Chapter 3 Interrogation
day:4/10 /2035 tue.
バラバラバラ、という重低音を、〈ソルジャー〉の高感度マイクは感知した。
《陸上自衛隊のヘリを確認。数5。方位224。また、BNと思わしき反応も三機分。同型機と推測します》
「そんじゃ武器をしまっとくか」
数分前まで、ここでは部活動紹介が行われていた。……なのに、今となっては戦場跡地。
俺と星奈の二人でBND部のW-3〈ソルジャー〉に(勝手に)乗り込み、無人機三機を撃破した。
「気持ち悪い……」
サイドシートに座った星奈が、顔を青くしている。
「やっぱビニール袋、要るか?」
「うん……もらっとく……」
本当にきつそうだ……借り物の機体の中で吐かれたら堪ったもんじゃない。もうやらかしまくってる上に、備品の破損まで加わったら……面倒だ。そう思い、腰のポーチからビニール袋を引っ張り出す。
あ、でもさっき左腕ぶっ壊しちゃったから大して変わらないか。修理代高そうだな……
そんなことを思っている間に、スクリーンには3機のヘリが映し出される。
「ハル、マイクのボタンどこ?」
《こちらです》
タッチパネルに表示されたマイクボタンが点滅する。
「お、サンキュ……っと」
ポチリと押し込む。
「あの、す――」
《撃ちぃ方ぁ初めぇぇッ!》
〈ソルジャー〉を囲んだヘリに搭載されている、二対のれんこん型のミサイルランチャーが火を吹いた。
たった8mの至近距離でミサイルを撃たれたら、流石に〈ソルジャー〉の機動力でも避けることは不可能。
俺は思わず目を固く閉じた。
グチョリ。
そう、まるでガムを踏んづけたみたいな音を、俺は聞いた。
「え?……これは……トリモチ弾?」
星奈が呟く。
「何それ?」
「簡単に言うと、接着剤をぶちまける弾。まさかあのミサイルがそれだって予想はできなかったね」
《肩関節部、及び腰部関節部にトリモチが侵入。戦闘機動の継続は不可能》
次々と悪い事実が飛んでくる。
不意に、機体胸部の緊急脱出ハッチの形成炸薬が爆発し、胸部装甲が開く。そこから自衛隊員がアサルトライフルを片手に中に入ってきた。
「手を上げろ! ゆっくり立ち上がって、ふたりとも出てこい!」
「だー、かー、らー! 俺達はただの民間人で、たまたま置いてあった〈ソルジャー〉に
乗り込んで、暴れてた無人機追っ払っただけなんだって!」
ここは、陸上自衛隊福岡駐屯地。
例の事件から3日後、病院の検査が終わってから、俺達二人は取り調べを受けていた。
「ただの民間人がBNを動かせる訳あるか! お前達もテロリストの仲間じゃないのか?!」
「知らないわよ! むしろ疑うべきなのは学校の荷物検査とか、BND部のプログラマーとかそっちのほうでしょ!」
どちらも言い分は正しい。
まぁ、中学1年生が陸戦兵器を動かせるわけもないということは当たり前だし、第四蒼天の荷物検査やらプログラマーやらが怪しいのも事実だ。
「大体なんだ! BNを動かせた理由が『なんとなくここを動かせばこうなるっていうのがわかったから』だなんて! 上官にどうやって報告すればいいんだ!」
「そんな事言われたって……なんとなくとしか言えないんですよ!」
もう、このループが始まって二時間。もううんざりだ。多分このことは取り調べのおっさんや、星奈も同じだろう。
本当に訳がわからん。
運もないし、面倒な目にも遭うし。冤罪で取り調べられるし。
だいたいなんでウチのガッコを襲うんだよ。うちのガッコに標的になるものなんて……随分あるな。
例えば軌道エレベーター。ここを乗っ取れば九州全土の電力を思いのままにしたり、宇宙へ送る物資を制限したりとやりたい放題できる。
他にも、自衛隊防衛装備庁と共同でBNやら戦車やらをつくったりしている。ここを襲撃すれば新型機を強奪することもできるだろう。
だが……なぜ部活動紹介場に出て来たんだ?
その時だった。取調室のドアが開いた。
そこに歩いてきたのは、眼鏡をかけ、左腕をギプスで固定された中三くらいの少年が歩いてきた。
いや、少年か青年か、正直微妙な姿だな……。
「お、滝川か。ちょっと待っててくれ。今お前の後輩供の取調べ中だから」
「そうですか。でも、彼らはシロですよ」
「何?」
「「はぁ?」」
俺と星奈は同時に、ほぼ同じセリフを言った。
「いやいや。だって彼らは我々BND部の部員、その中でもパイロット部門ですよ? 動かせて当然じゃないですか」
この状況でも滝川さんは、ひとりだけリラックスしていた。てか何言ってんだこいつ。
「だが、現に事故が起きている以上」
「やれやれ……コードD6が発令されています。取り調べの必要はないかと」
コードD6。それを言われた途端、おっさんの顔色が変わった。
「そうか……わかった。二人とも、釈放だ。」
何……? 俺、BND部無関係なんだけど……? コードD6って……?
「何しているんだい? 二人とも、行くよ」
「は、はい……」
俺達は滝川さんに促され、席をたった。
俺達三人が乗ったジープが止まったのは、校門前だった。
「着いたぞ」
そう言い、若い自衛官の人がドアを開ける。
「ありがとうございました」
そう、礼を言ってから降りる。そして、できる限り静かにその場を立ち去ろうとしたときだった。
「あ、そうそう……有川君だっけ? 君には何だか荷物があるみたいだよ」
そう言って、自衛官がジープの後ろからおろしたのは、でかい段ボール箱だった。
サイズ的には小型の冷蔵庫より一回り大きいくらい。
「とりあえずそのキャスターは貸すから。BND部経由で自衛隊に返してくれ」
「わかりました……なんだコレ?」
キャスターを押してみると、かなり重い。何が入っているんだろう……?
「さあ。私には知らされていない。ただ、部屋の中で開けろとのことだ。3人とも、気をつけて帰るんだぞ」
そう言って、自衛官はジープに乗り込む。
二酸化炭素を出して、ジープは去っていった。




