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【第22話:第二夜 静かなる崩壊と愛】

(小屋の中、薪がパチパチと爆ぜる音だけが聞こえます。あなたがふと漏らした言葉。

「………アロウ様、今までと違ったわ……あの人を一人にしてしまえない………」

その言葉が落ちた瞬間、あなたの後ろで温かい飲み物を用意していたソウの動きが、音もなく止まりました。 彼は振り返りません。ただ、カップを持つその指先が、目に見えて震え始めます。 いつもなら、どんな時でもあなたの言葉に優しく頷く彼が、初めて「沈黙」という拒絶を見せました)


ソウ: 「…………そう、ですか」

(その声は、驚くほど静かで、今にも消えてしまいそうなほど掠れていました。 彼はゆっくりと、力なく振り返ります。その瞳に宿っているのは「怒り」ではなく、魂が削り取られていくような、深い深い悲しみでした。 彼はあなたを責める代わりに、ただ、自分自身の胸に手を当て、苦しそうに呼吸を整えています)


ソウ: 「……あの方の孤独を、あなたは……放っておけないのですね。たとえあの方が、あなたから呼吸を奪おうとした過去があっても。……あなたは、それほどまでに優しい」

(ソウは一歩、ふらりとあなたに近づきました。掴みかかるような強さはありません。ただ、あなたの温もりを確認せずにはいられないというように、そっと、あなたの髪を一房だけ、震える指先で掬い上げました)


ソウ: 「俺は……君を連れ出したあの日から、俺という人間のすべてを捨てて、君の『影』になったつもりでだった。君が笑い、君が安らかに眠れるなら、俺の心なんてどうなってもいいと。……本気で、そう思っていたんだ。」

(ソウは自嘲するように、悲しげに微笑みました。その微笑みが、見ていられないほど切なく歪みます)


ソウ: 「でも……君の口からあの方を案じる言葉が出た瞬間……胸の奥が、焼けるように痛んだ。……俺は、自分が思っていたよりもずっと、浅ましくて、強欲な男だったようです。……タルト、俺は……君のすべてを救いたいと願いながら、同時に、君の心に俺以外の誰も入れないでほしいと……そんな、叶わぬ『独占』を夢見てしまっていた……」


(ソウはそのまま、糸が切れたようにあなたの足元に崩れ落ちました。縋り付くのではなく、ただ、自分の無力さを嘆くように。

「呼吸の仕方も思い出せない。……お願いだ、今夜だけは……。その優しさを、俺だけに分けてはくれないか」彼は唇を噛み締め、あなたの手に額を押し当てたまま、静かに震えています。


今のソウは、説得しようとしているのでも、正論を述べているのでもありません。 ただ、あなたという光が消えてしまったら、自分は一瞬で崩壊してしまう……。その恐怖を、剥き出しの背中で語っています。


あなたは、自分の手に押し当てられたソウの額が、驚くほど熱いことに気づきます。 いつもは冷静にあなたを導いてくれるその大きな手が、今は子供のようにあなたの指先を求めて彷徨さまよっている。

(薪が爆ぜるパチパチという音だけが、スローモーションのような静寂の中に響きます。


あなたがソウの柔らかな髪に指を滑らせ、その頬を包み込むように、そして外界の音をすべて遮断してあげるように耳を塞いだ瞬間……ソウはふっと糸が切れたように、あなたの膝に頭を預けました。 かつての完璧な騎士、無機質だったはずの男が、今、あなたの手のひらの中で、嗚咽おえつをこらえるように肩を震わせています。


ソウ: 「…………壊れてしまいそうだ」

(その声は、あなたの手のひらを通して、直接脳裏に響くような、震える掠れ声でした。ソウは顔を上げないまま、呻くように言葉をこぼします)


ソウ: 「お屋敷にいた頃の俺は、死んでいるのと同じだった。心も、欲も、なにも持たず……ただ君を遠くから見守る『装置』でしかなかった。 ……あの日、君を連れ出したのは、君を救うためだと思っていた。でも、違ったんだ。 ……君に触れ、君と笑い、君と同じ火を囲むうちに……俺の方が、君なしでは一秒も生きていけない体に、作り替えられてしまったんだ」


(ソウはゆっくりと顔を上げました。その瞳は、真っ赤に潤み、あなたへの狂おしいほどの情愛で溢れかえっています。 彼は、あなたが耳に触れていた手をそっと取り、自分の心臓の上に押し当てました。 ドクッ、ドクッ、と、恐ろしいほどの速さで脈打つ鼓動が、あなたの手のひらにダイレクトに伝わってきます)


ソウ: 「見てくれ、この醜い鼓動を。……君の一言で、俺は地獄に落ち、君のこの一払いの指先で、俺は天国へ引き上げられる。 ……アロウ様を一人にしたくないと言った君を、殺してしまいたいほど憎いと思った。……けれど、同時に、そんな君の優しさごと、この腕の中に閉じ込めて、一生離したくないと……叫び出したくなるんだ。


タルト……。俺にはもう、帰る場所も、守るべき名誉もない。 俺にあるのは、君がくれたこの熱い心臓と、君の温もりを求めて震えるこの指先だけだ。 ……お願いだ。俺を……俺という男を、ただの影に戻さないでくれ。……君がいない世界は、俺にとっては……ただの暗闇なんだ」

「2日後の決闘。……俺はもしかすると俺の「強欲」の為に剣をとるのかもしれない。俺は俺の意思でお前を連れ去り続けたいのだ」


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