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Chapter 33 Nuclear Weapons and Peace――広島へ出張?――

day:8/6/2035 thr.


「夏休みに入る直前、あんなことを先生に言わなければ……俺は病み上がりで会議なんかに行かないですんだんだ……」


 俺はN700Sひかりレールスターの中で、外の風景を眺めながら愚痴った。


「まぁまぁ、おかげで広島まで行けるんだしいいでしょ」


「星奈……滞在中、行くのは会議場ぐらいだぞ。厳島神社行きたかった……涼しそうだから……」


 あぁ……なんであの日、あんな事を言ったんだ……







 それは、夏休みが始まる直前。俺と星奈は担任の三旗(みはた)先生に呼び出された。


「おお、有川に一ノ瀬、来てくれたか」


 肩こりが酷いのか、右腕を回しながら三旗先生は声をかける。


「なんですか? 俺達に話って」


「……大和、なんかやらかしたの?」


「んな訳無いだろ!」


 言い合っている中、ゴホンという咳払いが聞こえた。

 

「……すまんが、話を進めるぞ。単刀直入に言うと、君たち二人には広島で開かれる『戦後90年核兵器廃絶国際討論会』に出てほしい」


「「え?」」


 その話は聞いたことがある。六月くらいの頃にあった平和学習で、なんかパンフに書いてた覚えがある。


「なんで私たちなんですか? 広島で開かれるなら、広島の、第三蒼天校の人が選ばれるんじゃ……?」


「いやぁ、何でも長崎側の人間も呼びたいって話でな。二人とも五島生まれだろう? それに君たちはBN部で、武器を身近に使ってる人間から見てどう思うかを聞きたいって話になって」


「はぁ……わかりました。日程はどんな感じなんですか?」








 回想モードを終了させ、車窓から見える景色――と言っても、トンネルの中だから真っ暗だが――を眺めながら、エビマヨおにぎりを食べる。


「あぁ……早く帰ってゲームしたい」


 何しろこっちは、退院してすぐにこれなんだ。休む間もなく新幹線に乗っている。

 更に最悪なことに、第三蒼天校側の参加者が夏なのにインフルを発症し、相手――アメリカ代表の二人を、俺達が相手をする羽目になってしまった。


「まぁまぁ、そろそろ広島駅だよ」


 口元をティッシュで拭いながら、俺は星奈の方に振り向く。


「んじゃ、荷物取って出口行くか……にしても、新幹線二回目だけどなれないな」


「五島には新幹線どころか、在来線すらなかったしね」


「あの島、狭いからな……どっこいしょっと」


 学校指定のリュックサックを背負い、俺達は席を後にした。







「こちら〈ホワイトキャット〉。〈ジーク〉、〈フェニックス〉、両名とも車両を降りました」


 ハルは、無線で報告した。

 全く。大和が私を連れて行かないから、こんな風に返送して尾行する必要が出るんです……

 今、私の格好は白いパーカーとロングスカート、サングラスという格好。これだったら尻尾も耳も出ない。

 これがもしも真逆の色彩、つまり黒系の服装だったら一発で不審者呼ばわりされそうですが、その対策まで考えた服装です。

 それに……暑いし。〈グラディエータ〉より、この日常用ボディは冷却効率が悪い。だからせめて熱がこもりにくい白系。

 そんなことはどうでもいい。

 私も二人に続いて車両から降りる。だが……

 二人は人並みに紛れ、私は完全に二人を見失ってしまった。







「おお、君たちが大和君と星奈さんだね? 第四蒼天校の先生から連絡が来てたよ」


 待ち合わせ場所の駅前広場で待っていたら、第三蒼天校の先生、山本先生がやってきていた。

 ――うん、事前に見せてもらった写真と同じ顔だ。すくなくともこのオッサンが俺達を誘拐する可能性はなくなった。


「こんにちは、山本先生。えっと……たしかこれからすぐに討論会ですっけ?」


「ああ、そうだよ。二人とも早く乗りな」


 そう行って、山本先生は自分の車を指さす。

 ……って、日産スカイラインGTR R34型!?

 かっけぇ……シルバーか……あれ、大人になったら買いたいんだよなぁ……


「すごい……どうやって手に入れたんですか? R34型は2002年に生産終了になったはずですけど」


「ああ、丁度2001年に買って、34年大切に乗ってるんだ」


 星奈の質問に、山本先生は軽く答えた。







「こちら〈ホワイトキャット〉、対象二人は引率の車両に乗り込みました、どうぞ」


 スマホに向けて、ハルはつぶやく。


『こちら〈イーグルHQ〉、警護レベルをC-からB+に引き上げろ』


 警護レベルB+、それは「対象に危害が加えられる可能性中」を表す。


「なにか異常事態が起こったのですか?」


『前の大会で、最後に戦った対戦相手が約三十分前、殺害された。事故を装ってな』







「ん?何だ」


 車に乗っていると、スマホの振動がポケットから伝わった。

 スマホを取ってみると、どうやらハルからメールが来たようだ。


「あいつ、ちゃんと部屋で大人しくしてればいいけど……」


「ん? 大和、ハルから連絡が来たの?」


「あぁ、……ってぇ!?」


「え? どうしたの……え!?」


 スマホのメールの内容は、『コレを見てください』。そこに添付されていたURLを押してみると、ニュースサイトに飛んだ。

 そのニュース内容は……『沖縄でガス爆発事故』。

 俺達が声を上げたのは、被害者の写真のところ……そこに、あの斎藤が乗っていたからだ。


「自宅のLPガスのボンベが爆発……? コンロの劣化が原因ってあるな……」


「にしてもおかしいよ……ガスボンベが爆発するってことは、ガス管かなにかからガスが漏れてたってことでしょ……? それだったら多分気づくだろうし、気づかなかったとしたらガス中毒のほうが起こってるはずなのに……?」


 なんだか、嫌な予感がする。冷や汗が背中を伝う。


「なんで、ハルはこいつを送ってきたんだ?」


「それは……知ってる人が被害にあったからじゃないの……?」


「……とりあえず、俺達も気をつけよう」


 ハルのことだから、ただ知り合いが被害にあった、それだけでは送ってこない気がする。まさか、俺達に気をつけろと警告しているわけでもないだろうが……

 そういえば、何故四月の事件では、あの暴走した〈ソルジャー〉――今思えば、恐らく〈ソルジャー・マリオネット〉だったのだろう――は、俺達を襲ったのか?

 奴等は、確か俺達二人をまっすぐ追いかけてきた。あのプログラムを組み込んだのは誰だ?

 そして……最近俺の周りで事件、起きすぎじゃないか?


次回予告


 まもなく始まる討論会。大和と星奈は大会直後にかき集めた資料をもち、会議室に立つ。


 だが、彼らはなぜ狙われるのか? なぜ颯真は殺されたのか?


 討論のchapter34、10月3日、午後六時~七時ごろ公開予定!!

 薄氷は、まだ割れない。


 ここまでお読みいただきありがとうございます!

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