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『読むな』  作者: JIN
2/3

第2話  「観測の条件」

目を閉じる。

 



見なければいい。


読まなければいい。


考えなければ——

 




——それも観測だ。

 



「……っ!!」

 


頭の中に、あの文章が“浮かぶ”。

 


違う。

これは本じゃない。

 

もう、“中にある”。

 


 

「くそっ……!!」

 


机の上の本を、引き裂く。

 


紙が破れる音。

インクが飛び散る。

 


だが——

 




——無意味だ。

 

 


破いたページの断片、その一つ一つに文字が浮かぶ。

 

 


——観測は、媒体に依存しない。

 

 


「やめろ……!!」

 

 

破片を踏みつける。

 

目を逸らす。

 

それでも、

 


“理解してしまう”。

 

 



——理解した時点で確定する。

 

 


「……ふざけるな……」

 

 

息が荒い。

 

 

じゃあどうすればいい?

  

簡単だ。

 

 


“何も認識しなければいい”。

 

 


目を閉じる。

 

耳を塞ぐ。

 

思考を止める。

 

 



——思考を止めようとしている。

 


 

「……っ!!」

 

 

膝から崩れ落ちる。

 

 


「逃げ場が……ない……」

 


 

 

——正解に近づいている。

 

 

 

「……は?」

 

 

 

——観測には、段階がある。

 

 

 

頭の中に、勝手に“理解”が流れ込んでくる。

 

 

 

——第一段階:視認


——第二段階:理解


——第三段階:選択

 

 



——そして、

 

 


——第四段階:確定

 

 

 

「……やめろ……」

 

 

 

——君はすでに、第三段階にいる。

 

 

 

「違う……俺は選んでない……」

 

 

 


——では問う。

 

 


その瞬間、視界が歪む。

 

 

部屋が、消えた。

 

 

 

気づけば、目の前に“二つの扉”があった。

 

 

右と、左。

 

 

 

何も書かれていない。

 

 

だが、分かる。

 

 

 


——どちらかを選べ。

 

 

 

「……っ」

 

 

「選ばなきゃどうなる……?」

 

 


 

——選ばないという選択も存在する。

 

 

 

「……」

 

 

 


——ただし、その場合——

 

 


 

——不特定多数が対象になる。

 

 

 

「……は?」

 

 

 

——選べば、一人。

 


——選ばなければ、無差別。

 

 


 

「……っざけんなよ……!!」

 

 

 


心臓が暴れる。

 

 

どっちにしても、死ぬ。

 

 

 


なら——

 

 

 

「……俺に、選べってのかよ……」

 

 

 

——そうだ。

 

 

 

「誰を……?」

 

 

 


——すでに候補はある。

 

 

 

その瞬間、

 

 

頭の中に、顔が浮かぶ。

 

 

 


さっきと同じ——

 

 

 

「……やめろ……」

 

 

 

——君が最も“意味を持たせてしまう存在”

 

 

 

「やめろ……それだけは……」

 

 

 

扉の片方に、うっすらと影が映る。

 

 

 

それは——

 

 

 

「……母さん……」

 

 

 

もう片方の扉。

 

 

 

知らない誰か。

 

 

 

顔も見えない。

 

 

 

 

——選択を。

 

 

 

「……っ」

 

 

 

手が、震える。

 

 

 

選べば、母親が死ぬ。

 


選ばなければ、誰かが死ぬ。

 

 

 

どっちも、同じだ。

 

 

 

違う。

 

 

 

違うだろ。

 

 

 

「……俺が選んだって事実が……違うんだよ……」

 

 

 

 

——その認識は正しい。

 

 

 

「……っ?」

 

 

 

——だからこそ、意味がある。

 

 

 

 

「……ふざけるなよ……」

 

 

「じゃあこうだ」

 

 

 

震える手を、止める。

 

 

 

「どっちも選ばない」

 

 

「誰も選ばない」

 

 

「俺は——観測しない」

 

 

 

 

目を、閉じた。

 

 

何も見ない。

 

 

何も考えない。

 

 

 

 

——選択を放棄した。

 

 

 

 

その瞬間、

 

 

世界が、静かに“割れた”。

 

 

 

遠くで、爆発音。

 

 

 

悲鳴。

 

 

 

サイレン。

 

 

 

 

——無差別が選択された。

 

 

 

 

「……あ……」

 

 

 

 

膝から崩れる。

 

 

 

 

「俺は……何もしてない……」

 

 

 

 

——何もしないを選んだ。

 

 

 

「……違う……俺は……」

 

 

 

 

——第4段階に到達。

 

 

 

 

——確定した。

 

 

 

 

その瞬間、

 

 

スマホが鳴る。

 

 

震える手で、画面を見る。

 

 

 

 

【速報:複数箇所で同時死亡】

 

 

 

 

「……っ……」

 

 

 

——おめでとう。

 

 

 

 

——君は“観測者”だ。

 

 

 

 

 

            (最終話へ続くーー)

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