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【エピローグ:風吹く丘の主】
数年後、かつてのグランツ家が所有していた「あの丘」には、今はリーシェル家の紋章が誇らしげに風にたなびいている。
人々は噂する。没落したはずの令嬢がいかにして公爵家を凌駕し、この地の真の主となったのか。 ある者は、彼女が二人の英雄を虜にした稀代の悪女だと言い、またある者は、荒廃した領地を立て直した聖女だと言う。
だが、太陽の光を真正面から浴びて草原に立つ彼女——リーシェル家の当主となったタルトは、そんな噂を鼻で笑うだろう。
彼女の傍らには、かつて「守る資格」を求めた男と、「独占欲」に狂った男が、今や最強の盾と矛として、彼女の意志に従い控えている。 サシャから学んだのは、淑やかな振る舞いだけではない。「女が己の足で立つための、泥臭くも美しい執念」だ。
タルトは、どこまでも続く草原を見渡しながら、独りごちる。 「月明かりの中で震える夜は、もう飽きたわ」
彼女はもう、光を反射するだけの存在ではない。 自ら光を放ち、周囲を、そして運命をもその熱で支配していく。 風が吹き抜けるこの丘で、したたかなリーシェルの血脈は、ここから永遠に続いていくのだ。




