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5.バカ者 ロスト

「死んだか?ロスト」


炎に包まれたロストを優雅に眺めながらレヴはそう一言呟く


「死んでない、怒るぞ」


グランがそう言った直後、ロストがゆっくりと炎の中から歩いてくる。


「はぁ酷いね、レヴ」


「酷くない、お前の方が酷いだろ」


……確かに


「ロスト、ロスト、ロスト、ロスト」


そう言いながら、グランは炎を動かす。


ぐんぐんと一点に集まる炎は、大きな火の玉になる。


先ほどの周囲を囲う炎とはレベルが違う、僕でも直撃したら多分やばい


というか、この建物木造なんだけど……


「ねぇ、これレヴが払ってね」


「無理」


火の球の前で立ち尽くす僕を肴に酒を楽しんでいるレヴがきっぱりとそう言い切る。


「死ね、ロストッ!」


大きな火の玉はその声と共に僕に向かって来る。


ついでに、酒場のテーブルやら何やらを焼き払いながら


「おい、壊した分は請求するからなッ!」


おじさんの怒号が響く、大丈夫、グランはこういう事をいつもやってるから


探協に苦情でも入れたら一発で対応してくれると思う、多分


というかおじさんの方がまずいんじゃないか?熱くないのかな


……まぁいいや、何とかするでしょ、あの感じ


迫ってくる火球、それをとりあえず、払うように剣で切ってみるが二つに分かれた火球は一切の制御を失われず、そのまま僕に向かってくる。


「ロスト、ロスト、ロスト、ロスト」


「うるさいから黙ってくれないか、マジで」


酒場の中を走り回り、とりあえず炎を斬って斬って斬る。


だが、ただ火の玉が小さくなるばかりで、量は減っていないのだから意味はない


「うるさい?酷いぞ、怒れグラン、死ねロスト」


流石に酷くはないだろ、でも、薪をくべちゃったか


「はぁ面倒くさい」


「面倒くさい?酷いぞ、怒れグラン、死ねロスト」


ああ、これだから嫌なんだ。


ちょっとの些細な事で怒ってさ、そもそもなんで最初からこんなに怒ってるんだ。


僕なんかしたっけ、前にグランと会ったのは確か……


「あ」


……まぁそうだね、忘れといた方が良い事もあるかもしれない


いや、もしかしたら、グランの怒りを鎮める事ができたりするか?


うん、かなりあるかもしれない、誠心誠意、心を込めて謝れば……


「グラン!」


「なんだ、ロスト、怒るぞ!」


「あのさ、そういえばこの前会った時……」


「この前?この前、この前、この前、この前ッッツツツ」


あ、これは駄目かもしれない


「ロスト、ロスト、ロスト、ロスト、ロストォォォォオオオ」


「許さない、許さない、許さない、許さない、許さない」


駄目でした。


周囲の火、飛び回る無数の火球が温度を上げる。


「ロスト、お前何したんだ?」


「……」


「グランは怒りやすいとはいえ、ここまで怒っているの初めて見たぞ」


「……た」


「売った?ああ、グランの持ち物を勝手に売ったのか、お前やばいな」


「いや、違う」


「は?じゃあ何を……」


「あの人……禁忌の魔女が大事にしてる絵画あるじゃん」


「ああ、国宝の、よくわからんが特殊な魔術がかけられたとかいう絵画か、禁忌の魔女が気に入って10億くらいで買った……」


そう、それ、なんでも絶対に壊れないとかいう魔術がかけられてて


あの人はそれと、後、単純に書かれている絵が気に入って買ったんだけど……


「あれを僕、遊んでたら燃やしちゃって、その罪を」


「……擦り付けた、グランに」


「……」


レヴの沈黙が背中に突き刺さる、表情は怖くて見れない


「いや、擦り付けるというか、あの人が勝手に勘違いしたんだけど」


「丁度そこにいたし、嫌いだし、この前、僕の本燃やされたし、良いかなって」


「あとから、流石にあの人絡みはまずいかなって思ったけど、遅くて……」


気が付いた時には、あの人はグランの首根っこ掴んでどこかに行った。


そう、どこかに、どこかに行った。


見当はつくし、多分、あの部屋に行ったんだろうけど、考えたくない


もしかしたら、意外と許されて終わったのかもしれないし……


チラッと怒り狂うグランの方を見る


うん、絶対にないな


そもそも、あの人が許すという概念を知っているわけがない


「お前……お前……」


「うん、本当に悪いとは思ってる」


「……グラン、アイツ、何回死んだんだろうな」


「分かんない、でも、多分両手じゃ足りないと思う」


「……ロスト、償いだ、殺されてこい」


でも、そもそも絶対に壊れないって言ってるのに壊れる絵画も悪いと思う


……あれを売った商人?どうなったんだろうな


まぁ多分、いいようにはなってないだろうけど……


どうにかして、そっちに怒りをやってくれないかな、グランも


……それは無理か


「ロスト、ロスト、ロスト、ロスト、ロスト、ロストッツツツツ」


彼が怒るたびに、操る炎は威力を強まる。


そして、恐らく……


「溜まった、怒りが」


グランがそう言うと、炎が皆に規則正しく動き始め中央の一点に集まったかと思えば、炎が一つの像を形作る。


「『怒髪衝天』」


その一言をきっかけに炎の像から一斉に炎が地面を伝って解放される。


気がついた頃には、炎の像を中心に作り出された炎の領域、その中に僕はいた。


彼が生み出した炎の領域、空中では火の玉が縦横無尽に飛び回り


「ん?」


「危な」


地面からは炎の槍が生えてくる絶対領域。


そして、それを司る中央にある魔像


『怒髪天』


それがこの馬鹿みたいな性格の彼を第一階級にした理由である。


「危ない?酷いぞ、怒れグラン、死ねロスト」


危ないのは危ないだろ、火の球と火の槍だぞ?


にしても、まだ怒りを溜める気か


とにかく走り回り、避けに徹するが火の球が頬を掠る。


……かなりまずいな


これ以上溜められると、ますます手が付けられなくなる。


でも反撃するのは、それはそれで怒るからな


うーん


まぁいいや


ごめん、グラン、君が怒っているのは分かった、分かったけど


戦いだから、プライベートは関係ないじゃん、やっぱり


それに怒るとしたら、勘違いしたあの人に怒ってくれ


……無理だな、それは


まぁいい、よく考えたらそうなんだ、それは別問題だ、後で考えよう


戦った後で謝ろう


とりあえず、今は君に勝つよ


Nepo(ネロ)


ロストがそう呟くと、大きな水の球が中央にある炎の像の上に現れた。


さぁここから、反撃だ。


……後片付けはレヴがしてね。

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