白い招待状・妹の沈黙
三日目、姉妹の朝はいつもどおり始まった。ノエラはいつもの柔らかな調子で姉の茶を替え、余計な質問をしない。だが卓上の招待状には、一度開封して戻したような浅い折り目があった。
王太子からは、招待客へ親しく接してほしいという短い添え書きが届いた。誰を指すのかは書かれず、レティシアは全員へ同じ礼を尽くすと返した。
白い厚紙には王家の紋章と園遊会の時刻が記され、末尾に招待客が並んでいた。レティシアは知らない名へ印を付け、家令に家柄だけを調べさせた。
姉妹は互いの予定をすべて知っているわけではない。それでも夕食だけは同じ卓を囲むという約束を、社交季が始まる前にもう一度確かめた。
オスカーは予定を一刻ごとに区切らず、移動と休息の余白を残した。宮廷は余白を怠慢と見るが、人は帳面どおりの速さでは動けない。
机には母の肖像を写した小さな額がある。レティシアは答えを求めず、明日も公爵家の娘として務めを果たすことだけを静かに決めた。
食後、レティシアは家人の名を一人ずつ覚えているか妹に試された。二人は昔からこの遊びを続け、最後には必ず新しく来た下働きの名まで確かめた。
夕刻の鐘を合図に、屋敷の門番が交代した。レティシアは階下の足音を聞きながら、明日も同じ穏やかな朝が来ると思おうとした。
姉妹は温室へ移り、冬を越した白薔薇の芽を確かめた。そこでは王太子の婚約者も病弱な令嬢も関係なく、二人で土の乾き具合を言い合えた。
レティシアは分からないことを分かったふりで埋めなかった。小さな違和感も、今はただ日付と場所を添えて記録するだけにした。
夕暮れには公爵邸の窓が順に閉じられた。明日の支度をする使用人の声が行き交い、姉妹のいる居間だけは静かなままだった。
(本文実測:712字)




