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4:今日はお祭り

「ユーリは、魂石を作る人なんです」

 自分が想像していたのと一つも違わない言葉を、ルナリアは口にした。

「まあ、それはうっすらと気づいてたよ。普通の人は使い始めた魂玉集めたって、どうしようも無いもんな」

「違います違います」

 慌ててルナリアは両手を振ってアキラの言葉を遮った。

「ユーリは魂玉を集めてますけど、それは前にお話しした目的を果たすためです。別に、魂玉を集めてそれを使って何かを作ろうとしているわけじゃ無いです」

「なんでお前に解るんだ? そんなと」

「それは、ユーリが私に話してくれたからですよ。少なくとも私はその説明を、合理的だと思いました」

 ルナリアはそう言うと、ふあ、と一つ大きなあくびをした。まだ眠気が残っているのか、目尻に涙を浮かべた目は、少しとろんとして見えた。ほっそりとした指がその涙を拭うのを、アキラはなにか特別なものでも見るような心持ちで見ていた。

 何しろ、一つ一つの仕草が、どことなく気品を感じさせるのだ。見ていると、どこか頭の片隅がぼーっとしてきて、考えることをやめてしまう。

 ルナリアはそのまま窓辺に寄りかかった。

「今日は豊熟祈願祭の日でしたね、そういえば」

 話をそらすな、とアキラは思ったが、なぜかそれを口にする事はできなかった。返事をする代わりにゆらゆらと立ち上がると、目の前の麻袋を作業台の奥に突っ込んで、ルナリアの隣に並んだ。二人で窓枠から、こっそりと外を眺める。誰もこの古い建物をわざわざ見上げようともせず、自分の存在感が消えてしまったような、不思議な浮遊感を感じた。

 眼下では、いつもはそこまで人通りの多く無い通りなのに、たくさんの人が出てきて、灯りを灯す台を立てたり、店先に屋台を出して、食べ物を売ったりしていた。賑わっている、と言っても、寂れた通りだ。部屋の中にいればあんまり騒ぎも聞こえないくらいだった。

 でも、確かに、非日常の空気が華やかに踊っているのを感じた。

「ルナリアは祭りが楽しみだったのか?」

「はい。お祭りに参加できるとは思ってませんでしたけど、こうやって祭りの空気だけでも触れてみたいな、と思ってたんです。アキラは楽しみでしたか?」

「俺は…………、そうだなあ」

 思い返してみる。ウルフの家は八百屋をやっていたが、この時期の祭りにはいろいろな食べ物を作る屋台を出していた。いつもその手伝いをしていたが、いつも決まって人波がひと段落すると、ウルフはアキラに銅貨を握らせると、祭りの賑わいの中に送り出してくれた。

 やっぱり、それは楽しみな瞬間だった。

「俺も楽しみだったなあ」

「お祭りは楽しかったんですか?」

 変な質問だな、と思いながら、アキラはそれでものんびりと答えた。

「ああ、楽しかった」

「…………」

「どうした?」

「いえ」

 ルナリアは急に口を噤んでしまった。その先の言葉が気になったが、自分が急かすものでも無いな、と、アキラは思った。

 しばらくは、うっすらと聞こえるこのざわつきを聞いて、久しぶりに感じるこの胸躍る空気をいっぱいに吸い込もうと思った。


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