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18.魔術師 ロスト

探索者ハンター、それは野蛮な連中


力に固執し力を誇示する事しか考えていない


我がエルフの領域を犯し、我が物顔で物盗りをする脳みそ空っぽの馬鹿の集まり


だと、思っていた。


醜くも尻餅をつき、命乞いをする私


ただ純粋に食料として私をみる熊の魔獣


そして、絶命した熊の魔獣の背に立つ


幼くも大人のようにも見える整った顔に適当にまとめられた黒い長髪が映える少年


ロスト・ワンダー、彼を見るまでは――



頭に少し昔の出来事が流れる


何故だろう、こんな事を思い出したのは


それはきっと目の前の大魔獣に起因する


『走馬灯』


と呼ばれる類の物であろう


そして、その走馬灯と重なる現実がとても懐かしくて美しく綺麗に見えた。


同じように、黒い槍が体に刺さった魔獣と


「ロスト……ワンダー」


目の前にいる少年


彼の名前を呼ぶ、ああ、また私は人間に助けられたのだ。


そんな屈辱が脳を支配する。


ただあまりにも綺麗なその後ろ姿がとてつもなく光って見えた事に嘘はつけなかった。


そして


「ロスト・ワンダー?」


「二人?」


もう一人現れた、瓜二つ、というか同じ人間にしか見えないロストワンダーについても、私は嘘をついてないと胸を張って言える。


「あ、やべ」


「ど、え?わ、我が夫?二人?」


「あ、やばーそうだ、そうだったじゃん、忘れてたー」


黒い槍と共に意気揚々と降りてきたが、そういえばそうだった。


分身いたんだった、どうしよう今から言い訳していけるかな。


いや、待て


僕は学んだんだ。


グランとの戦い……


そして、レヴとの魔術麻雀で


こういう時、何か間違えた時はとりあえず全部《《有耶無耶》》にしたほうが良いと


学んだんだ!


Floga(フローガ)


辺り一帯を炎が支配する、そして


大魔獣にはもちろん、当たり前のように黒い槍が刺さっている。


つまり……


爆発する。


煙と衝撃が舞う、その中で僕はただ一人何も気にせずに立っている。


フッ、にしても芸が無いな、同じことばかりしている気がするよ、最近


まぁなんてったって、これがお手軽で、大体の敵が倒れてくれるからね。


この大魔獣も、この爆発を喰らえばひとたまりも――


「■」


あー……


「マジかぁ」


煙の中、鮮明に見えた山羊の顔と共に


喉元に拳が下から浮き上がるように向かってくる。


反応する余裕もなく、とりあえずそれを受けると、パチリという衝撃と共にグラグラと脳が揺れる。


久しぶりに攻撃を喰らった気がする。


軌道が見えない、不思議な動きをしているな


そして、んー内部攻撃系かな、なんか脳に奔った。


「縺ゥ縺?シ?」


「うわ、喋るのかよ」


煙が晴れると、しっかりと魔獣の姿が見える。


そして、ロストは人をおちょくるような感じで喋り始めた魔獣に対して面倒くさそうな目を向ける。


魔獣は強さによって知能が変わる、端的に言えば賢い奴ほど強いということだ。


まぁと言っても、それは生来の特徴に過ぎず、最低値を測るものに過ぎないのだが


基本的な探索者の中で喋る魔獣は最大限の警戒をしなければならないというのは変わらない。


「■」


――次は横か


先ほどと同じように、気がついたらそこに《《ある》》拳


だが……


「流石にね」


横にある拳を瞬時に目で追い、捉えると


即座にしゃがんで綺麗に避ける。


そして、空振った拳に合わせて、剣を振るう。


その剣は綺麗に拳に向かったが、すっと消えた拳に成すすべもなく空振る。


「えー」


マジかぁ、結構頑張ったんだけど、空振りか


今の攻撃と回避、違和感がある。


なーんか不思議な移動方法をしてるな。


「鬥ャ鮖ソ」


山羊の人型大魔獣がにやりと馬鹿にするような目をしながら、僕を指差しそう言って笑う。


何を言っているかわかんないけど、馬鹿にしてるのはわかるな。


「苦戦してますね」


声がする方を振り向くと、女王様がいた


「苦戦、してるねぇ、なーんか不思議な感じがしてさ」


「伝承によると、その大魔獣は――」


「ああ、良いよ、そういうの」


問題無いから


「よし、僕が考えた最強の魔術シリーズ第一弾」


これは使いたくなかったんだけど、まぁいいや、これ以上時間かける方がめんどくさい


見下す球体(ヴァリティータ)


僕がそう唱えると、山羊の頭上に白い球体が生まれる。


すると、山羊は地面に叩きつけられ――


そして、山羊は二度と起き上がることは無い。


僕が考えた最強の魔術シリーズ第一弾、『見下す球体ヴァリティータ


この魔術はその名の通り、球体を起点とし重力を操るという物


単純な攻撃はもちろん、拘束、鈍化など結構使い勝手が良い


ただ相手の実力によって消費する魔力が変わるので、彼?の様な強い魔獣だとすごく疲れる、だから使いたくなかったんだけど……


「君、案外軽いね、力はないみたいだ」


「グガァ」


どちらかと言えば、スピードタイプ、それでも結構な重力が必要だったけど思ったより、消費は少ない。


「ねぇねぇねぇ、どんな気持ち、ねぇどんな気持ち?さっきまでウキウキだったのに急に動けなくなるのは」


僕は山羊に近づき、顔を覗きながら煽る、ああ、とても気持ちがいい


さっきまで意気揚々だったのに、可哀想だ、可哀想(笑)


「はぁおもろ、じゃ飽きた、潰そ」


大魔獣はぺしゃんこになった、ただよくわからない小さな塊がその場に残った。


「ええ……」


女王の声が少し離れた場所から聞こえる。


なんだ?いいじゃないか、魔獣なんだし、いや、食べれたりしたのかな


うわーそれならちょっともったいないことしたかも


「よし、これで終わり」


結構強かったね、まぁ僕の方が強かったんだけど


「じゃ、僕はもう一回寝るから、後片付けよろよろしくね」


僕はそう言って去る、あー疲れた、もう二度とやりたくないね、本当に









ロストが去った後、荒れた会場を静かに見つめている女がいた。


彼女は荒れた会場を見た後、自身が纏う少し汚れたドレスを見る。


そして


「ミラ、鏡を」


「……はい」


後ろに控える従者から受け取った手鏡で、自分の顔を見つめる。


「ああ、綺麗ね、そう、私は綺麗」


機械のように、彼女はそう唱え続ける。


ある意味一つの暗示のように


「そう、私は綺麗なの、それが変わらなければ問題は無い」


必ず手に入れないと、彼の姿を、彼の戦いを見て分かった。


私には彼が必要だ。


今の戦いを見て、その思いはより強く深まった。


「そう、そうよ、私は綺麗、皆から愛されてるの、もちろん、彼からも……」


「……」


ミラは何も言えない、一通りの彼の様な行動を見た私にとって不安しかないが


彼女に何を言ったって、意味はない事を知っているから


「でも、もっと必要、絶対に裏切れない鎖を」


惚れたとか、愛してるとか、そういう曖昧な鎖ではなく、もっと明確に


彼を、彼を何としても


エルフの女王として、そして、私の個人的な目標を遂げる為


ロスト・ワンダーを……


どんな手段を使ったって、必ず


「あ、あとミラ、あなたの家の本全部没収ね」


「え……」


本……本……私の……ボッシュウ?


おのれ……ロスト・ワンダー

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