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婚約破棄された悪役令嬢は、証拠だけを信じる ~感情ではなく記録で真実を覆す、静かな逆転劇~  作者: 竜太郎


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冬麦の帳簿・夜の記録

その夜、レティシアは「冬麦の帳簿」について確かめられた範囲を整理した。夜、レティシアは起きたことを日付順に書き留めた。感情と推測を別の頁に置き、確かめられた事実だけを細い筆で残す。


父公爵ギヨームは家名と娘の両方を守ろうとして、結局どちらにも明瞭な言葉を与えなかった。曖昧な沈黙は宮廷にとって都合のよい余白になった。


若い令嬢たちはレティシアを恐れながら、その衣装や言葉遣いを真似た。嫌悪と憧れが同じ口から出るため、彼女にはどちらも信用できない。


二人の母は違っても、幼いころ同じ温室へ隠れ、同じ教師から叱られた。宮廷が血筋を細かく分けても、姉妹の記憶に境目はなかった。


レティシアは自分に有利な証言も、その場で採用しなかった。確かめられない味方の言葉へ寄りかかれば、後で崩れた時に真実まで巻き込まれる。


窓の外で王都の鐘が鳴った。姉妹は同じ屋根の下にいるのに、それぞれが伏せたものについて、一度も問いを交わさなかった。


王都の新聞はまだ王家の名を出さず、「ある高位令嬢」とだけ書いた。名を伏せても誰を指すかは明らかで、曖昧さだけが責任を負わずに残った。


反論の機会は与えられているように見えた。ただし期限は短く、必要な資料は王宮が預かり、証人は面会を禁じられている。形式の公平と実際の公平は別だった。


レティシアは人の心を断定しなかった。利害で動く者にも恐れがあり、善意を語る者にも守りたい立場がある。単純な敵を作れば、見落とすものが増えるだけだった。


姉妹のあいだには、幼いころからの合図があった。言葉にすれば他人にも奪われるため、指先やカップの向きだけで、今は話さないという意思を確かめる。


(本文実測:689字)

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