Chapter 11 The terrifying nanomachines
day:5/15/2035 sun
倉庫に急げと言われてから、少し立ってすぐに日の丸が描かれた無人機が飛んできて、実弾が入った弾倉などの装備を俺達に渡し、どっかへ飛んでいった。
「一体全体、何が起こってるんです?」
俺は〈グラディエータ〉一号機の無線越しに、龍三先輩に問いかける。どう考えても、中学生が実弾を使う必要はまったくない。むしろ持っただけでも速攻警察がすっ飛んでくる。
『……この学校にはたくさんの学部があるのは知ってるよね?』
『たしか理系コースと文系コース?』
大翔が話に割り込んできた。ちなみに俺は理系コースだ。
『そうだけど、実はその中身もかなり細かぁぁぁく分けられているんだ。で、今回は理系コースの中のナノテクノロジー研究室がやらかしたんだけど……』
「何が起こったんですか?」
龍三先輩は少しの沈黙の後、重々しく口を開いた。
『研究中の試作軍用ナノマシンを流出してしまったらしい』
…………
「「「「「「はぁぁぁぁぁッ?!?!?!?!?!?!!!!」」」」」」
俺、星奈、大翔、鈴、ハル、光莉先輩は声を荒げた。
『更に、恐るべきことに……そのナノマシンに感染すると……』
「「「「「「感染すると?」」」」」」
『……黒歴史に残るような状態にされる』
「「「「「「???」」」」」」
黒歴史……? どういうことだ……? 理解できない。
『そのナノマシンは空気感染だから、NBC兵器対策で気密がしっかりしているBNに乗れって言ったんだ。俺達が今から取り組む任務は三つ。一つは例のナノマシンを吐き出している生産装置の破壊、もう一つはナノマシン群に命令を出しているコンピューターの破壊、最後は前に言った二つの護衛だ』
数分後、俺と龍三先輩と光莉先輩は、コンピューターに向かうために、森林の中を走っていった。
「あの、コレってやっぱり自衛隊とかがやるべきことなんじゃ……」
『確かに。どうなの龍三?』
『そうなんだけどね……自衛隊も確かに、出たんだよ……出たんだけど殲滅されたらしい』
『せ、殲滅?』
え? どゆこと?
『ああ……警察の機動隊と共同で出たらしいんだけど、NBC防護服をナノマシンが貫通して、傀儡の仲間入りだってさ。BN部隊の方は動かすのに時間がかかるから、それまでの時間稼ぎで僕らを動かしたらしい』
「……ひどい話だ!」
そんなことを言い合っていたら、ハルが話しかけてきた。
《まもなく森を抜けます》
「お、了解っと」
俺達は、それを目にした。龍三先輩が口にしなかった、事実を……
そこにいたのは、大量の執事とメイドだった。
《『「はぁッ?!」』》
『……だから言いたくなかったんだ……こんなこと言ったって誰も信じないから』
そりゃぁなぁ……信じないよ、見ない限り!
そう心のなかで叫ぶ。
『ちなみに、ズタボロにされた陸自の生き残りいわく、ナノマシンで身体能力上げてて特殊
部隊の隊員の二倍くらい強いってさ』
「……色々無茶苦茶でしょう! っていうか服どこから来たんですか?!」
『メイド・イン・ナノマシン』
「なんかこじつけ感がすごい!」
『ねぇ、なんかこっちに剣っぽいの持ってる気がするんだけど……』
もはや、学校内はただのカオスと化していた。
蔓延するナノマシンにより、操られる生徒、教師(あとオマケで自衛隊員と警察官)。それに対するBN部……って、どこのB級映画かよ……!
『注意しろ、生身で吸い込んだら僕らも仲間入りだ』
龍三先輩の黒い〈ソルジャー〉は、両腕のガントレットを打ち付ける。
『わかったわ……ま、できるだけ人には怪我させない方向性でいきましょう』
光莉先輩の白い〈ソルジャー〉は、背中に背負った槍を引き抜く。
「うわぁ……あんな目にあいたくないですね!」
俺の〈グラディエータ〉一号機は右腕で、左腰のパイロンに付けられた〈ムラマサ〉を鞘から引き抜いた。
『こちらドルフィン5、狙撃ポジションに着いた! そっちは大丈夫か?』
無線から、大翔の声が聞こえてきた。それに対して星奈は答える。
「OK、こっちも出るわ!」
『ねぇ……なんであたしも前衛なの? 電子戦機は後ろで支援が定石じゃなかったの?』
隣で、鈴がまだ文句を垂れ流している。
「うじうじ言わない。今回のミッションじゃ、直接生産装置をハッキングして動けなくするんでしょ? だったら現場にいたほうが早く終るよ」
『ハイハイ……わかりましたよ』
「よろしい。ドルフィン1! こっちは準備出来たよ」
無線機に向かって、私は声を張り上げる。
『了解。それじゃぁ、オペレーション:死霊狩りを開始する! 全機、幸運を祈る!』
光莉先輩が、作戦開始を宣言した。
「にっしても、暇だなぁ……」
龍三は呟いた。
この作戦、俺は保険なんだよなぁ……
龍三先輩曰く、『もしも、このナノマシンの散布をどこぞのテロリストが実行していた場合、BN同士の実戦になるだろうから』ということで、俺の〈グングニル〉だけにはドローンが持ってきた実弾が装填されている。
俺が動くような事態にならないほうがいいのだが。
「まぁ、とりあえず様子見てみるか」
「今のところ……なにもないな」
俺は、用心深く、周りを見渡しながら言った。
《目標地点まであと500m》
「OK……しっかし、なんであんな格好にされてるんだ? 武力として使うなら、ボディーアーマーとかの方が良かったんじゃないのか? それに武器だって剣とか斧とか、近接戦しか考えてないぞ」
俺は、そうポツリと呟く。
『多分、開発者の趣味じゃないの? BNやその武器作ってるところと同じ部署がやってるから』
「ふぇ? りゅ、龍三先輩、聞いてたんですか?」
驚きのあまり舌を噛んだ上、変な声が出ちゃった。痛ってぇ……
『無線、切り忘れてるぞ』
「あ……」
《不用心です。今後は気をつけてください……》
「すまな――」
《いえ、撤回します。方位045、距離3キロに、所属不明機を感知。BNが一機とUCAVが10機です》
ハルにそう告げられて、気を引き締め……待て、
『UCAVって何?』
光莉先輩が無線で割り込む。また聞こうとしたことを先に言われた……
『確か、無人航空機の略称だったっけ……?』
《龍三、正解です。より正確に言えば、無人戦闘機です。この数のUCAVに爆撃されては任務の妨害をきたすので、航空自衛隊新田原基地にスクランブル要請を行いました。到着まで4分ほどとのことです。》
に、にゅうだばる? どこそこ?
そんなアホなことを思ってたとき、
『見ぃつけたぁッ!』
無線から、聞き慣れない少年の声が響く。
ドカドカと、空から何かが降ってくる。その数…十個くらいか?
『ドルフィン1、ドルフィン2! やばいぞ、爆弾降らしてきてる!!』
それを聞き、一号機は姿勢を低くして走り出す。
爆発の轟音と、閃光と、凄まじい爆風が吹き荒れる。
それにしてもさっきの無線は? 確実に、絶対に龍三先輩でも、光莉先輩でもなかった。
『あ、なぁんだ。君が来たんだ。彼女の方が来ると思ってたんだけどな……ま、どのみち標
的だから、問題ないけど』
爆風の中、一機のBNが姿を現した。
銀色の装甲に黒いエングレービングを施された、西洋の甲冑のような、曲線の多い優美なデザイン。
そして、その機体は空に浮かんでいた。
背中にそびえる一対の銀翼。そこから赤い光が漏れていた。
『嘘でしょ……BNが『飛ぶ』なんて!』
光莉先輩の声にも動揺が浮かぶ。
後で聞いた話だが、星奈曰く、『BNを飛ばすことはかなり難しい』らしい。
理由は簡単、人の構造の問題、そして操縦系の問題だそうだ。
計算上は、米空軍のF22A戦闘機用に開発されたF119エンジン四機分の推力があれば、フル武装のBNも余裕を持って持ち上げられる。
だが、人間はそもそも『陸』に適応するように進化してきている。それを無理やり『空』に上げたら、うまく動けないのは当たり前だ。
それに操縦系。陸でBNを動かすのにも最低、サイドスティック二本にフットペダル二つ、十二個のボタンが必要だ。
こんなのに無理やり、空を飛ばすための装置を組み込んだらどうなるか? 操作が複雑になりすぎて、操縦できなくなる。
だから飛ばすことは現実的ではないらしい。
話を戻すと、その天使(仮)は、大量の無人機を引き連れ、空中で佇んでいた。
天使(仮)は、わざわざ俺達から見たら逆光になる位置に浮かんでるせいで、なんだか大昔の宗教画のような風景が広がっている。
そんなことより。
「どういうことなんだ……! 俺が、標的だと?」
マイクに向かって呟く。
『あー、そっかそっか。この国重要なことを当人に隠しちゃうから、わかるわけ無いか』
天使(仮)の、煽るような発言。
ちょっと、いやかなりイラッと来た。
『ともかく、僕達の『組織』には必要だから』
天使(仮)が、手を横に伸ばす。
『大人しくついてきてくれるといいな? ちなみに、ナノマシン漏らして『兵士』を量産したのは僕だよ』
天使(仮)の手に、ランスと盾が握られた。




