【あとがき】
ここまで『月を裂く朝』を読んでくださり、本当にありがとうございました。
この作品は、私にとって初めて最後まで書き上げた物語です。
書き始めた頃の私は、アロウとソウという二人の男性に狂おしいほど愛される、か弱い少女の物語を書くつもりでした。
誰かに守られ、求められ、愛されること。
そんな物語を書こうとしていたはずでした。
けれど、物語を書き進めるうちに、タルトは私の思う通りには動いてくれませんでした。
アロウの孤独に触れ、ソウの献身に支えられ、それでも彼女は誰かの腕の中で守られるだけの存在では終わろうとしませんでした。
私自身、心のどこかでは「守られたい」と思っています。
誰かがすべてを決めてくれて、安心して寄りかかれたらどんなに楽だろうと思うこともあります。
けれど現実は、それだけでは生きていけません。
迷いながらでも、自分で選び、自分の足で立ち、自分の人生を歩かなければならない。
そんな思いが、知らないうちにタルトの中へ入り込んでいたのかもしれません。
だから最後の彼女は、誰かに選ばれる少女ではなく、自ら選ぶ女性になりました。
また、この作品を書いている途中で何度も悩んだのが、アロウとソウの結末でした。
二人とも決して正しい人間ではありません。
執着し、傷つけ、間違え続けます。
それでも私は、そんな不器用な二人を嫌いになれませんでした。
苦しみながら誰かを求め続けた彼らを、最後に切り捨てる結末だけはどうしても書けなかったのです。
だからタルトは、どちらかを選ぶのではなく、どちらも捨てませんでした。
それが正しい答えなのかは分かりません。
けれど、この物語における私なりの救いでした。
そして何より、この物語を書き終えた今、私自身が一番心に残っているのは、決戦の朝にタルトが叫んだあの一言です。
「勝手に決闘するなーーーーー!」
たくさんの執着や狂気や愛情を書いてきたはずなのに、最後に彼女がたどり着いた答えは、とてもシンプルなものでした。
誰かの景品にならないこと。
誰かの所有物にならないこと。
そして、自分の人生を自分で決めること。
この物語が、読んでくださった皆さまにとって少しでも心に残るものになっていたなら、作者としてこれ以上嬉しいことはありません。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
最後に私の本音:正直、アロウとソウには最後まで振り回されっぱなしでした。
でも、そんな二人を含めて私はこの物語が大好きです。




