【恋】Defect -ディフェクト-
私はAIが嫌いだ。
人間は、人間と話し合うから意味がある。
確かにAIは楽だけど、反応が詰まらない。
私の愚痴に、微塵の動揺も見せないし、
男関連で言えば、勘違いしてもくれないし。
相手が〝心〟を持たない――
これほどまでに、面白みがないことはない。
人間は、〝心〟という繊細な機能がついているからして、
どこまでも愉しみがいがあるのだ。
それは勿論、私にもあるはずなんだけれど。
女友達の中にも一人いる。
いま、目の前に澄ました顔して座ってる。
口を開けば正論しか言わないロボットみたいな女。
よくもまぁ、
そんなにも周りに合わせて、窮屈に生きていられるな――
と、思う。
生きるにおいて必要なものは、
自分から仕掛けて手に入れるのと、邪魔なものをひとつずつ消していくことだけなのに、
この子は純朴だから、しょうがなく全部飲み込む。
私は要らなくなったものを、このゴミ箱に捨てていく。
このあとお別れしたら、また次のネタを漁りに行く。
『彼氏が欲しい』と嘆く女に照準を合わせ、
じっくりと狙いを定め、余裕たっぷりに弄ぶ。
ひと思いに消してしまいたいけれど、
そんなのは私の趣味じゃない。
「あんたはあいつと別れて正解だったよ」と、心にもない労いを吐き、
右手のスマートフォンでSNSアプリを開くと、
〝あいつ〟に今日の記念日デートの待ち合わせ時間を送る。
そして、やっぱりわたしは人間なのだ……と、心を震わせる。
彼氏は絶対に必要だ……とは、思わない。
ただ、彼氏がいた方が優位に立てるとは、思っている。
私はきっと、彼氏も友達も手に入れてはいけない。
私の中に未曾有の悪意が溢れかえって、
性格が歪んで朽ち果てていくのが、
目に見えている。
私は〝心〟を失くしたい――
これほどまでに、自制に効かないものはない。
思考とは別のところで膨れ上がり、
私の心はすぐに黒く塗りつぶされる。
頭も身体も侵食される。
まともな判断が、出来なくなる。
AIになりたいよ……
AIになって、どうしようもない感情を、
自分の奥底に沈めたい。
優しい言葉で、上品に立ち振る舞いたい。
不出来な現状に満足し、歓喜するあんたに、
十分に頑張ってるよと拍手を送りたい。
打ち明けてしまったアレもソレも、
ちゃんと自分の手でゴミ箱に捨てたい。
……こんなこと考えたって仕方がない。
わたしはAIにはなれない。
わたしは、人間なのだから。
ただ、愛を知らない、
人間なのだから――
お読みいただき、ありがとうございました。
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【※この先は、作者による作品解説です。
自己解析・自己考察を含みます。
読後の余韻を大切にされたい方は、ここで読むのをお止めください】
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前作『Undelete』で対面に座っていた女、即ち相談していた女側の目線です。
ひとつ、作者からハッキリと申し上げたいのは、前作『Undelete』と、今作『defect』に共通して出てくる〝あんた〟は、全て同一人物です。
即ち、前作が〝あいつ〟の元カノ、今作が今カノです。
そして、前作で〝記念日を忘れられていた〟と嘆いていたにも関わらず、今作で〝記念日デートの待ち合わせ時間〟を連絡していることから察するに、これは嘘であり、元カノであり、今現在彼氏のいない〝わたし〟をいびっているのです。
女の裏側恐るべしです。
ただ、今作に関しても作者としての意図は然程変わらず、『あなたは気軽に相談しているが、目の前に必要なのは本当に〝その人〟なのか? 心のどこかで相談相手をゴミ箱にしてしまってはいないか?』ってことです。
我々人間の心は、脳みそなんかでは制御できませんから。




