Chapter 27 Sword vs. Gun――俺の番――
day:8/3/2035 fri.
「次は俺かぁ……嫌だなぁ……新型相手なんて」
俺は、コクピット内で愚痴を漏らし、頭を抱えた。
いや、星奈が勝ったのはいい。よくやってくれた。
だが……大翔、鈴! お前ら勝てよぉ!! 俺が訳わかんねぇ新型と戦う羽目になったじゃねぇかぁッ!!
もしも俺が負けるか引き分けたら、明日の予定が延長戦になっちゃうじゃないか!! どうすればいいんだよぉ!!
それに……どうしよ。星奈からあんな事言われたけど。
どうやって返事すればよいのか全くわからない……俺は色恋沙汰への耐性はゼロなんだよ!
アニメとかで恋愛関係のシーンが流れると速攻で早送りする男が、どう対応すればいいんだぁ!!
『ほらほら、愚痴言っても仕方ないから早く準備しなよ』
俺を悩ませている原因の片方――星奈が無線で声をかける。
「わかったよ……なんで、こうなるんだ……?」
《……運が悪いためかと。(デュエル的な意味でも、恋愛的な意味でも)とりあえず、動いてください。動かないと解決しません》
……? なんか裏があるような発言をハルが言ったけど、きっと気のせいだろう。AIがなんか腹黒いことをするわけないか。
ヘルメットを被り、最終確認を開始。
「装備は、左腰部ハードポイントに〈ムラマサ〉と〈ライキリ〉、背面ハードポイントに〈ストームブリンガー〉を装備。右腰部に55mmマシンガン、腰部後ろに予備弾倉二本と高振動単分子ダガーを二本装備」
銃はどうせ使いこなせないのだからこれだけでいい。ワイヤーとスラスターで近接戦に持ち込めば、なんとでもなるだろう。
「そんじゃ、行きますか」
一号機二型は、カタパルトに向かってゆったりと歩いていった。
「あきさみょぉ……」
颯真は、うっかり方言を口に出してしまった。
「結局僕が戦わないといけないのか……でもまぁ、相手は刀のやつか。ちょうどいい。『バイト』できるな」
少し顔をしかめながら、僕はつぶやいた。大会中は方言を禁じてたのに、うっかり口に出してしまったからだ。
耐Gスーツのポケットからスマホを取り出し、通話を始める。
「あ、『アシメ』さん? 僕です。例の依頼を実行します」
『無関係な一般市民には、行動を悟られるなよ』
「ええ。当然です――そちらこそ、報酬はきっちりとお願いしますよ」
『当たり前だ。行動には、それ相応の代価を――それが私のポリシーなのでね。それでは切らせてもらう』
ツー、ツー、ツーと話中音が流れ、通話は切れた。それを確認し、スマホを耐Gスーツに戻す。
「……この仕事でやっと金が集まるんだ、待っててくれよ……」
「――それでは、双方の機体のスペックの公表はこれで終わりにします。次に、双方の機体を実際に戦わせると――」
「すみません、実際に戦わせるとはどういうことですか!?」
誠一郎は二宮防衛大臣に対し、声を荒げる。
「おや、伝えていませんでしたかね? 今日、丁度XW-4とXW-5が戦う場が、九州にあるじゃないですか?」
「……まさか、デュエル!?]
「御名答。やはり、できる限り実戦に近い環境を再現することが必要でしょう? 総理、どうでしょうか?」
さぞ、当たり前のように二宮防衛大臣は返す。
「うむ。それも一理ある。私個人としても見たもの以外を信じない主義だ。デュエルの中継を流してくれ」
この場の最高権利者である総理大臣の合意を受け、スクリーンに実況中継が映し出された。
「それにしても、どうなるかな……?」
星奈は、二号機二型のコクピット内でヘルメットを外し、チョコレートをかじりながらつぶやいた。
『まぁ、俺達みてぇなヘマしなきゃいいな』
『負けても明日、延長戦になるだけだし。優勝しなくても先に進めるしね』
大翔と鈴が口々に言う。
「勝敗もそうだけど……光莉先輩の件と、もう一つの方」
『『あぁ……』』
「今手術中らしいけど、どうなってるんだろう?」
あと……もう片方の答えも気になる。ハル、やっぱり時期尚早だったんじゃないのかな……?
《カタパルト接続完了》
ハルが、出撃完了の事実を告げる。
ヘルメットの中で軽く目をつむって息を吐き、操縦桿を掴む。
よし、準備完了。
『カウントダウン開始。十、九、八……』
シューシューと蒸気がカタパルトから漏れ出し、機体を包む。
『七、六、五、四……』
機体がほんの少し浮き上がり、振動が少し激しくなる。
『三、二、一……』
目を見開き、つぶやく。
「有川大和、出る」
『ゼロ』
2.7G……ジェットコースターより少し強めのGを受けながら、機体が一気に加速する。
HUDに緑で表示されている速度計も、コンソールに着いているタコメーターも、新幹線の最速より少し速い共に時速350kmを示している。
……ジェットコースターや新幹線より、ずいぶん乱暴だけどな!
上り坂になっているレールを通り抜けて、夏の陽光の差す出口で、ロックが一気に解除され、強い衝撃が来る。
『スタート!』
大会運営側が試合開始を宣告した。それを聞きながら、マイクに叫ぶ。
「ハル! 〈シューター〉をロックオンしろ!!」
《ラジャー》
カメラが、〈シューター〉の姿を捉える。改造後の〈シューター〉は、拳銃と盾を持ったでっぷりと太ったピエロのような姿をしていた。
一号機二型はスラスターを全開にしながら、即座に腰のマシンガンを抜き取り、照準を合わせる。
モードを三点バーストにし、トリガーを弾く。
だが、あんな丸っこい体型なのに、シューターは機敏な動きで弾丸を避け、二丁のハンドカノンで応射してくる。
「動けるデブなのかよ!」
愚痴りながらワイヤーガンとスラスターで軌道を変え、弾幕を回避する。
再びロックオンし、トリガーを引く。だが、トリガーを引く前に、マシンガンが爆発した。
「何だ!?」
《銃口に弾丸を入れられた模様》
うそだろ……! ピンホールショット……!? 銃弾を銃口に正確に入れて、機関部を破壊したのか!?
だが、うろたえる暇はない。
ただの鉄屑になったマシンガンを〈シューター〉に向かって投げ捨て、スラスターで姿勢を回復させる。
一度地面に降り、スラスターで再加速。
「頭の照準と発砲は任せる! 撃て!」
《ラジャー、チェーンガン、スタンバイ》
チェーンガンの弾丸をばらまきながら、地面スレスレの高さを駆ける。
ダガーを引き抜き、ぶん投げて、〈ムラマサ〉の柄に手を添える。
「まだだ……」
〈シューター〉がこちらに向かって、ハンドカノンの照準を合わせる。
「まだだ……」
〈シューター〉の、ハンドカノンの銃口が、火を吹いた。
「今ッ!
俺は、右側の操縦桿の、薬指の位置のボタンを押し込んだ。
「何が起きたんだ……!?」
颯真は、コクピット内で多少混乱していた。
〈シューター〉の自動照準機能を活用して『青侍』の銃を使えなくしてから、もう一度銃を撃った。そこまではわかっている。
あの弾丸は確かに、一撃KOを狙えるコクピット周辺にあたるはずだった。なのに……『青侍』は、蛍光ブルーの霧を切り裂き、こちらへ飛んでくる。
『青侍』のHPは、霧が原因のスリップダメージで一割減った以外、無傷のようだ。まさか……!
「弾丸を、斬ったとでも言うのか!?」
「あー、ついにやっちゃったか」
星奈が、コクピットの中でつぶやいた。
まぁ、源治さんが対物ライフル弾を斬ったって聞いてから、『俺も、対物ライフル弾とまでは言わないけど、マグナム弾くらいはBNで斬りたい!』なんて言ってたから、いつかやると思ってたけど。
『え? え? え?』
『マジかよ……』
それぞれ順に、鈴、大翔の反応である。
「あ、また斬った」
あれ、ファンタジーの動きでしょ……
「あぁ、こうすれば銃弾を切れるんだ」
俺は、コクピットの中でつぶやいた。
とりあえず、銃弾を斬るにはマズルフラッシュの0.3秒くらい前に、敵機の指の動きを見ながら弾丸斬りのモーションを押す。
そうすれば昔の宇宙戦争の映画とか、図書館で読んだVRMMO小説とか、星奈の父さんが見てた泥棒のアニメに出てくる侍みたいに弾丸を斬ることは可能だ。
言ってるそばからどんどん弾が飛んでくるが、直撃コースのものは全て叩き落とし、どんどん接近していく。
《相対距離、約30m》
「ここまでくれば、もうこっちの間合いだッ!」
アークジェットで一号機二型を加速させながら、〈ムラマサ〉を鞘に収める。
そこから、地面を踏みつけ、鯉口を切り、右手で刀の柄を掴む。
「くらえッ!!」
青い噴射炎を纏い、〈風神〉を叩き込む。
だが。
〈ムラマサ〉は、盾に行く手を阻まれ、弾かれ、明後日の方向に飛んでいった。
胴体に、拳銃を突きつけられる。
「くそ……ならッ!」
拳銃を膝蹴りで吹っ飛ばし、腰から〈ライキリ〉と、予備のダガーを逆手で引き抜き、一号機二型は突撃する。
次回予告
ついに始まった決勝戦。弾丸切りという、強力な武器を得た大和は会場を駆ける。
だが、しかし、その裏では内閣や謎の組織の様々な陰謀が渦巻く。
自衛隊に納入される機種は? 颯真の『バイト』とは? 光莉先輩の容態は? 告白に対する返事は?
そして……大和は勝てるのか?
戦乱のchapter28、8月29日、午後六時~七時ごろ公開予定!!
薄氷は、まだ割れない。
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