【第9話:黄金の檻の装飾(ファースト・ドレス)】
あの事件から一ヶ月。足の傷が癒え、ようやく歩けるようになったタルトを、アロウは公爵邸の広間へと呼び出した。 そこには、平民の娘が生涯目にすることもないような、目も眩むばかりの極彩色のドレスと、大粒の宝石が並べられていた。
■ アロウの脳内:【刻印と武装】
(……そうだ。これでいい。これでお前は、誰の目にも「俺のもの」だと刻み込まれる)
並べられた宝飾品を見つめるアロウの瞳には、かつての穏やかな兄の面影はない。 (二度とあんな汚らわしい連中の手が届く場所に、お前を置いてはおかない。
お前を、誰もが跪かなければ言葉を交わすことさえ許されない、高貴な「象徴」にしてやる。 豪華なドレスも、首元で冷たく光る宝石も、すべてはお前を外敵から守るための鎧だ。 重かろう。窮屈だろう。
だが、その不自由さこそが、お前が俺の庇護下にいるという唯一の証明だ。
……もう、どこへも行かせない。お前はただ、俺が与えた箱庭の中で、俺だけのために輝いていればいいんだ)
■ タルトの言葉:【無垢な感謝】
タルトは、自分の前に用意された贅を尽くした贈り物に、目を丸くして驚いていた。そして、これまでと変わらない、心からの信頼を込めた瞳でアロウを見上げる。
「……アロ兄、こんなに綺麗なもの、本当に私に? あの日、私が怖がって泣いちゃったから、元気を出してほしいって……そう思って選んでくれたのよね。
少し重たくて、私には不釣り合いかもしれないけれど……。
でも、アロ兄が『私のために』って用意してくれたことが、何よりも嬉しいわ。 ありがとう。大切にするね。これを着ていれば、私、公爵家の一員として、アロ兄に恥をかかせない立派な女の子になれるかな?頑張るわ。」
■ ソウの脳内
タルトの背後、影のように控えるソウの視線は、アロウがタルトの首に真珠のネックレスをかけるその手元を、冷徹に射抜いていた。
(……閣下。あなたはやはり、彼女を見ていない。あれでタルト様を守っているつもりなのか?。 その高価な布地が、彼女からどれほど自由を奪っているか。 ……あなたは彼女を「守っている」のではない。自分の不安を埋めるために、生きた彼女を「彫像」に変えようとしているだけだ。 私なら・・・




