【第10話:光の虚飾、影の渇望】
シャンデリアの輝きが、グランツ公爵邸の広間を昼間のように照らしていた。本日公爵家で行われる舞踏会である。そこにはアロウが厳選した、深海のような重厚なベルベットのドレスを着たタルトも妹として参列している。その首元には、アロウが「守護」の名目で贈った、血のように赤い大粒のルビーが鎮座している。
■ アロウ:【完璧な仮面と、深淵の独占】
アロウは、集まった貴族たちに向けて、穏やかで気品に満ちた笑みを浮かべていた。
「これはこれはアロウ様 諸国での数々のご活躍聞き及んでおりますよ。…はて お隣におられるのは…これはこれはとても美しい妹君…でしょうかね?」と少し含みをもたせた子爵の言葉に
「ええ、彼女は私の自慢です。亡き友の忘れ形見として、この公爵家が責任を持って育て上げました。……おや、タルト、少し首飾りが曲がっているよ」 アロウは周囲に「優しい兄」を見せつけるように、タルトの首元に手を伸ばす。
(……見ろ。この完璧な人形を。 誰もが羨望の眼差しでお前を見ているが、お前に触れることが許されているのは、この俺だけだ。 社交界という名のこの戦場で、お前は俺の威光を示すための最も美しい旗印。 そしてこの舞踏会で一番きれいだ。
だが、その肌にルビーを食い込ませ、俺の指の跡を残していることは、誰にも悟らせない。 微笑め、タルト。お前が幸せそうであればあるほど、お前は俺の檻から逃げられなくなるのだから……)
■ タルトの言葉:【演じられた安らぎ】
タルトは、アロウの指先が首筋に触れるたび、その冷たさに背筋を震わせる。けれど、周囲の賞賛の声と、隣にいる「アロ兄」の優しい微笑みが、自分の不安をかき消してくれるのだと言い聞かせていた。
「ありがとうございます、アロ兄様。……皆様、兄様は本当にお優しい方なのです。私のような者に、これほど身に余る贅沢をさせてくださって……」 でも…なぜかしら?最近アロ兄が…アロ兄の目が… それに息がしにくいわ。




