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Chapter 4 White cat&curry rice

day:4/10 /2035 tue.


「そういや……あんた誰?」


 俺はポツリと呟いた。それを聞き滝川先輩(先輩で合ってるのか……?)は俺達のほうを向く。


「あ、自己紹介がまだだったね、僕は五年の滝川龍三(たきがわ りゅうぞう)。BND部の副部長をやってるよ」


「「え?」」


 第四蒼天は、学年の表記が特殊だ。この学校は中学校から大学まで、受験無しで進学する。これは第一や第二、第三にも共通している。

 だから、学年の表示は中学一年を『一年』、高校一年を『四年』、大学一年を『七年』と表記する。

 えっとつまり……龍三先輩は、高二……?


「あの、私達BND部じゃないんですけど? なんであんな嘘を言ったんですか?」


 星奈が口を開いた。

 確かに。なぜだろう? 赤の他人である俺達を助ける義理なんて龍三先輩にはあるわけない。


「ま、その理由は……アレを見たからね」


「アレ? 何のことだ? ……じゃなくて、何のことですか?」


 やばい。敬語に慣れてない。


「もちろん、無人機との交戦記録。生で見た後、W-3のミッションレコーダーを見てみたん

だけどあの動きは、ほんとにプロみたいだった」


「いや……俺は勘で動かしただけですよ。大したことありません」


「そんなことはないさ! 普通なんにも訓練を受けてないド素人が乗っても、二、三歩歩いてコケるのがオチなんだ。それなのに無人機相手とは言え、訓練無しで勝利するなんて普通ありえないんだよ」


「え……大和、あんた何やってんのよ……」


 隣からじっとりとした視線。額から汗が吹き出す。


「と、とりあえず本題に戻るよ。さっきも言った通り例の事件に関わってたせいで退学にされた部員が多すぎて、パイロットが足りなくなってる。他の部門はなんとかなってるんだけどね。だから二人とも――」


 龍三先輩は俺達の方に向き直り、黒い笑顔を浮かべる。


「――BND部に入ってもらうよ。あ、ちなみに断った場合はホントのことをバラすから。また取調室へ逆戻りだね」


「「では、ぜひ入部させていただきます」」


 即断だった。だって……

 もうあそこは嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!


「じゃ、この書類にサインと拇印をしてくれ」


 差し出された書類とペンを受け取り、書き込む。


「これでいいの?」


 俺は漢字で書き込んだが、星奈は英語(イタリック体)で書き込んでいた。


「いや、サインと言っても英語じゃないといけないってわけじゃないんだけどな……」


 龍三先輩は困惑した顔を浮かべながらも、ペンと書類を回収した。


「それじゃ、明日からD-4区域にある部室に来てくれよ。じゃあね」


 そう言って龍三先輩は立ち去っていった。

 遠目で見ても、新入部員を確保できたから浮かれているのが、よくわかった。


「ねぇ大和、ごめんけど君の部屋のキッチン貸してくれない?」


 しばらく歩いてると突然、星奈が俺に問いかけた。


「はぁ? 別にキッチンなんてどの部屋にもついてるだろ? それに食堂だってあるし」


「今日の食堂のメニューは嫌いだし、私の部屋のキッチンが壊れてて……君の好きなカレー作るからさ、ね? 貸してよ」


「…………」


「食材の代金は私が持つからさ、ね? おねがい」


「……わかったよ。貸しゃぁいいんだろ……」


「やった! じゃ、五時くらいになったら行くから!」


 そう言って星奈は走っていった。



 …………

 ………………

 俺に残ったのは、この異常に重たい荷物だけ。ほんと、むっちゃ重たい。多分島のきつい坂だったら俺1人じゃ運べなかっただろう。

 幸い校内は傾斜がほとんどないので運搬が楽だ。本当に良かった。

 それにしてもなんだろう? コレ、40キロくらいはある気がする。

 そもそも自衛隊が俺みたいな一般人にこんな物を渡すのか? 一般人って言ってもテロリストの濡れ衣をかけられているが……

 そんなことを思っていたら、なんだかんだで男子寮にたどり着いた。

 あ、そう言えば星奈のやつに部屋の番号を伝えていなかったな……

 そのことに思い当たり、スマホでメールを書き込む。


「送信っと。さて……こいつをどうするか……?」


 こんな重いものを、どうやって玄関の段差を超えさせるか。

 いや、むしろ玄関で開封するか……?

 そう思い至り、キャスターを玄関の中に入れてドアを閉める。


「えっと、ハサミは……」


 リュックの中の筆箱を漁っているときだった。


「目的地到着を確認」


「ん? なんだ?」


 不穏な音を聞き、俺は振り向く。

 件の段ボールは、びっくり箱だった。

 ただ、飛び出してきたのはピエロではない。

 銃よりも、爆弾よりも、戦車よりも、BNよりも、戦闘機よりもインパクトも破壊力も大きいもの。

 そして、多分自衛隊とも、日常とも、戦場とも関係ないもの。

 そこに現れたのは、右の前髪だけが黒い、白髪碧眼猫耳の、野戦服を着た少女だった。


「はい……?」


 え、なんで? なんでそんなのが出てくるの? 全く理解できない。自衛隊のおっさん! というか総理大臣! なんで俺にこんな物を送りつけてきたんだ! あと組み合わせるものを確実に間違えてる!

 俺の思考は堂々巡りし、体は石化した。いや、まぁこれでダンボールのサイズと重量の問題は霧散したけど、問題が増えたよ!

 俺は普通の学生生活をおくれないのか……?!


「大和、どうしました? 心拍数が急上昇しています」


「ってお前誰だよ?!」


 なんだか……どっかで聞いた覚えのある声のような気がする。


「私は〈ハル〉。あなたの担当の戦闘補助AIですよ」


 あ……BN乗ったときに呼び出したアイツか!聞いたことがあったはずだ。だって戦闘中に色々情報教えてくれてたから。だが、本当なのか……?


「いや、一億光年歩譲ってお前がハルだとして、なんでお前が等身大の体でここにいるんだよ! 本体はどう考えてもBNだろ!?」


「陸上自衛隊から、〈コードD6〉……あなたの監視の役目を承ったものなので。数日前起こったテロ事件で、あなたがテロリストなのか、そうではないのかが判別できなかったためこのような措置に決定しました」


 …………

 まだ俺、テロリスト容疑かけられてたの?!

 だったら星奈の方にも同じようなの送っても……いや、BN動かした俺のほうが危険度が高いって判断されたのか?

 いやわかるけど……わかるけどさ、せめて監視役の見た目がもうちょっとまともなのが良かったよ!

 校内で悪目立ちするからさ、俺が! どうせなんか根も葉もない噂を流されて、面倒な目に合うのはよくわかってるんだ!

 その時、ガチャリと音を立て、ドアが開いた。


「おーい大和! きた……ぞ?」


 気まずい沈黙。

 この後、俺は女子二人(?)の言葉の弾幕を必死でいなし、ボロ雑巾のようになっていた。




 数十分後。


「カレー、できたよ」


「うーす」


 頭も体もぼろぼろになった俺は、ゆったりと起き上がり椅子に座る。


「それにしてもハル、お前も飯食うんだな」


「はい。開発者の『できる限り人間に近いものを作る』という意向があったので、そのような昨日が搭載されました。ちなみに味覚も搭載されています」


 別に最後のはどうでもいい。要するにロボットでも食い意地張ってるんだな。

 そこへ、星奈が両手に皿を持って歩いてきた。


「はい、これで完成!」


 出てきたのは、真っ赤なカレー。

 あれ? 星奈が持ってきたのって、中辛のルーじゃなかったっけ?


「何故こんなに赤いのでしょうか……」


 ハルすらすこし引いてるようだ。


「え? そんなの大量の鷹の爪とデスソースをぶち込んだからに決まってるじゃない」


「いや、中辛のカレーに入れるものじゃねぇよ!」


「これくらいの辛さであって中辛じゃない」


「いや、世間ではそのレベルの辛さだったら『激辛』っていうんだよ! 『辛口』よりも辛いってことだぞ!」


 俺の必死の発言も意味はなく、星奈は頭をかしげる。


「うっそだぁ。ウチじゃこのレベルの辛さしか出なかったわ」


「何いってんだよ?! お前の舌はどうなってんだ!!」


「質問です。さっき話しに出た『タカノツメ』とは?」


「ああ、それは唐辛子のこと。大丈夫大丈夫、ペッパーX使ってるから」


「それ世界一辛いやつ! 殺す気か?!」


 やめてくれ……俺辛いの苦手なんだよ! それにペッパーXって触っただけで炎症起こるやつだし! マジで死人が出る!


「流石に冗談よ。使ったのはただの七味唐辛子」


「何だ……それなら流石に大丈夫……なのか?」


「只今検索したところ、デスソースの辛さは、最低でもタバスコの二倍以上だそうです」


「はぁ!? 何だよその破壊力は!」


 俺は席を立って逃げようとした。が、逃亡は失敗に終わった。


「食べ物を粗末にしない!」


 星奈がスプーンを口に突っ込む。一瞬『あ、これ大丈夫なんじゃないか?』と思ったが、三秒後、それが間違いだったことを知った。

 刺すような痛みが口に広がる。

 熱い。水をくれぇぇぇぇぇェェェェェ!!

「カレー、辛ぇ……」

 あまりの辛さで、俺は倒れた。


お待たせいたしました、第四話です。前回いいところで話をぶっちぎってしまい申し訳ございませんでした。(一話~二話も同じようなものだ! と言われたら黙るしかありません……)

もしも、できるならばブックマークや感想、評価などをお願いします(涙)。

それでは、また来週!

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