表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたに読まれたい  作者: 三軒長屋 与太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/58

【恋】真ん中を射抜いて


「もし自信がなければ、ほんの少し左下を狙ってみて下さい。

その方が、真ん中より点数が高いところに入ったりするんです」

僕がそうアドバイスをすると、

君が投げたダーツの矢はとんでもない場所に飛んでいって、全員が笑ったな。

君は少し、拗ねていたけれど。


僕が通うダーツバーに君が初めて来たのは、ちょうど去年の今頃か。

キツイ香水を付けた男を連れて、まんま水商売の女。

私たちは初心者だからと、カウンターに座る僕と、店主を誘い、

簡単なレッスンが始まる。

君が喋るたびに漂う甘い匂いに、目線を上げられなかったのを覚えている。


カウントアップ……言葉の通りさ。

点数が高い人が勝つゲーム。

僕は君とペアを組んで、キツイ香水と店主に挑む。

残念ながらこの場合、店側は女の肩を持つ。

ただでさえ下卑た男の香りが、まんまとテキーラに染められる。

それを笑う君の意地悪な笑顔に、まんまと僕も染められていく。


君が通うようになったダーツバーは、ディオールの香りに包まれた。

スパイシーな薔薇の無邪気な誘惑に、なす術もなく惹かれていく。

どんなにダーツが上達しても、君が僕の真ん中を射抜くことはなかった。

時折響かせる小気味良い三連符で、悪戯に僕の心をくすぐるだけだ。

そしてやっぱり意地悪な笑顔で、真綿で首を絞め上げていくように。


ドロドロに甘いショートケーキと、飾り気のないビスケット。

叶うはずのない恋だった。

情けなく湿っていく本当の気持ちを、引き出しの奥にそっと仕舞う。

下唇を噛みしめながら、ダーツを投げる君を見つめる。

ハイタッチの手が触れるたびに、握りしめたい気持ちに苦悩する。


地元に帰ります。

突然飛び出した君の言葉に、僕は真ん中を射抜かれた気がした。

今までの想いを静かに語る僕に、君は初めて、優しく微笑んでくれた。

店を去る君の背中を、いつまでも見送る。

この街を去る君の香りを、呆れるほどに思い返す。


普通に戻った君は、それでもきっと、美しいのであろう。

いや、太陽の光の下でこそ、甘い香りが増すのかもしれない。

意地悪な笑顔が、いっそう優しく咲き誇るのかもしれない。

夜が漂う店内に、僕はひとり取り残される。

口を潤すジントニックが、いつもより苦く感じた。


ダーツは矢を投げる競技。

そして、恋もきっと、矢を投げるべきなんだ。

僕の過ちは、君の真ん中を射抜く度胸がなかったこと。

意気地なしなメンタルが、イップスになってしまったんだ。

僕の矢はもう君には届かないかもしれないけれど、

瞳の奥の君の背中がせめて幸せでありますようにと、

願いを込めた矢を、ひとり黙々と飛ばし続けるのです。



お読みいただき、ありがとうございました。

誤字・脱字に関すること、細やかな評価や感想をいただけますと、励みになります。


【※この先は、作者による作品解説です。

自己解析・自己考察を含みます。

読後の余韻を大切にされたい方は、ここで読むのをお止めください】











——————————


皆さんダーツってしたことありますか?

私は若いころハマってました。

あれほど酒が進む競技もないですよ←


今作はそんなダーツバーを舞台にしたお話なんですが、作中で触れている通り、店員や店のプレーヤーは基本的に女の肩を持ちますので、男性が女性をダーツバーに連れて行く際はご注意ください。

罰ゲームのテキーラで理性が吹っ飛びます。

そして、ダーツの世界にもイップスという症状がありまして、今まで投げられていた矢が投げられなくなっちゃうんです。

身体的であったり、精神的であったり、原因は様々ですが。

そんな症状と、恋ってやつを組み合わせてみました。

皆さまは恋の矢を素直に飛ばしましょう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ