表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界帰りの元勇者は現実世界でも天才でした。  作者: 坂元たつま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/38

女神の抱擁と再会の涙(ハグ・オブ・ディメンション)

マサトと香坂サヤが、青白い次元の扉に飛び込んだ瞬間、世界は一変しました。

 次元を翔ける旅路

二人の体が、激しい光と、耳鳴りのような音に包まれました。それは、ジェットコースターで急降下するような感覚ではなく、自分自身の体が、**「時間と空間の粘土」**の中に放り込まれたような、奇妙で不快な感覚でした。

「くっ…これが、次元の狭間…!」

マサトは、異世界から帰還した時よりも、はるかに短い時間で転移が行われていることに気づきました。香坂が提供した特異点の情報と、マリアの**「愛の波動」**が、転移のルートを極限まで短縮していたのです。

隣で転移の衝撃に耐えていた香坂サヤは、目を見開きました。彼女が過去に経験した転移は、もっと荒々しく、生命の危機を感じるものでした。

「信じられないわ…こんなに安定した転移プロトコルは、ISTOのどの記録にもない…!」

彼女は、マサトの理論が、単なる技術ではなく、「感情」という力を利用した魔法であることを改めて理解しました。

そして、その光のトンネルの先に、一筋の温かい光が見えました。

 帰還、故郷の空の下で

光の奔流から解放された瞬間、二人は、柔らかい草の上に倒れ込みました。

マサトは、深呼吸をして、立ち上がりました。全身に流れ込んでくる空気の匂い、肌で感じる温度、そして空の色。

「…戻った」

目の前には、見慣れた青い空。雲の形も、太陽の光の強さも、マサトが知る異世界、アウラ王国のものでした。周囲は静かな森の中でしたが、その遠くには、王都モーゼの城壁らしきものが見えました。

「ここが、…あなたの故郷」

香坂サヤは、周囲を見渡し、目元を押さえました。彼女の目には、涙が浮かんでいました。それは、悲しみでも、喜びでもなく、懐かしさと喪失感が混じった、複雑な感情でした。

「空気の中に、『魔素マナ』の粒子が満ちているわ…。私が失った、あの時の世界と全く同じ…」

香坂は、かつて自分が女神のために戦い、そして故郷を失った記憶を、この世界の空の下で鮮明に思い出していました。

  感動の再会

マサトが周囲の状況を確認していると、森の奥から、複数の足音と、馬が駆ける音が近づいてくるのが聞こえました。

「こちらです!今の空間の歪みは、この森の方向でした!」

その声は、かつての盟友、ラッセルのものでした。

マサトの「生存の波動」を受け取ったマリアは、すぐにそれがマサトのメッセージだと確信し、護衛隊を連れて、次元の扉が開いたとされる森へ向かっていたのです。

そして、馬を走らせて現れたのは、美しく成長したマリア・フリードリヒ・アウラでした。王女としての威厳は増していましたが、その瞳には、二年間の別離を乗り越えた、切実な想いが満ちていました。

マリアは、森の入り口で、泥まみれになりながらも、見慣れた顔を見つけました。

「…マサト、様…!」

マサトもまた、胸に込み上げる熱い感情を抑えられませんでした。彼の次元知性は、彼女の心拍数、瞳孔の開き、そして感情の揺れを完璧に解析しましたが、それらはすべて、彼への純粋な愛を示すデータでした。

「マリア様…!」

マサトは、走り寄るマリアをしっかりと抱きしめました。それは、二年間、異世界と現実世界、次元を超えて待ち続けた、約束の抱擁でした。

マリアの目からは、とめどなく涙が溢れました。「本当に…生きて、帰ってきてくださったのですね…!あの時、次元接続の光が消えた時、私は、もう二度と会えないかと…」

「約束したでしょう、マリア様。必ず、生きて、あなたの望む人生を歩むと。そして、俺は、あなたがくれた愛で、この次元の壁を破って帰ってきました」

マサトは、涙を流すマリアの頬を、そっと両手で包みました。彼の次元知性は、今、この瞬間が**「最も最適で、最も幸福な未来」**であることを示していました。

 新しい仲間と誓い

ラッセルやソフィアも駆けつけ、再会を喜び合う中、マサトは隣に立つ香坂サヤをマリアに紹介しました。

「マリア様。こちらが、俺がこの世界に戻るために協力してくれた、香坂サヤさんです。彼女は、この世界を『迷人』の危険から守ろうとしている、もう一人の迷人です」

香坂は、優しく微笑むマリアを見て、自分の知っていた「女神の寵愛を受ける王族」とは違う、純粋な心を持つ女性だと感じました。

「香坂と申します。私は、彼の**『愛』**が、すべての科学法則を超越していることを、この目で見てきました」

マリアは、香坂の手を取りました。「マサト様を、無事にお連れくださり、心から感謝します。この世界は、あなたを歓迎します」

その時、マサトは、静かに二人に語りかけました。

「俺の戦いは、まだ終わっていません。この世界に戻ってきたのは、マリア様との約束を果たすためだけではない」

マサトは、遠くに見える王都モーゼの城壁を見つめました。

「俺は、ISTOという、この世界のことわりを管理する組織と戦わなければならない。彼らは、俺の知識を軍事利用し、この世界と現実世界を、再び戦場にしようとしています。俺は、この世界から、ISTOの野望を阻止し、そして、次元航行の技術を、**誰もが安全に利用できる『平和の技術』**に変革する」

「マサト様…」

「俺の知恵は、もう兵器にはさせない。俺は、この世界を、俺の新しい戦場とします。そして、マリア様と、香坂さんと、協力して、この次元間戦争の連鎖を、俺たちの手で終わらせます!」

マサトの目は、かつて魔王と対峙した時のような、強い決意の光を宿していました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ