【独】命の波
この波が生まれた場所を想えば、私の命など些細なものだ。
この波が辿って来た道のりを想えば、私の存在など無に等しい。
ほとんどが百の齢も生きられない。
人の一生など短いものだ。
浮世に笑い、泣いたところで、雲の形ひとつ変えられやしない。
この空の奥に宇宙が広がっているなど、あまりにも無慈悲ではないか。
それではあまりにも……私がちっぽけではないか。
人生とは、飴玉のように溶けていく。
なにかを成しても、なにも成さずとも、皆平等にすり減っていく。
この世に生を授かった瞬間から、私たちは失い続けるのだ。
少しずつ、着実に、消えていくのだ。
それでは何を残そうか。
例え私が小さく無力でも、この命は重いのだ。
触れられぬ神の摂理なら、思考を巡らす暇すらないのだ。
進もうではないか、一歩でも前へ。
刻もうではないか、一秒でも長く。
どんなにみすぼらしくとも、吐き捨てられたガムだとしても、
この生にしがみつこうではないか。
記せ、一文字でも多く。
叫べ、数え切れぬ苦痛が晴れるまで。
私が私であるように、
君もまた、君であるのだから。
それでも苦しい時は、深く呼吸をするのだ。
今吸い込んだその空気は、間違いなく君だけのものだ。
今吐き出したその空気こそが、君の命の鼓動なのだ。
私たちはちっぽけだからこそ、この世界の広さを理解している。
互いの無力を抱きしめ合い、それでも、誰かのためにと生きている。
それが人間であり、私と君の命の重さなのだ。
ひとつ波打てば、自ずと風がそよぐはずさ——
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【※この先は、作者による作品解説です。
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