【第24話:夜明けの丘】
丘の上は、乳白色の朝靄に包まれていました。 立ち並ぶ針葉樹の間から、冷徹なまでの光が差し込み、二人の男の影を長く引き延ばしています。
「……遅かったな、ソウ」 アロウの声は低く、しかし以前のような狂気は消え失せていました。公爵としての重圧を脱ぎ捨て、ただ一人の男として、愛する者を守る「資格」を証明しようとする者の静かな気迫。
「遅くはありません。あなたの剣を折り、彼女を連れ去るには十分な時間です」 ソウの答えは氷のように冷たく、その瞳にはかつての忠誠心ではなく、奪う者としての「強欲」な光が宿っていました。
二人が剣を抜き、その切っ先が互いの喉元を狙って火花を散らそうとした、その時です。
「
朝靄を切り裂くように、雷鳴のような叫び声が響き渡りました。
「勝手に決闘するなーーーーー!!!!」
現れたのは、一晩中悩み抜いたはずのタルト。けれどその姿に、悲劇のヒロインの影はありませんでした。
二人の男は思わず動きを止めました。
「私は私の道を、生きて行くんだ!
守られるんじゃない!
連れ去られるんじゃない!
私の道は、私が決めるんだーーーーー!」
タルトは、アロウの剣を、そしてソウの剣を、その鋭い眼差しで射抜きました。
「アロウ様も、ソウも、私じゃなくて自分の道を歩きなさーーーーーい!」
自分たちの命を懸けた愛の証明を、彼女は「自分勝手な理屈」だと一蹴したのです。
二人は、これまでのタルトからは想像もつかないその烈しい覇気に圧倒され、言葉を失って立ち尽くしてしまいます。そして、釘付けになったように彼女に見入ってしまいます。その背後に昇り始めた朝日が、彼女を黄金色に縁取ります。
そして彼女は続け、仮面を脱ぎ捨てるように不敵な笑みを浮かべます。
「……でも……それでも……、もし。どうしても私という光が必要だと言うのなら……私に。私に着いてきたければ、ついてこーーーーーい!」と その言葉に二人の決闘は収束を見せました。




