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25/26

25.化者 ロスト

ああ、雷に穿たれてしまった。


神器から放たれる雷のクールタイムに入ったから


全くの無警戒で、ただただ突っ込んだせいで


と、言ってもね


「まぁ分身作れる奴が無警戒で突っ込むわけがないよね」


あらかじめ、ミラの光線連打を目くらましにして作っておいた分身体の後ろから僕は現れる。


制御を失った分身体を足場にして飛び立つと、女王を見下し


落下中、見上げる女王の鋭い目が見える。


なるほど、ここは届かないのか


見下す球体(ヴァリティータ)


神器の大体の範囲を確認し、足場代わりに、そして単純な攻撃として見下す球体を生み出す。


神器の範囲外に生み出された球体に雷は通らない


もちろん、下された重力についても、同義である。


そして、重力に押しつぶされてしまえば、通常の神器を使った雷は放てない。


「そっくりそのままお返ししますよ」


「天鏡・大連星」


先ほど、雷にうたれたミラ何故か背後に現れる。


まぁその理由は彼女の言葉通りなのだろう。


分身つくれる奴が無警戒でいるわけがない


背後に現れたミラから放たれる数多の光線


これはしっかりと、質量を持っている。


ただ、意味はない


僕が考えた最強の魔術シリーズ第三弾


黒箱(ブラックボックス)


ロストワンダーを閉じ込めるように現れる黒い箱


それは、ロストワンダーとそれ以外を断絶する結界。


結界は当たり前のように、ミラの光線を阻む


ただ、それだけでは終わらない


黒箱はミラの光線を反射する。


うまく調節してか、勝手にかは分からないが、反射された光線は、先ほどロストワンダーの見下す球体によって下されたエルフ達に直撃する。


「で、ミラ、君、それ本体でしょ、負けだね」


見下す球体(ヴァリティータ)


ミラの頭上に現れた球体はミラを見下す。


「違いますよ」


「ミラなら違いますよとか言う前に消えて、即ビームでしょ」


そういう性格だって事は大体わかってる。


つまり、彼女は本物だ、それに先ほどのビームだけ明らかに籠められた魔力の量が違った。


「いいえ、本当に違いますよ、負けるのはあなたなので」


彼女はそう言った。


負ける?ここから僕が?何か来るのか?


と言っても、僕には『見下す球体』がある、大体のやつなら――


「■」


頭を貫くようなその雑音と共に、魔力が整った。


あるべきものがあるべき所に帰ったと表現した方がいいのだろうか


違和感が無くなった。


その違和感とは、神器の話


神器を持っている者と持っていない者では


本当に、言葉では言い表せないくらいの差がある


その差、それは神器持った、いや、詳しく言えば神器を解放した人間と神器を持たぬ人間の差という話でもあるが……


多くは神器を持つ前の人間の話でもある。


簡単に言えば、神器を神から贈られる限られた人間は、神器を持っていなくても神器を持たない人間より、数倍、いや、数段以上、強い


有り得ないのだ、神器を持った人間、神器を贈られるよな人間があれだけ神器頼りで


弱いはずが――


さて、ここで少し振り返ろう


大魔獣の話である。


大魔獣はロストワンダーの感覚によると、ミラや女王、勇者が負けるとは思えないほど弱いらしい


それが、大魔獣の魔術を勘違いする原因にもなったわけだが……


大魔獣の魔術だと思ったものはミラの魔術だった。


では、ロストワンダーの感覚は誤りだったのだろうか



そんなことが有り得るわけが無いのである。


「マジで?」


また、よくわからない小さな塊が不気味な音を立てて蠢き始める。


そして、そこから羽化するように、何かをばら撒きながら広がる。


それは、体毛、鋭く尖った毛は四方八方に飛んでいく


そして、中央に残ったのは


それら、すべてがそぎ落とされ、姿を変えた――


「■」


大魔獣『完全体』


彼、いや、彼女の真の姿


ほとんど人間と変わらないすらりとした体形に、黒のドレスが映える。


美しい慈愛に満ちた美女に山羊の角が生え、しかし片角折れたその姿


だが、依然、彼女は自由を肯定している。


彼女の名は『アマルテイア』と言うらしい


そして、さらに――


「神器解放」


雷霆の万雷(ケラノウス)


万雷は尽きず、溢れる。


「マジか」


これでいい、今までのすべての攻防で


魔力がたまり、あるべきものがあるべきところに帰り、生まれた、いや解放された。


最悪の大魔獣が――


「これで私達の勝ちだ」


「行方不明、ロストワンダーッ!!」


私の、本の、かた、き……


そう言い残し、ミラの意識は途絶えた――



が、数分後、意識が帰る。


そして、ミラはふらふらと朦朧とした意識の中で立ち上がる。


「勝った、勝った、ロストワンダーに」


それは確信とも言っていい、勝利の証だった。


だが、それは全くの幻だった。


片腕が落ちる音がする。それは右にあったものだ


片足が落ちる、それは左にあったものだ


そして、山羊は倒れる。安定を無くして


そして、彼は山羊を踏みつけるように立つ


そして、山羊の胸の辺り、ちょうど心臓に剣を突き刺す。


「な、な、な」


山羊は墜ちる、絶命というやつだ。


「ふぅ、これで、僕の勝ちでいいかな?」


山羊の絶命を確認して、ミラに向かって僕は振り返る。


そして、ぶっ倒れる。


「は?」


その場に残ったのは、何とか意識を保ったミラ


見下す球体


そして


大魔獣の胸元に刺さる……


黒い剣のみであった。



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