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婚約破棄された悪役令嬢は、証拠だけを信じる ~感情ではなく記録で真実を覆す、静かな逆転劇~  作者: 竜太郎


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薔薇の席順・王宮の廊下

王宮へ場所を移しても、「薔薇の席順」をめぐる視線は消えなかった。王宮では、声を潜めた会話ほどよく響いた。レティシアが通ると話は止まり、去った後にだけ「婚約者」という言葉が残った。


翌朝、三つの家から茶会の延期が告げられた。理由はどれも体調不良で、文面まで似ていることをオスカーだけが指摘した。


王宮侍従は変更を王妃の配慮と説明したが、王妃付き女官は初めて聞いた顔をした。レティシアはその違いを問い詰めず、双方の言葉を記録した。


姉妹だけの時、ノエラはレティシアを「お姉さま」と呼び、宮廷で使う完璧な礼を忘れた。レティシアはその声を守るためなら、自分の評判など軽いと思ってしまう。


反証は見つかるたび別々の場所へ預けられた。レティシアは一か所へ集めれば、正しい資料ほど先に失われると考えていた。


記録帳の末尾に、レティシアは「不明」と記した。答えを急がないことだけが、誰かの用意した筋書きから外れる小さな抵抗だった。


マルタは窓辺へ季節の花を一輪だけ飾った。過剰な装飾を好まない姉と、明るい色を選びたがる妹の、ちょうど中間になる白い花だった。


午後の作法稽古では、歩幅と視線の高さを何度も直された。レティシアは不満を見せず、終わると教師へ礼を述べて妹の待つ居間へ戻った。


公爵領から届いた便りには、雪解けと今年の種蒔きが記されていた。王都の予定とは違う時間が流れていることに、レティシアは少しだけ息をつく。


姉の予定表を覗いたノエラは、空白の日へ小さな丸を付けた。その日は二人で温室の鉢を植え替える約束だったが、王宮の招待が来れば消える空白でもあった。


食後、レティシアは家人の名を一人ずつ覚えているか妹に試された。二人は昔からこの遊びを続け、最後には必ず新しく来た下働きの名まで確かめた。


(本文実測:734字)

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