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26/26

26.被害者 ロスト

熱い


ああ、睡眠という物はやはりそれ以外の物から断絶されたものじゃなければならないと思う。


今回の場合、正確には気絶に近い物であっても


何も考えずに、睡眠という物に没頭し、その終わり、起床の瞬間も何人たりとも邪魔されることなく健やかに起き上がる。


だが、こういうときもある。


熱い


熱いな、すごく


最近熱いよね、ほんと、寝ている時も熱くて寝苦しいというか、春でこれって夏になったらどうなってしまうんだろう


というか、もうそろそろ夏か


なら、このくらい暑くてもまぁ当たり前といえば当たり前なのか?


ううん、でもなんか、すごく熱いな


ん?熱すぎないか、流石に


まるで、僕は鉄板の上で――


「起きたか、ロスト」


うん、焼かれているな、僕


「おい、エルフ、薪を足せ」


レヴの声に従いどこからか薪を持ってきてくべるエルフ達、それと共に鉄板の下で轟々燃える炎が加速する。


ああ、やんなっちゃうな


「ねぇ、レヴ、なんで僕は焼かれているの?」


大きな鉄板の上、その下の炎がちらりと見える。


そして、僕は鉄板に背中全部が当たるようにぐるぐると巻きつけられている。


「うるさい、黙って焼かれとけ」


「はい」


僕は黙って、焼かれることにした。


まぁギリギリサウナとか、そういう物だと思えばいける……


いけないか、無理だな


熱い、熱いよ、それに身動きが取れないのもきついよ


何なら、身動きが取れないのが一番きついかもしれない


「あの……レヴ様、これ以上は……」


薪を運んでいたエルフの一人、確かユグドラの副団長だ。


彼がレヴに向かってそう言う、すごいな、恐れ知らずだ。


「あ?お前も焼かれるか?」


……仲間が一人増えた。


僕だったのが、僕らになったな。


二人仲良く焼かれながら、呆然と空を見つめる。


一緒に歌でも歌おうか?


チラッと隣を見る。


「あ、あつい、あついいいいい、あついたすけてぇ」


悶え苦しむ隣からそんな叫び声が聞こえる。


はぁ情けない、情けないよ、このくらいの熱さに耐えれないなんて……


「チッ、うるさいな、おい、こいつの縄解け」


余りにも早い解放だった。


なるほど、それが狙いだったのか?


なら、僕も――


「ありがとうございます、ありがとうございます」


土下座し、そう感謝を唱え続ける副団長


そして


「ありが……」


無言で放たれる拳、空を翔る流れ星


余りにも早く、訪れる絶望と言うやつ


副団長は星になった。


「おい、お前らも騒ぐなよ」


僕は大人しくしておくことを決めた。


にしても、こんな大きい鉄板どこにあったんだろう 


宴用とかなのかな、確かに大人数で焼肉とかするにはいいのかもしれない


だとしたら、それで人間を焼いてもいいのだろうか


もう、これで焼肉できないじゃないか


……なんか焼肉食べたくなってきたな、焼くか


副団長がいた左側は汚いし、空いてる右でやろう


「で、だ、どう責任取るつもりなんだ?」


「責任……とは?」


「今回の件、禁忌の魔女がお怒りだ」


「……なるほど」


……なんか、女王とレヴ、怖い話をしてるな、あ、タン焼けた。


タンはネギ塩だよな、レモンもいい


「勇者の威光は衰え、その価値はもうない、ルルウ鳥の涙と言ったところだ、その状態で禁忌の魔女に対する反抗的行動、反乱の疑い、指名手配犯ロストワンダーの隠匿など、それら全てが明るみに出た、この国がどういう扱いを受けるのか、理解はしているだろう」


「それは理解しています、ただ、貴方がいう責任、というのは?どういう事を指しているのでしょう」


「……責任、まぁ有り体に言えば、誠意と言うやつだ、実力ともいう、最も勇者がいないエルフ族にあるのかは知らないが……」


こういう時、自分がどの部位を喰っているのか、分からなくなるよな


まぁ美味しければいいんだけど


これはカルビ……かな、もう何を焼いたのか覚えてないや


「何をさせられるのかは知りませんが、あまり舐めない方がいいと思います」


「そちらこそ、舐めているんじゃないか、禁忌の魔女が与える試練を」


うおーホルモン、いけー


なんか、ホルモン焼く時が一番テンション上がる。


というか、ホルモンってどこまで焼けばいいのか分からないよな、後、どこで飲み込めばいいのか分からなくなる時がある。


お、焼けたかな、なんか焼きすぎるのも良くないんだっけ、ハハ、焼けたのかどうか分かんねぇや


たぶんいけるいける。


「で、ロスト、お前は明日、王都で裁判だ、以上」


焼肉はご飯である、それもビビンバやら焼肉用ご飯などではなく


白米である。


結局ね、これが一番美味いのである。


いやまぁね、美味いよ、確かに、ビビンバやら焼肉用ご飯も


ただ、一番、一番美味しいのは何かと問われれば


白米に決まっているだろう。


「丁度いいです、ロストワンダーは我が夫なので、彼が試練にてユグドラ代表として実力を示してくれることでしょう」


ところで、焼肉のシメと言えば何が思いつくだろう。


まぁこれはかなり分れるところではある。


冷麺、ビビンバ、クッパ、大体王道で言えばこの三つか


僕の場合は――





……え?


裁判?試練?


「我が夫?ロストが?」


「はい、我が夫です。」


レヴの鋭い眼光が突き刺さる。


逃げ出したい


僕は炎に包まれながら、そんなことを考えていた。


というか、逃げた。


「ダーインスレイヴ」


彼の行方は未だ不明―――







だったら、よかったのだが、そんなことは無く、普通に捕まって


僕は鎖で封じられ、今、馬車の中


「ねぇ、レヴ、しりとりしない」


「しない」


「よし、じゃあ、りんご」


「しないって言っただろ」


「濾過」


「だから、しないって言ってんだろ」


「蝋人形」


そんなこんなで、和やかに時間は過ぎていった。


王都まで、あと少し


車輪の音と共に、和やかな風が揺蕩う季節が終わり


太陽の光が反射して、さんざめく夏が始まったような気がした。







第一章『春篇』完


孤宵です。行き当たりばったりでのらりくらりとやってきました本作ですが、なんとか第一章完結まで辿り着く事ができました。


次章『夏篇』は恐らく、その名の通り2026年夏頃から始まると思われます。


そして、それに伴った空白期間にて、第二章製作はもちろん、第一章の改稿を行います。と言っても大きな改稿というわけではなく大まかな流れとしては変更はありません、描写の追加という形になります。


今決まっている範囲でいうと、3話の宿屋の娘+その他との接触から3話のレヴに見つかるまでの間に描写が追加されると言った感じです。


今後、第二章以降ではこういう改稿が起こらないように頑張ります。


最後に、感想、評価いただけると、とても喜びます。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

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