賑わいの裏側・4
次にオグマが目覚めた時には、宿屋のベッドだった。
傷は応急処置と治癒術で回復したのだろうが、失血のダメージまでは治せないため、まだ動けるほどではない。
「よく、生きていたな……」
妙に冷静で、自嘲めいた呟きが零れる。
己の状態を把握すると、ふらつきながら起きあがろうとした。
「こら、オグマ!」
「っ!」
強い語気にオグマはびくんと肩を跳ねさせる。
見れば仲間達がずらりと周りを取り囲んで、何やら怒ったような顔をしていた。
「え、と」
「まだ動いちゃダメだろ? 寝てろ」
「うわっ」
デューに無理矢理ベッドに押し戻され、寝かされる。
今のオグマでは成す術もなく、されるがままだった。
「リュナンから聞いたぞ、変な男に襲われて殺されかけたって」
「……っそれは、」
瞬間、仮面の男との邂逅がフラッシュバックする。
あの男は、自分を知っていた。
ならば、自分は……?
「……私は、あの男を、知って……?」
思い出せない。あんな仮面をした男にも、あんな風に自分に対して言う人間にも覚えはない。
「向こうはやけに旦那に恨みをもってるっぽかったんですけど、覚えはないんですか?」
「すまない……少し、時間をくれないか? 自分でもまだ、混乱しているんだ……」
頭を抱えるオグマの手に、ミレニアのそれがそっと触れた。
「オグマの話したい時で大丈夫、なのじゃ」
「その時になったら興味津々で聞いちゃうかもだけどねん♪」
イシェルナも続いて、にっこりと笑う。
「オグマさんはゆっくり休んで早く良くなってくださいね。今日の食事はわたし達が用意しますから」
「栄養のあるものをしっかり食べて、体力つけてください旦那。あんな軽いとちょっと心配ですよ」
食事の支度をし始める仲間達に、オグマはなんだか申し訳なくなって、
「わ、私も何か……」
手伝いをしようとしたところを、一斉に睨まれた。
「や・す・ん・で・く・だ・さ・いっ!」
「……はい」
あまりの剣幕に気圧されてしまい、大人しく布団に戻るオグマ。
ぽつんと一人残され、しょんぼりしているとシュクルがベッドに飛び乗ってきた。
「……みんな、心配しておるのだ。特にリュナンがぐったり動かぬお前を連れ帰った時は、青ざめた」
「シュクル……」
「あまり無理をするでない」
こうやってわざわざ傍に来てくれる彼が『みんな』に含まれているのか、本人は語らない。
だが、不思議と心地良い感覚にオグマは目を細めた。
「もう少し、眠っていたらどうだ」
「……ああ、そうさせて貰う」
そのままゆっくりと眠りに落ちるオグマに寄り添うように丸まると、シュクルは僅かに尻尾を動かした。




