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Chapter 28 scar――えぐられた傷跡――

day:8/3/2035 fri.


 颯真は、〈マリオネット〉のコクピット内で、蹴り飛ばされたときのダメージに顔を歪めながら、悪態をついていた。

 HP残量は、残り七割。


「弾丸を切るだなんて聞いてないぞ!」


 ピンホールショットに関しては、AIがオートで調整してくれるから簡単だが、弾丸切りだなんて……

 銃弾の軌道を見切って、タイミングを合わせてモーションを起こす。言うのは簡単だが、ほぼ不可能だ。

 とてつもない視力、反射神経、機体性能、バトルセンス、そして恐怖に打ち勝つ精神力。

 それらが全て合わさって初めて成功する、無茶な動き。


「ちぃ……! 『ネクスト』だっては聞いてたけど、まさかここまでの化けもんだとは……!!」


 足のペダルを踏み込み、機体を横にジャンプさせ、拳銃を連射する。

 だが、直撃弾のみを斬って『青侍』――〈グラディエータ〉一号機二型は突撃してくる。

 再びトリガーを引く――しかし、弾は出ない。HUDには赤文字の『Empty』の表示。


「弾切れかッ!」


 ハンドカノンの空弾倉を地面に落とし、新しい弾倉をねじり込む。

 途端、その隙を着いて『青侍』は突撃してきた。







 おいおい、マジかよ……そう誠一郎は内心叫んでいた。

 確かに、俺達が作った〈グラディエータ〉は、『被弾する前に近接戦に持ち込む』っていうのがコンセプトだ。

 遠距離の砲撃は、発達してきたステルス技術のせいで意味がなくなりつつある。だから、辻斬り殺法に特化したBNを生み出す――それが目標だった。

 だが……銃弾を斬るだなんて、想定しているわけがねぇだろうがぁッ!!


「ほう、銃弾を斬るとは……素晴らしい性能だな」


「え、えぇ。導入時には、あのモーションは必ず入れる予定です」


 総理には、とりあえず出任せでごまかしたが、まだ冷や汗がダラダラと背中を流れる。

 にしても、あの動き……陸上自衛隊のメカニック班に出向してた頃、格闘訓練のときに、見た覚えがあるような……?






「ハル、〈ライキリ〉をスタンモード!」


《ラジャー》


 青い電光を纏った〈ライキリ〉を、〈シューター〉の胴を狙い叩きつける。

 しかし、〈シューター〉が腰から抜いたカトラスと鍔迫り合いになり、バチバチと激しく火花を散らす。


『よくもここまでやってくれたね、大和君』


 有視界通信装置――二型になって、追加された新機能は、〈シューター〉からの無線を拾った。


「あんたこそ。今俺はこの大会で初めて楽しく思えているぜ」


 それは、紛うことなき俺の本音だった。

 正直な話……圧倒的な力で無双するのは、俺の趣味ではなく、楽しくない。


『ははは……流石は人殺しの狂戦士、やっぱり戦い好きなんだ』


 ……?

 今、奴はなんて言った? 『人殺し』……?


「どういうことだッ!」


『どうもこうも――簡単に言うとね』


 途端、〈シューター〉が、一号機二型を蹴り飛ばし、踏みつける。


『君、小学三年生より前の記憶、無いんだろう? 親も義理だし、おかしいと思ったことはないのかい?』


「……! うるさい……!」


 そのとおりだ。今の俺には、小学三年生より前の思い出は何故か無くなってる。星奈の親――俺の里親や医者は、火事にあったショックで記憶が混乱している、と言っていたが。

 必死に操縦桿を動かすが、どうしてもあの重量から逃れられない。


『小学三年生のとき君は! 人を撃ち殺しているんだよ!! その癖その罪を忘れて、記憶を失ってのうのうと暮らして!!』


「黙れ……!」


 無線は何度も切ろうとしてるのに、なかなか切れてくれず。


『挙句の果てには、その時助けた子の家に住ませてもらって、でもそれでも真実を教えてもらえなくて! こんなに惨めな癖に、こんなに重い罪を背負ってるくせに、もうその両手は血だらけのくせにッ!! 何の罰も受けてなくて本人は無自覚だなんて笑えるよねェ!!』


「黙れえぇぇぇぇッ!!!!」


 叫びながら、操縦桿を動かす。


『チェックメイトだよ、狂人君』


 その瞬間、〈シューター〉の姿にダブり、バラクラバ帽を被り目を血走らせた、太った男の姿が見えた気がした。

 嫌悪感が、悪寒が、恐怖がが心臓の裏から湧き出てきてくる。

 腕が震え、体が動かない。

 拳銃の引き金は引かれる。躊躇なく、何度も。

 着弾と同時に、HPは減り始める。次第に五割を切り、三割を切り、二割を切り……ゼロになった。

 ぽつりぽつりと降る雨が、機体を濡らす。


『勝者、《クレイジー・ピエロ》!!』


 敗北の宣言を、システムと大会は告げた。








「や、大和! 大丈夫!?」


 星奈は、格納庫に戻ってきた一号機二型に向け、声を張り上げる。


「ねぇ、ちょっと!? 何があったの!?」


 だが、返事は帰ってこない。なにか嫌な予感がする。私はそう思い、キャットウォークを登る。

 登り終えたとき、大和はコクピットから這い出てきた。


「やま――」


「何があったって? それはこっちの台詞だ!! 三年前、俺が記憶を失った原因、知ってるんだろ!?」


「だって――」


 だって……それは……


「知ってて教えなかったんだな……! どうだったか? 三年間人殺しを観察して。面白かったか!?」


「そんなことないよ!! それに――」


「……もういい、俺のことはもうほっといてくれ」


 大和はヘルメットを投げ捨て、勝手に走り去っていく。


「待って!」


 私の言葉は、空虚に格納庫で響くだけだった。


次回予告


 ついに始まった決勝戦。弾丸切りという、強力な武器を得た大和は会場を駆ける。




 だが、しかし、その裏では内閣や謎の組織の様々な陰謀が渦巻く。




 自衛隊に納入される機種は? 颯真の『バイト』とは? 光莉先輩の容態は? 告白に対する返事は?




 そして……大和は勝てるのか?




 戦乱のchapter29、投稿十分後に公開予定!!


 薄氷は、まだ割れない。




ここまでお読みいただきありがとうございます!もし『ロボットアクションがかっこいい』『今後の展開が気になる』と思っていただけたら、ページ下部の【★★★★★】とブックマークで応援していただけると、執筆の大きな力になります!

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