Chapter 20 classic game
day:7/31/2035 tue.
対戦が終わってから、俺はホテルの部屋のベッドでゴロゴロしていた。あー、地味に疲れたぁ……
一号機二型は、機体性能が高すぎる。そもそもBNは平服で乗るようなもんじゃないが、〈ソルジャー〉などの第三世代型までだったら野戦服で乗り込んでも(打撲などの負傷を無視すれば)問題はなかった。
だが〈グラディエータ〉は、通常型ですら対Gスーツを着ないとすぐ気絶する羽目になるし、俺達の乗っている改造型は『搭乗服を着てないなら乗るな』と開発者である誠一郎博士から明言されている。
はっきり言って、〈グラディエータ〉はピーキーすぎる。きっちり運用できれば確かに強いが、乗り手を選ぶんじゃないか……?
退屈だったので、なにか面白い番組でもやってるんじゃないかと部屋のテレビをつける。だが、放送されていたのはつまらないニュース番組や、興味のないドラマばかり。
リモコンを見たところ今時珍しいネットに繋がらないタイプのテレビらしく、サブスクすら使えない。
「暇だぁ……なにもやることがないし、ゲームすら……あ」
そう言えば、夏祭りで手に入れた昔のゲーム機が合ったじゃん。やっとその事に気づいて、俺はリュックからゲーム機を取り出した。
確か、これ四十五年くらい前のゲーム機だっけ。ついてるのはA、Bボタンと十字キー、リセットボタンとスタートボタンだけだ。
液晶もモノクロだし。どんだけ古いんだ……? そう思いながら、本体裏にカセットを差し込む。
「お、落ちゲーか。やったことないけどやってみよ」
スタートボタンを押す。途端、いきなりチュートリアルもなしにゲームが始まってしまった。
「え、ちょ、これどうやって動かせばいいんだよ?!」
慌ててゲームをポーズさせる。だが、ポーズ画面になっても変な数字が出てくるだけで、操作方法が出てこない!
「なんでなんだ……!」
その後、俺は数時間この落ちゲーと格闘していた。
「ふあぁぁっ……寝むたい……」
「大和、あなたどうしたの? 寝不足みたいだけど」
格納庫の中であくびをしたら、星奈から心配そうな声をかけられた。
「ああ、すまん……昨日の七時くらいから、この前ゲットしたゲーム機で遊んでたんだ。だけど……」
「だけど?」
「あまりにも不親切で、あまりにも難しすぎたせいで、夜中の十一時くらいまでやってたんだよ。アレ途中で乾電池切れてデータ飛びそうになるし……」
「そう言えば、パスワード写してる? 昔のゲームって確か、セーブできるソフトのほうが稀だけど」
「あ…………」
やってしまった。あの文字列ってそういうことだったんだ……
「あーあ、やっちゃったか……パスワードの文字列を解析すれば色々できるのに……」
どんどん、俺の顔から血の気が引いていく。どうしよう……あそこまで行くのに三時間もかかったんだ、またやり直しなんてキツすぎる!
《大和、早く乗り込んでください。もうすぐ出撃です》
「あぁ……俺のセーブデータ……」
俺達が格納庫に入る、三十分前。
「今から第二回、作戦会議を開始します」
光莉先輩司会進行役として、マイクを握って言った。
「まず、昨日はみんな、お疲れ様! 機体の調子はどんな感じ? 作戦立てるために知っておきたいから、龍三からコールサイン順にカミングアウトして」
「ああ、わかった。まず僕の〈ソルジャー・シーカー〉は戦闘してないからほぼ無傷だ」
余裕綽々に龍三先輩が言った。
「私の〈グラディエータ〉二号機二型は高速飛行をやって、ちょっとスラスターが不調になってて、全力で飛ばなければなんとかなると思います」
少し不安げに、星奈が言う。まぁ、当たり前だろう。あんな高速で飛び回ってたんだから。
「俺の〈グラディエータ〉一号機二型はアークジェットのノズルが焦げただけで、後は無傷です」
ふふふ、あいつら程度、龍三先輩や光莉先輩との地獄の演習に比べればまだマシだ。
先輩たちは俺がワイヤー使って高速機動してても叩き落としてくるから、てっきりそんな事ができるのかと警戒しすぎていた。
「おーし、次は俺か! 〈ソルジャー・スナイパーカスタム〉は主砲の砲身を交換すれば戦れるぜ!!」
大翔……敬語って言葉を知ってるか? 先輩には敬意を表すもんだぞ!
「最後はあたしですね。あたしの〈ソルジャー・メイジカスタム〉は無人機を一機飛ばしたことを除けば、光莉先輩の〈ソルジャー・シーカー〉と同じ状態です」
「よーし、それじゃ殆どの機体が無傷っと――去年とは大違いね……」
「ああ。去年は僕の〈ソルジャー〉のフレームが歪んだりしたっけ……」
龍三先輩と光莉先輩は、顔を見合わせて苦笑した。いや、去年何があったの……? 龍三先輩がそんな大ダメージ受けるなんて、何があったんだ……?
「それで、今回の相手はどこなんですか?」
「星奈、ナイス! 丁度それを言おうとしたところ。まずはこれを見て」
そう言われて差し出された写真に写っていたのは、見たことのないBN。まるで猿のような見た目をしている。
「中国のKh-31〈モンキー〉ですね。東側の言い方だったら、確か〈孫悟空〉でしたっけ? どうやって手に入れたんでしょうか……」
ハルが機種名を答えた。いや、NATOにマジで猿呼ばわりされてんのかよ!
「まぁ、輸出型のKh-1M型を、どっかから安価で買い取ったんでしょうね。そして、これがその機体の改造後の姿」
そして、もう一枚の写真を光莉先輩は机においた。そこにあったのは、さっきの機体にフリフリのドレスを取り付けた機体。
「「「趣味悪い……!」」」
「「「悪趣味だ……!」」」
それぞれ、女子三人と男子三人の発言だ。俺達全員に、ハルにすら同じ感想を抱かせるほど似合わない。
まだ、人間に近い見た目をしている〈ソルジャー〉だったらマシだったのかもしれない。だが、チンパンジーに尻尾をつけたような見た目の〈モンキー〉には全く似合わない。
はっきり言って、凄まじくダセぇ。
「次の対戦相手の『種子島女子校中等部BN部』は『かわいいこそ正義』ってキャッチコピーを掲げてるくせに、ウチとは違ってそこまで資金力がないから、あんな気持ち悪いのになったんでしょう」
「あぁ、僕らの学校は国立だって言うのと、どこかの歌手が寄付してくれてるからね」
……どこから資金が出てるのかと思ったら、光莉先輩の仕事からも出てたんだあれ……
「で、今度の作戦は――」
今回の試合ルールは『トレジャーハント』。ステージ内に隠されている五つのボックスを奪い合い、自分の陣地により多く持ち帰ったチームが勝利というルールだ。
よく知らないが、件のボックスは特殊な電波を出しているらしい。上手いことその周波数を嗅ぎ当てるのが勝利の秘訣だそうだ。
また、どこかに隠してあるボックスはカモフラージュされていたり、地中に埋まっていたりするらしい。
まったく……面倒だ。相手を全滅させても、ボックスを持ってなかったら勝利にならないし。そもそも探すのめんどくさいし。
まぁ、小三のときによくやってたナゾトキみたいな感じで行けばいいのだろう。多分。
そう思いながら、イグニッションスイッチを押し込み、機体を凍結させていた液体窒素を排出する。
博士曰く、リアクターに液体窒素を入れている理由は『エグゾリウム粒子は常温では化学反応を起こしっぱなしになるから、冷やして化学反応を止めている』かららしい。
エグゾリウム・リアクターは、動かす分には補給はいらないが、止めるために液体窒素を補充する必要があるそうだ。
次々とスクリーンに火が灯る。
「ハル、今日もいっちょ頑張りますか!」
《はい。作戦成功を目指しましょう》
『五秒前! 四! 三! 二! 一! ゼロ!』
もう聞き慣れてしまったカウントダウン。それと同時に一号機二型と二号機二型、光莉先輩の〈シーカー〉は自陣を飛び出した。
「星奈、龍三先輩、行きますよ!」
『わかった!』
星奈が威勢の良い返事を返す。
『OK、カウントは私が取るよ。三、二、一……今!』
そして、光莉先輩の合図と同時に、空を飛ぶ二号機二型が降下してくる。その上に俺の一号機二型を乗っけて、二号機二型は〈シーカー〉を掴む。
「アークジェット点火、レーダー広域探知!」
《ラジャー》
一号機二型の腰のスラスターが、青い噴射炎を吐き出し三機を更に加速させる。二号機二型のスラスターの不調を、力技で解決する方法がこれだ。
『星奈、もう少し高度を落として! この高さじゃ流石に探れない』
『これより下は流石にまずいですよ! 対空砲火にさらされます!」
『いい、やって!』
『あーもう、知りませんよ!』
星奈のやけっぱちな声と同時に、一気に高度が下がる。速度計のスピードも少し上がった。
『あった! 星奈、私の機体を下ろして。目的地の方向は方位003。あとは作戦通りお願い!』
『それじゃ、行きますよ! せーのっ!!』
二号機二型の手から地上に向かい、垂直に〈シーカー〉は落ちてゆく。白い衝撃緩衝材の煙がぶちまけられたのを見ると、多分降下は成功したのだろう。
「そんじゃ、目的の陣地に殴り込もうぜっ!!」




