5:朝が来て君とペア
気づけば夜が明けていた。と言うよりも、もう太陽は南にかかっていた。
眠い目を擦って瞬くと、目の前に、誰かの太ももがあった。わ、と思って急いで顔を背けると、その太ももの主、ルナリアの静かな寝顔が目に入った。
いつまでもこんなものを見ていたら怪しまれかねない。アキラは身を起こした。ごちゃごちゃだった粗末なベッドの上に無理矢理作った隙間に、アキラは寝ていた。昨日の夜は、ユーリの出した粗末な葡萄酒をみんなで飲み、そのまま雑魚寝をしたようだった。
くだらない話ばかりした気がする。くだらない話に興じることができるくらいには、もう、アキラの腹は決まっていた。
ベッドから起きて、小さな部屋を横切り、恐る恐る廊下へと通じる扉を開けると、ちょうどユーリがバスケットを抱えて階段を登ってくるところだった。
「あ、起きたんだ。おはよう」
「ああ、おはよう」
なんでもないように朝の挨拶を交わし、ユーリは部屋の中へ入ってきた。バスケットをテーブルに置いて、昨日の炭に薪を足して、火を熾し始めた。
「いつまで寝てるの、ルー!」
ユーリが声を掛けると、ルナリアは「むう」と言って、眠い目をこすりながら起き上がり、大きなあくびと伸びをした。
なんの変哲もない朝の光景なのに、自分には全く馴染みのない景色だった。窓の外では、汚い街角に清廉な太陽の光が降り注いでいる。何もかも、ウルフの家とは大違いだ。
沸かしたお湯でお茶を淹れ、安物の酸っぱいパンを齧る段になって、ユーリはおもむろに口を開いた。
「今日もまた、魂玉を集めにいこうと思うんだけど」
「私は賛成だな」
ルナリアはそう言うと、小さなパンの一欠片を口の中に放り込んだ。そんな少し雑な仕草でも、妙に彼女の上品さに馴染んで見えるから不思議だ。
「魂玉泥棒に盗まれる前に、できるだけたくさん集めておいたほうがいいんでしょ? なら、今夜も、明日の夜も、出かけたほうがいいんじゃないのかな」
「それもそうだけど」
ユーリはルナリアに向けた表情を、少し困り顔にして見せた。
「あんまり頻繁に行き過ぎると、魂玉持ってる方も用心するようになるからね。魂玉取り外されて、外体ごとどっかに仕舞われるとまずいんだよねえ。できるだけ、家に侵入したら、必ず魂玉回収したいし。
だから、今夜は回収に行って、次はもう少し先にすべきなんじゃないかなあ、と思うんだけど、どう?」
「確かにそうだね。アキラはどう思いますか?」
「俺?」
ありがたくパンにありついていただけだったのに、いきなり話がこっちに転がってきた。アキラは大きなパンの塊を飲み込んで、ルナリアに応える。
「いいんじゃないか、それで。俺自身、まだ俺がなにすべきか解ってないんだけどさ」
「じゃ、それで決まりですね!」
ルナリアがなぜか目を輝かす。ユーリはそれを見て、満足げに頷いた。
「じゃ、今夜からは二手に別れて回収ね。私一人と、ルナリア、アキラのペアで」
「は?」
なにを言っているんだ?




