白い招待状・昼の応接
翌日、「白い招待状」に関わる書類が応接室へ集められた。昼の応接で、家令オスカーが封書と帳面を運ぶ。レティシアは封を開く前に、誰がいつその紙へ触れられたかを確かめた。
園遊会の衣装規定には淡色とだけある。同じ色を選べば競ったとされ、違えば王妃の意向へ逆らったと評されかねず、仕立屋は判断を求めた。
封筒の裏には配達係の受領印が二つあった。誤配として戻されたらしいが、どの部屋へ運ばれたのかは記録に残っていなかった。
レティシアは妹の咳が止まるまで窓際を離れなかった。ノエラは平気だと笑い、姉の衣装合わせに遅れるほうを心配した。
姉妹は温室へ移り、冬を越した白薔薇の芽を確かめた。そこでは王太子の婚約者も病弱な令嬢も関係なく、二人で土の乾き具合を言い合えた。
屋敷は少しずつ眠りについた。華やかな季節の前夜にも、火を消し、鍵を確かめる家人たちの手順はいつもと変わらない。
姉の予定表を覗いたノエラは、空白の日へ小さな丸を付けた。その日は二人で温室の鉢を植え替える約束だったが、王宮の招待が来れば消える空白でもあった。
食後、レティシアは家人の名を一人ずつ覚えているか妹に試された。二人は昔からこの遊びを続け、最後には必ず新しく来た下働きの名まで確かめた。
夕刻の鐘を合図に、屋敷の門番が交代した。レティシアは階下の足音を聞きながら、明日も同じ穏やかな朝が来ると思おうとした。
オスカーは予定を一刻ごとに区切らず、移動と休息の余白を残した。宮廷は余白を怠慢と見るが、人は帳面どおりの速さでは動けない。
レティシアは分からないことを分かったふりで埋めなかった。小さな違和感も、今はただ日付と場所を添えて記録するだけにした。
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