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41話 スタイリスト、マーガレットの参加

「今回から、≪アナザー・ロージア≫のスタイリングをお願いしたマーガレット・ルーヴル嬢よ」

 バートラムの家の倉庫で、改めてマーガレットの紹介をすると

アレックス、リアム、バートラム、ダグラス、そしてレイは拍手で出迎えてくれた。


「マーガレット。最初に、何か言いたいことはある?」

「では、遠慮なく。……脱いでください」

 マーガレットは言うやいなや、シャッと巻き尺を手にして、上着を脱いだメンバーの肩やら腕やらを素早い手つきで測定していく。

「アレックス様、肩幅428㎜、袖丈650㎜、ウエスト周り……失礼、780㎜」

 ウエストを測るのに抱き着くような形になっても気にする様子もない。まるで職人の顔つきだ。マーガレットがつぶやくと同時に、マーガレットの侍女が素早くメモをしていく。

 レイにいたっては、憧れのマーガレットが自分の身体に触れてくるものだから、ガチゴチに緊張しているのがわかるのだが、当のマーガレットは気にする様子もない。


「すごいわね」とミネルヴァがつぶやくと、アンナは「私も負けていられません」と謎の闘志を燃やして、マーガレットの手伝いに名乗りを上げた。


「すべての測定が終わりました」

 ひととおりの作業を終えて、マーガレットが言う。

マーガレットはもとより、≪アナザー・ロージア≫の面々もヘトヘトだ。

「ものすごい手際の良さだったけれど、マーガレットは、洋服の仕立てを学んだことがあるの?」

「自分のドレスと、お友達に頼まれたときだけです。ただ殿方の洋服を仕立てたことはないので、この数値とデザインをもとに仕立て屋にベースとなる衣装をお願いするつもりです。そこから私がアレンジをさせていただければと思っています」


 マーガレットが言うと侍女が口をはさんでくる。

「マーガレット様は、十歳を過ぎたころから、ご自身のドレスを仕立てられるほどだったんです。今では、その腕はアステル国の一流の仕立て屋にも負けません」

「メアリ、余計なことを言わないで!」

メアリ、と呼ばれた侍女は、30過ぎであろうか。マーガレットを娘のようにかわいがっているようで、その関係性が微笑ましい。


――こうしていると、まだほんの少女なのに。

 楽しそうなマーガレットを見ていると、肩を震わせて泣いていた先日の姿が思い出されて、ミネルヴァの胸はちくりと痛む。そして楽しそうなマーガレットを、同じようにニコニコと見つめているレイ。


 もうすぐ結婚する、という話は、マーガレットからは口止めをされた。

 おそらくマーガレットにとっては望まない結婚だ。祝われるのも、腫物に触れるように扱われるのも、両方とも嫌なのだろう。


「マーガレット、どんな衣装を作ってくれるの?」 と、とろけそうな笑顔でレイが問いかける。

「まず、揃いのジャケットを。これまでも似ているジャケットを着ていらしたけど、きちんと生地から揃えたいと思っています。ジャケットはシンプルな形で、ドレスシャツはそれぞれのメンバーカラー」

 マーガレットが言いながら、サラサラとデザイン画らしきものを紙に書いていく。


「シャツも全員同じではなく、それぞれのイメージにあわせたデザインにしたいです。

 アレックス様は精悍なお顔立ちですからアスコットタイ。リアム様は繊細なレースのスカーフ。バートラム様は細めのリボンタイ、レイは大きなリボンで。楽器を演奏するダグラス様は動きやすいようにシンプルなタイがいいですね。ジャケットの上からサッシュをつけても、かしこまった雰囲気が出ると思います……」

 マーガレットの手はサラサラと止まることはない。

 マーガレットの手元をのぞき込み、「かっこいい!」と声をあげたのはレイ。他のメンバーもイラストを見て「これはすごい」「おしゃれだね」と口々に言う。 


 みんながこぞって褒めるので、マーガレットの顔は少し赤らんでいる。

「でも、肝心のジャケットの色を決めあぐねているのです。アイボリーが良いのか黒が良いのか……」

 そう悩みながら、マーガレットの目がキラキラと輝く。


――これは、好きなことに夢中になっている時の目だ。

 ミネルヴァはこういう目を、これまでたくさん見てきた。

≪ロージア≫の5人の目、はじめて舞台で歌ったアレックスの目、そしてそれを見守る貴族たちの目。

 きっと、もっと多くの人たちの目が輝く日も遠くない。

 

そう思っていたのだが……。


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