣を投げた。間一髪のところでさっちんがそれを避ける。だが、川島大佐は眼前に迫っていた。武器も無いのにどうするんだろうか。


『アポーツ』


 川島大佐の手に燃え盛る大剣が戻って来た。


『しまっ』

『大炎斬』


 勝負が決まった。


『勝者、川島大佐、白葉チーム!』


 強い。想像の百倍強かった。最初に会った時は鼻につく嫌な奴というイメージしか無かったが、あの二人の連携は完璧だ。並大抵の努力ではああはいかない。


「強敵ですね」

「ああ、だが、俺達が勝つ。そうだろ?」

「そういう強気なところ。好きですよ」


 よせやい。ダイモンと二人、スクリーンを眺めながら、その時を待つ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ