Chapter10 The Diva's Triumphant Return
day:5/8/2035 sun
「今から、コードD6に関する会議を始める」
会議室の中で、安藤 総理大臣は口を開いた。
「二宮防衛大臣、説明を」
右側に座っていた二宮 防衛大臣は立ち上がり、バインダーを読み上げる。
「はい。〈ジーク〉は先の演習にてレベル0から1へ進化し、システムプロテクトを一つ解除しています。」
「そんな……?!」
それを聞き、大鳥 外務大臣が慌てる。
「落ち着いてくれ。まだ問題がある……新たな『ネクスト』が、もうひとり見つかってしまった」
「なにぃ!?」
最高レベルである、レベル3のネクスト一人は、軍事、外交において水爆百発以上の脅威。つまり……日本は今、アメリカやロシアに匹敵するほどの軍事力を持ちかけていることになってしまう。
「それで、彼……いや、彼らを回収するんですか?」
泉 国家公安委員会委員長が安藤 総理大臣に問う。
「いや……回収はレベル3になってからだ」
day:5/15/2035 sun
ガチャガチャと、俺の部屋でレバーとボタンを操作する音がする。
「とりゃぁぁッ!」
「ふふふ、その程度では負けませんよ」
何が起きているのか。それは簡単。朝っぱらから星奈がやってきて、『ゲーム機を使わせろ』と言い始めた。それが発端だった。
そして、最近俺のゲーム機はハルに占領されている。それでゲーム機の奪い合いになった結果、格ゲーで白黒つける事になっていた。
適当にコマンドを叩き込み続ける星奈と、的確にハメ技を狙うハル。
「おい、そろそろ部活の時間だぞ」
「待って! この勝負だけは負けられない!」
「残りラウンドは0。つまりこのラウンドが決勝なんです。ここで勝たないと……」
「わかったわかった」
そう言いながら、俺はゲーム機をポーズさせ、電源を落とす。
「「あー!」」
「じゃ、いこう……ん?」
俺は、怒り狂った二人によりリアルでボコボコにされてしまった。(AIにも感情はあるのだろうか……? 昔見た映画じゃ、感情を学んだAIみたいなのが出た気がするけど)
なんでなんだ……解せぬ。
消し忘れたテレビからはニュースが流れる。
『第四蒼天校でのBN暴走事件の犯人の手がかりは、いまだ掴めておりません。次のニュースです。全世界で大ブレイク中のアーティスト、ヒカリさんが長期の療養から日本に帰国しました。ライブの予定は10月に東京ドームで行う予定です。次のニュースです。米中冷戦の最中、米ウィリアムズ大統領は――」
「こんにちは」
そう言いながら、倉庫(部室)のドアを開け、俺と星奈とハルは部室に入る。
「おい有川! てめぇ何やってんだ!」
「あ、徹郎先輩。どうしました?」
整備班長の徹郎先輩がいきなり怒鳴ってきた。
「どうしました? じゃねぇよ! 七日前の演習! あれのせいで一号機の足回りががたがたになってんだ! それに〈ストームブリンガー〉と〈グングニル〉! 〈グングニル〉はスペアがあるからともかくお釈迦になっちまったじゃねぇか!」
「あ……すんません」
「はぁ……と、に、か、く! もうあんな無茶すんな!! なんならお前が四月に乗ったソルジャーもフレームが歪んで使いもんにならなくなったんだぞ! メンテナンスする俺達のみも考えろ、いいな!」
「は、はい……」
……だって、仕方なかったんだもん。勝つにはああするしかないでしょ……
そう思っていても、口には出さない。口に出したら火に油を注ぐ結果になるからだ。
「あと……〈ストームブリンガー〉の代わりなんだが、昨日届いていた試作刀型高振動単分子ブレードの〈ムラマサ〉と、〈ライキリ〉の方を使え。もうこれしか予備はないんだから、大切にするんだぞ!」
そこまで言うと、今度は星奈の方に向き直る。
「次、星奈! お前は手と腕がぼろぼろになってるぞ! 何やったんだ!」
「な、なにって……普通に戦ったつもりなんだけど?」
流石に星奈も引き気味で返事する。
「ガンガンソーサラー殴ってたりしただろ! アレでマニピュレーターがイカれたんだよ!」
「ああ……それ……」
どこか、遠い目をしている。
「待て星奈、お前そんな事してたの?」
「まぁ……やったね……」
いつの間にやったのだろうか? 全くわからない。
その時だった。バァンと音を立てて、誰かが入ってきた。
「大和ォッ! とっとともう一回俺と戦いやがれぇ!」
そう叫んで現れたのは、リーゼントのチビ――岡田大翔だった。
こんなチビヤンキーでも、二つ名は『ロビンフッド』。ギャップがすごすぎる。
「ハイハイ、アトデタタカイマスカラ、チョット、オトナシクシテテクダサイ」
棒読みで返事する。こいつめんどくさいんだよな……
「こんにちは……っていうかどうか絶妙だな、この時間……」
そうつぶやき、ギプスの取れた腕をブンブン振り回しながら、龍三先輩が入ってきた。
「あれ? またケンカかい? そうか、また僕にボコボコにされたいのかな?」
一瞬、鬼の角が二本ほど見えた気がする。
龍三先輩、古流武術の使い手で生身でもむっちゃ強いんだよな……
「「いえ……そんな事はありません……」」
「よろしい。それじゃパイロット部門のいない人はあと一人か……」
「ごめんなさぁぁぁぁぃッ!!」
ギャギャギャギャァッ!と外で土煙が上がる。
「何だ!?」
慌ててドアを開けて、外に出る。
「もしかしてあたし遅刻してた!?」
外では、ショートヘアの女子――月野鈴が、赤い自転車でスライドブレーキを決めていた。
あれ……? どっかで見た覚えがあるような……?
「やっぱり――」
「まて! それ以上言ってはいけない!!」
星奈が何かを言おうとして、慌てて止める。
たぶん、著作権に引っかかってしまうよ……!
「いや、ギリギリセーフだ。あと30秒以内に部室に入ればね」
龍三先輩の、無慈悲なる通告。
「のぉぉぉぉぉッ!」
慌てて、鈴は部室に突撃する。
「……自転車のキー、締め忘れてるぞ……」
俺は一言、ポツリと呟いた。
その時だった。
黒いリムジンがゆったりと、オフロードを揺れることなく走ってくる。
「トヨタのセンチュリーだ……」
ポツリと星奈が呟く。
リムジンはそのまま、倉庫の前で止まる。
「あー、もう着いちゃったか……」
「え? 龍三パイセン、乗ってる人知ってんのか?」
大翔が龍三先輩に対し、疑問を口にする。
「ああ……まぁね」
リムジンのドアがゆっくり開いた。そこから現れたのは、龍三先輩と同じくらいの年頃の、ポニーテールの女子生徒。
「え!?」
鈴が驚きの声を上げ、
「うっそぉん……」
星奈が呆然とし、
「これは夢なのか……?」
大翔が頬をつねり始め、
「これに類似する事態が発生する確率を演算中……」
ハルが処理落ちし、
「フン……帰ってきたか」
徹郎先輩が、さも当然のようにつぶやき、
「え? 誰?」
俺一人、みんなが何に驚いているのかを理解できず、
「おかえり……光莉」
龍三先輩が挨拶をし、
「ただいま! 龍三!」
この部活の部長、石川光莉先輩が帰還した。
「「「サインください!」」」
俺と先輩二人、ハル以外の三人は、どこから取り出したのか色紙とサインペンを差し出した。
「計算完了まであと一時間……」
「ハル、たぶんその計算やらなくていいぞ……」
ダァァァァァン!
いきなり、爆発音。
ってか今日驚かされんの何度目だ……? さっきあった鈴の某SFネタの時と、光莉先輩のリムジンと合わせて三回目だ。
おかしいな……ギャグ話だったら、一話に一回くらいの頻度のはずなのに……?
そんなことを思っていると、龍三先輩がズボンからスマホを取り出す。
「なに……! みんな、今すぐBNに乗れ! 徹郎は地下のシェルターに退避!」
「へ?」
「後で理由は話す! 急げ!」
龍三先輩の剣幕に押され、俺達は慌てて倉庫の機体へ走っていった。




