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23.働き者 レヴ

「もしもし、レヴ――」


逃げ道のない星の導き


振り下ろされる巨大な拳


竜のように生き生きと力強く、天を舞った刃


それらすべてよりも早く、到着する。


龍の代理人の――


「お前、殺すぞ!」


廻し蹴り


「ぐべら」


顔面直撃、そのまま、吹っ飛んでいくロスト


そして、それ以外の攻撃は全て空を斬る。


「コイツ、クソッ、お前のせいで忙しいのに!二回もかけてきやがって、しかも直ぐ切って!お前には常識が無いのか!無いだろうな!そりゃ!」


そう言いながら、馬乗りになってボコボコに殴り続けるレヴ


一発、一発に怒りが籠っていて、強い


「ねぇ、ちょっと、待ってよ、ウッ、それには訳が!」


「なんだ訳って、それでお前が毎回すっぽかす依頼の後片付けをしてやってる私の怒りを鎮める事ができるのか!」


「いや、そう!あいつ、あの山羊、山羊が悪いんだよ、元は!」


「ああ?」


レヴの攻撃は止み、大魔獣の方に向く


大魔獣は、俺?マジで?と言った表情で、きょろきょろと周りの二人に目線を送っている。


それに対し、ミラとおじいちゃんはいつの間にか間を空け、離れている。


レヴはじっと大魔獣を見つめた後、目線を僕に戻す。


そして、また攻撃が始まる。


僕に対して


「どうせ、大体、お前がやらかしたんだろ!罪を魔獣に擦り付けるな!」


「それは……いや、そんなことないよ!」


「なんだ、その間は!どう考えてもお前のせいだろ、大体いつもそうだ、いつもどこかの国に盗みに入ったり、封印解いたり、どうせ今回も同じ感じだろ!」


「……」


……まぁ、ギリ正解ではある。


「なんで、黙った!黙るなよ、おい!」


「……ごめん」


「はぁ、認めたな、認めたよな」


「はい、認めます」


「で?どうするんだ?」


「尻尾で」


「……」


「翼も……」


「……」


「分かった、頭もつける、何なら全身」


ここまでだ、流石に、二匹目を言われたら気絶するしかない


「……よし、今月末までな」


「はい」


はぁ今月末は忙しくなりそうだ。


なんせ、龍を狩らなければならないのだから


でも、これで今は楽になる。


それでいいんだ、それで、面倒くさいことは明日の僕がなんとかするだろう


明日の僕がちょっと困るくらいで、最強の味方が手に入るんだったら安いもんさ


「で、あいつらをやればいいのか?」


「うん、あ、おじいちゃんだけでもいいよ」


「譲歩しているようで、まったく譲歩してないな」


うん、僕もあのおじいちゃんが一番めんどくさいと思う。


「わかった、じゃあ残りは自分でやれよ」


「大丈夫、大丈夫」


そう言って、僕はひらひら手を振りながら、レヴを見送る。


「私達二人を、一人で、ですか」


「二人……なの?人と言っていいの?僕としては君たちがなぜ仲良くしてるのかが気になるんだけど……なんで?」


明らかに似合わない、不自然な二人を見て僕はそう尋ねる。


少しの沈黙の後、ミラが口を開く


「彼、私達よりあなたの方が憎いようで」


ちらりと大魔獣を見て、ミラはそう言う。


憎い、憎いとはいえばそうか、潰してるもんな一回


「まぁそれはわかるんだけど、エルフにとっちゃ僕は英雄みたいなもんだよ?なんで攻撃してくるのさ」


大魔獣を一度倒した恩を忘れたのか!と言いたい


「……英雄は世界樹を燃やそうとしないでしょう」


……それは、そうかも知れない


「というか、なんで支配が解けてるんですか」


「ああ、それは頑張って解いたよ」


「女王様は?」


「よくわかんないけど、今部屋にいると思うよ」


「部屋に……なるほど……」


「援軍でも呼びに行くの?」


「いえ、その必要はありません」


ミラがそう言うと、四方八方に鏡が現れ、そこから沢山のエルフが現れる。


「もう、呼んでおりますので」


呼ばれた沢山のエルフが僕を取り囲む


そして、その中に見覚えがあるエルフがいる。


「あ、女将さん!」


「え?」


そう、女将さんだ!タダで珈琲と焼菓子をくれた女将さん


彼女もそういえばエルフだった、今まで見ていなかったものだから忘れてたよ


いやー女将さんを見てると、珈琲と焼菓子の味を思い出すな


「美味しかったよ、また食べたいな、あの焼き菓子、あれどうやって作るの?材料教えてくれればさー店とか作るのもいいと思うんだよね」


僕が材料を提供して、彼女が作り営業する。


僕はオーナーだから、なんもしなくてよくて不労所得だ!


「ロスト様ッ」


大きい声が、僕の考えを遮る。


その先には、黒いドレスで身を包んだ女王様がいた。


あ、いたんだ。


「私が間違っておりました、つまらない先人の贈り物程度で貴方を支配するなんてできないのだと、身を持って実感したしました」


まぁあれは先人の贈り物じゃないんだけど……


「ですが、私はあなたを支配したい」


「なので、私は、今、私が持つエルフの全勢力を使って……貴方を手に入れます」


へー僕vsユグドラ、いや僕とレヴvsユグドラって事か


禁忌の魔女は諦めたんだろうか、それとも僕を手に入れてから挑むのか


「じゃあ、僕が勝ったら、全部、僕のものね」


「はい、問題ないです」


問題ないんだ……


ちょっとくらい問題だと思ってほしいんだけど


「わかった、でも、本当にこれが最後だから」


思えば、色んな事があった。


グランとの戦い、はエルフ関係ないか


いや、エルフ関係あるな、最初の女王からの依頼を断ったのが始まりだから


うん、たしかにそうだ、エルフが悪い


エルフの国の場所探しとか、山登りとか、分身作るのとか、大魔獣との戦いとか、支配の首飾りの解析とか……


もう疲れた。


これ以上は知らない、もう働かない


「安心してください」


「勝ったら、貴方の望み通りになりますよ」


負けたらならないんですね。


そんなことを考えながら、ぼーっと辺りを見る。


女王とミラと大魔獣、後、よくわからないエルフ数人


まぁ、いけるな、女王がどれだけできるのかは知らないが……


まぁ大丈夫でしょ


僕は楽観的にそう考える、そりゃあねぇ、心配いらないよ


僕に不安な気持ちを抱かせないなら、それこそ『神器』でももって来いよっていう話で―――


「神器解放」


女王がぽつりとそう呟く


・


・


・


……ん?


え?あー待って、これは……


レヴ、今からでも変わることって……できる?


「無理」


ですよね。


「雷霆の万雷(ケラウノス)」


一つの槍が雲より出でる。


それは、彼女の背後に佇むと、法輪へと姿を変える。


黒い法輪と、黒いドレスが似合う金の髪をたなびかせ


彼女は命じる。


「綺麗になれ」


それに従い、法輪は回転し、指差す場所に雷を放つ。


雷は轟音と共に、ロストワンダーに向かう


超高速で訪れる雷鳴は、回避を遅らせ、左腕に停滞を残す


・


・


・


……ちょっと、やりすぎじゃない?


だらーんとたれる自分の左腕を見て、僕はそんな事を考えていた。




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