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異世界帰りの元勇者は現実世界でも天才でした。  作者: 坂元たつま


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愛の共鳴と特異点の特定(シンクロニシティ・サーチ)

マサトと香坂サヤによる「次元の青図」の研究は、アウラ王国の地下研究室で、昼夜を問わず続けられていました。マリア王女の全面的な支援の下、必要な魔導具や資材はすべて供給され、彼らの理論は現実のものへと変わり始めていました。

  最強の解析ツール

研究の最優先事項は、ISTOがこの世界へ侵入してくる可能性のある**特異点(次元の穴が開きやすい場所)**を特定し、その座標を正確に把握することでした。

マサトは、彼の次元知性と、香坂が提供したISTOの機密データを融合させました。

「ISTOのデータは、特異点の発生条件を『自然エネルギーの乱れ』としていますが、それはあくまで表層的なものだ。次元の歪みは、**『魔素と、この世界の法則の間に生じる周波数のズレ』**によって発生する」

マサトは、その周波数のズレを補正するための、**「逆位相共鳴装置」**の設計を始めました。これは、ISTOが転移してきた瞬間に、その扉を強制的に閉じるための、防衛システムの中核となるものです。

そして、その解析ツールとして、マサトは再び**マリア王女の『愛の波動』**を利用しました。

「香坂さん。俺が異世界から情報を受け取れたように、マリア様は、この世界の魔素を通して、俺の**『研究への集中度』**を理解してくれている。マリア様の感情の周波数を、特異点の解析に組み込みます」

マサトは、マリアのいる王宮の中心から、微細な魔素の波動をケーブルで研究室に引き込み、それを感知装置に接続しました。

マリアがマサトを深く想い、平和を願うとき、その波動は最も安定し、**異次元からの微細なノイズ(特異点の存在)**を鮮明に浮き上がらせるのです。

 特異点の特定

マリアの協力を得て、マサトの次元知性は、アウラ王国全域の特異点の解析を開始しました。

解析の結果、マサトの予想通り、ISTOが狙うであろう転移地点が、三箇所に絞り込まれました。

1. 辺境の火山地帯: 地熱が高く、自然の魔素の溜まり場となっている場所。ISTOが過去に利用した特異点と条件が酷似している。

2. 古代遺跡の地下: 過去の戦争で強力な魔法が使われ、空間そのものに傷が残っている場所。

3. 東部にある湖の底: 過去にマサトが召喚された場所と近く、次元の壁が薄くなっていることが判明した。

「この三箇所だ。特に、この東部の湖が最も危険です。俺が召喚された際に、次元の壁が最も傷ついた場所だ。ISTOは、高確率でここを狙ってくる」

マサトは、すぐにラッセルに連絡を取り、特異点の座標と防衛計画を伝えました。

 アウラ王国の防衛体制

ラッセルとソフィアは、マサトの理論を完全に信頼していました。ラッセルは、マサトから送られてきた座標に基づき、アウラ王国の魔術師団と軍隊を動員し始めました。

「マサトは、半年後、ISTOが追ってくるという。その前に、我々は防衛線を構築しなければならない」

ラッセルは、ソフィアと共に、マサトが設計した「逆位相共鳴装置」の簡易型を、魔導具職人に作らせました。これは、完全な転移を阻止することはできなくても、転移してくる部隊の連携を乱し、時間を稼ぐための足止め装置でした。

ソフィアは、王女マリアの護衛と、魔導具の製造管理を担当しました。彼女は、マサトから教わった**「理論の再現性」**という概念を活かし、魔導具職人に正確な仕様を指示しました。

「これは、かつての魔王戦よりも、難しい戦いになります。相手は、魔法ではなく、**『科学』**という理解不能な力を持っている」ラッセルは、緊張した面持ちで言いました。

  香坂の葛藤と信頼

地下研究室で、香坂はマサトの作業を静かに見守っていました。マサトがマリアの感情を解析ツールとして利用する手法は、彼女の科学者としての倫理観を揺さぶるものでしたが、その効果は絶大でした。

「榊原くん。あなたのやっていることは、私の知っていた科学のルールを完全に破っているわ。でも…その理論は、完璧に矛盾がない。あなたが信じる『愛』という感情が、本当に次元の最も安定した周波数なのね」

香坂は、マサトの隣で、ISTOの転移プロトコルを解除するための**「非常停止信号」**の最終調整を続けていました。

「マサトくん。あなたが『次元の橋』を完成させたら、私はこの信号を送る。その瞬間、あなたと私は、ISTOから永遠に逃亡者として認識される。後戻りはできないわ」

マサトは、香坂の目を見て、静かに答えました。

「俺たちが、この世界に来ることを決めた時から、後戻りはない。香坂さん。俺は、あなたとマリア様、そしてこの世界を守るために、ISTOとの戦いを終結させます。そして、俺たちの『知恵』は、誰も奪えない、普遍的なものとして、未来に残します」

二人の間には、強い信頼が芽生えていました。一人は異世界の勇者、もう一人は現実世界の迷人。彼らは、それぞれの世界で得た「知恵」を合わせ、半年後の最終決戦に向けて、準備を進めていくのでした。

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